第10話
「三階層突破したんだって?スゲーじゃん、噂になったぜ」
学校に登校すると宍戸が話しかけてきており通りで視線を感じた気がしたわけだ。新聞を見せてくれて樋口パーティーが突破できなかった三階層を単独で突破と大きく書かれており相変わらず仕事が早い人だと呆れてしまう。
「柏崎くんだっけ?凄いわね」
「運が良かっただけさ」
話しかけてきたの藍色の髪をした小柄な少女で彼女こそが聖女と呼ばれている樋口吉良で一年生の中でも頭角を現している人物であり彼女を慕うものは多くファンクラブが作られているほどでその人気ぶりは計り知れないもの。
「聖女様が話しかけてるぞ!」
「マジかよ!あんな地味な奴に?」
「でも、あいつ新聞に出てなかったか?」
クラスがざわめいておりいらぬ注目を集めてしまっており樋口と喋っている命に嫉妬の目線を向けており居心地が悪い。そんな事を知りもしない樋口は命に話しかけ続けており命も話しかけられたら普通に対応するが視線が強くなっていくのを感じる。
「もっと早く話してたら良かった」
満天の笑みを浮かべておりその笑顔にどれだけの人が虜にされたのだろうか自覚のない攻撃に命も動揺するが平静を保つ。樋口は他愛のない世間話を続けておりファンクラブの会員だと思われる男子たちの鋭い目線が突き刺さっており早くどこかに行ってくれと願いながらも先生が来るまで居座り続けておりいい迷惑だ。
「また、話そうね!」
「はは……」
本人は自覚がないのだから質が悪い。
「あの樋口に話しかけられるなんて隅に置けないな!」
「だったら変わってくれよ」
「俺はファンクラブの奴に目を付けられたくはない」
薄情な奴だ。まぁ、命が別の立場でも同じことをしただろうが。
「うーす。今日は話すことがあるから席に着けー」
何時もの様にヨレヨレの白衣を着た陣内が出席簿を持って教室に入ってくる。端末を操作するとディスプレイにデカデカと体育祭の文字が表示される。
「知っての通り五月に体育祭があるのでそれの説明をしろと言われた訳だ」
面倒くさそうに舌打ちをしながら説明してくれる。体育祭は職業毎に競技が分かれており戦士職ならば学園が用意したモンスターを討伐で魔法職ならば用意された標的に魔法を当てるというもので生産職は作成した装備やアイテムの出来を競うとのことでしっかりと考えられており目玉となるのがダンジョン探索で初心ダンジョンに設置されたアイテムを先に手に入れたものの勝ちというものがありその成績によれば優勝も狙えるとのことで皆、気合が入っている。
「え~と、優勝賞品は……って言っちゃダメな奴だったか」
「えー、どんなのか位教えてくださいよ」
「叱られるのは俺なんだから勘弁してくれ」
入学してからそこそこが経ち生徒と教師の信頼関係も築けており今のような他愛ない会話も少なくない。何時も面倒くさそうにしている陣内だが面倒見がいい性格で生徒からの質問には必ず答えており伸び悩んでいる生徒に対して手取り足取り指導したりと流石は元A級探索者で指導力の高さが伺える。
授業が終わり一人で昼食を食べていると獅子王が話しかけてきた。
「ここ良い?」
「勿論、構わないよ」
獅子王と一緒に食事をするのは随分と久しぶりで今日も豪華そうな定食を取っておりこの食事が強さの秘訣なのかなと考えてみたりする。その小さい体のどこに入っているのか不思議なくらいの食事量で見ているだけでお腹一杯になる。
「三階層突破したんだって?凄いじゃん」
「ありがとう。素直に嬉しいよ」
五階層まで進んでいる獅子王の言葉は一見嫌味にも聞こえるがそう感じさせないのは獅子王の実直さからなのか嫌味に聞こえない。
「四階層はそこそこ面倒だったから気を付けて」
「あぁ、万全の準備をしてから挑むとするよ」
四階層のモンスターがそこそことは獅子王がどれだけ強いのか予想すらできない。あの日、ゴブリンロードと戦っていた姿を見た時から分かってはいたが獅子王の実力は学生の域を超えている気がしており初心ダンジョンをクリアしたら直ぐに東京のダンジョンに挑むのであろう。
「四階層のモンスターは火が弱点なの」
「教えてくれていいのかい?」
「うん。友達だもの」
獅子王とはあまり話していないというのに自分の事を友達だと言ってくれて胸が温かくなる。にしても火が弱点とは命も召喚モンスターも火属性のスキルは有しておらずスキルを手に入れるにはレベルアップと修練によるものがあり今回はレベルアップではなく修練を行う必要がありそうだ。
命は獅子王と昼食を終えると早速、図書室に行き火魔法の本を借りる。本を手に取りパラパラと捲り中身を確認してみると思ったよりも簡単そうでこれならば直ぐに覚えられそうだ。
魔法とは基本六属性の魔法があり上位魔法としてまた、六属性存在しており上位魔法を使えるものは限られており全ての上位魔法を使えるのは世界でも六属性魔導士と呼ばれている新道寺桜だけであり魔法使いの頂点と呼ばれている。
柏崎命
スキル
火魔法1New!
左程、苦労することなく火魔法を取得することができて四階層で必要な武器を手に入れることが出来た。火魔法は破壊力だけでなく他者を強化する魔法にも長けておりこれで召喚モンスターを更に強くすることが出来る。
「にしても相手がオークだとはな」
四階層に出てくるモンスターはオークと言われるモンスターでモンスターで並の攻撃では歯が立たない強靭な肉体と凄まじいタフネスを持った厄介なモンスターでそれが群れを成して襲ってくるのだがら厄介極まりなくそんなオークの唯一の弱点が火であり強靭な肉体を持つが魔法攻撃には弱いらしく特に火魔法は最大の弱点と言える。
「問題があるとすれば魔法は使えるのが俺とフラウだけだということだな」
純粋な魔法職であるのが命とフラウだけでありその他の召喚モンスターはバリバリの近接タイプでこれは色々と考えておかなくてはならない。
金倉にクイーンの魔石を渡すととても喜んでいてピッタリの装備を作るわと気合を入れており幾つか他の魔石も預けたので後は任せるだけで命は魔法職の訓練場に来ており新しく手に入れた火魔法のスキルレベルを上げるためともう1つ試したいことがあったのだ。
「エンチャント・アース」
手に持っている杖に魔力が宿る。魔法の中でも高等技術と言われている付与術(エンチャント)で物理攻撃が効かないモンスターに対しても攻撃を与えられることが出来るものだが高等技術と言われている所以は繊細な魔力コントロールと通常の魔法とは比べ物にならない魔力を必要とするからで高い魔力を有する命だから苦なく使えている。
「エンチャント・ダーク……重ね掛けは出来ないか」
二重に掛けようとしたら弾かれてしまう。二重エンチャントはただでさえ難しいエンチャントの中でも更に難しいもので魔法に慣れたばかりの命では出来そうないが出来れば大きな戦力アップになることは疑いなく練習し続ける。
「エンチャントですか。一年生がやるには早いと思いますが」
「眞鍋先輩」
眼鏡を輝かせながら現れたのは魔法職の指導を行ってくれた眞鍋であり手には特徴的な本を抱えており十中八九、魔導書(グリモア)だろう。魔法職は魔法を発動するために杖や水晶など媒介が必要で中でも魔導書は力ある文字であるルーン文字が描かれたもので杖や水晶よりも扱いが難しく使えるものは殆どいないのだがまさか魔導書使いと会えるとは思わなかった。
「扱いは難しいですがそれ相応の働きをしてくれますよ」
魔導書に目線を向けていることに気付かれたのか開いて見せてくれる。幾何学的な文字が羅列しており文字1つ1つに魔力が宿りこんな代物を使える眞鍋は何者なのだろうかという疑問が頭をよぎる。
「エンチャントとは難しいように思えるが要は魔力コントロールがきちんと出来ていれば誰でも使えるものだ」
そう言って眞鍋は置かれていた杖に少なくとも3つの多重エンチャントを簡単にやってのける。凄い魔導士だとは思っていたがこれほどまでとは思っておらず命は食い入るように魔力の流れを観察しておりふと何かが繋がったような感覚を覚える。
「エンチャント・ダーク、エンチャント・アース」
さっきは反発していた2つの属性が融合し困難だとされる二重エンチャントを完成させた。
《スキルレベルがアップしました》
柏崎命
スキル
土魔法14→16、闇魔法6→9、魔力操作1New!、付与術1New!
「見ただけで出来てしまうとはな。やはり君は筋がいい」
「眞鍋先輩のお手本が良かったんですよ」
事実、彼が多重エンチャントを見せてくれなければ成功しなかっただろう。
「出来たわ!渾身の出来よ!」
装備が完成したからと呼び出されて工房に向かうと目の下に大きな隈を作っているテンションが高い金倉が出迎えてくれて命の手を引いて装備を見せてくれる。
『毒蜘蛛女王の長剣』 ランクC+
攻撃力45 耐久度50
スキル
猛毒
『毒蜘蛛女王の盾』 ランクC+
防御力50 耐久度50
スキル
堅固
『毒蜘蛛糸のローブ』ランクC
防御力40 耐久度50
「いやぁ、随分と状態の良いものばっかりだったから腕が鳴ったよ」
予想以上の出来でありアインに相応しい装備で早速、アインを召喚して装備させる。毒々しい紫色の長剣と盾に更に物々しさが増しているが更に頼もしくなっており召喚を解除して金倉に礼を言おうとすると金倉は机に突っ伏して眠ってしまっている。
この装備を作るのにかなり無理をさせてしまったようで今度お礼に喫茶店でご馳走させてもらおう。
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