Assassin's Life 2

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メルカリに消えた時間

 まずはアサシン初級の獲物として、メルカリに目を向けよう。利用者には既知のことだが、送料は出品者の負担だ。そして、それは売上金から容赦なく差し引かれる。

 出品時、配送業者や方法の選択肢が与えられる。公式ページを見れば、サービスのラインナップは豊富で、料金も明示されている。正直なところ、自分の出品物にどれが最適か、迷うばかりだ。

 しかし、実際に落札されても、その場で自分が払う送料の額は表示されない。特に宅配便を選んだ場合、サイズによる料金変動は厄介だ。

 さらに、最近はコンビニ発送が多い。レジでコードを提示するか、店内の端末を操作すれば、「宛名書き不要」「レジでの会計不要」で手続きは終わる。結果、その時点でも、送料をいくら払ったのかは分からない。

 発送が済み、落札者との取引が無事に完了し、入金が確定して初めて、我々は送料の額を知る仕組みだ。ネコポスのように料金が固定されていれば安心だが、宅配便のようにサイズで変わる場合、想定を超えて計測される失敗もある。最後まで料金が分からぬ不安は、ただ事ではない。


 九十年代後半からだろうか、私は以前、ヤフオクのヘビーユーザーだった。電化製品や服も、リサイクル店より高値で売れ、当時の生活を支えてもらった。ヤフオクは送料が落札者負担だったから、売上金が削られる心配もなく、郵便局で発送時に送料を確認できた。

 だが、それもスマートフォンの登場した二〇一〇年頃から、メルカリの台頭でシェアは逆転した。メルカリは確かに便利だが、高額商品は売りにくい。以前、五万円で買ったスーツが、ヤフオクでは数年後でも定価の半額近くで売れた。しかし今、ポール・スミスの同価格帯のブランド品でさえ、参加者が減ったのか、全く売れない。結局、買取業者で三〇〇〇円にしかならなかった。

 メルカリはオークションというより、フリマの感覚だ。比べるものではないのかもしれない。


 私の愛読書『選択の科学』の序盤に、あるテストがある。

 二択だ。「A.100万円を確実にもらえる。B.50%の確率で200万円もらえるが、50%の確率で1円ももらえない」という問いに、教室の殆どは、Aの「百万円を確実に貰う」方を選んだ。

 一方、「C.100万円を確実に損する。D.50%の確率で200万円損するが、50%の確率で全く損しない。」という質問をすると、Dの「50%の確率で200万円損するが、50%の確率で全く損しない。」の方を選ぶという。

 条件はどちらも同じだ。しかし、なぜ得をする場合は確実な方を選び、損をする場合は50%の確率の方を選んでしまうのだろう。

 これは個人的な仮説だが、人は損をするとストレスでIQが下がり、まともな選択ができず、ギャンブルに走るのではないか。現実ではその結果、200万円を損し、さらに状況を悪化させるのがよくある結末だ。

 この時、たとえ損すると分かっていても、「100万円を確実に損する」方を選ぶのが正しい。それは請求書を受け取るのと何ら変わりがない。不確実なものに手を出すと、さらに状況は悪化する。

 若かりし頃、運転中にガソリンが無くなり、通りで見つけたスタンドに入ったことがある。値段が表示されておらず、焦って飛び込んだが、想定価格の一・五倍も高くて仰天した。値段が書いていないというのは、つまりそういうことだ。ビジネスの世界でも、弁護士費用など、初めから値段の分からないものは多い。


 話の規模が大きくなりすぎた。メルカリの話に戻そう。

 私は、売上高から送料を引いた額が一〇〇〇円を下回るようなら出品しないことにしている。メルカリの発送準備には、文章、写真撮影、梱包と、大体一時間はかかる。日本の最低時給は一〇〇〇円より少し上だ。それを目安にしている。

 だが、売上高の表示が一〇〇〇円を超えて見えても、実際にはごっそり送料が引かれている。それなら、もったいないが、ゴミに出すという選択をした方がいい。出品の手間をかけるくらいなら、時間を有意義なことに使うべきだろう。

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