第9話

 今日も今日とてダンジョン探索で三階層に突入する。毒を持つモンスターがいるとのことで宍戸から貰った解毒ポーションに加えて幾つかポーションを購入して準備万端で進む。三階層にはあちらこちらに蜘蛛の巣が張り巡らされており予想した通り毒を持つモンスターというのは蜘蛛のモンスターだろう。


 ポイズンスパイダー

 スキル

 毒、糸、奇襲


 小さいながらも厄介な毒を持っているモンスターであまり接近はされたくはなく面倒な奇襲スキルを持っているのでブランに周囲を警戒させている。二階層よりは少し暗くどこからモンスターが飛び出てくるか分からない為か警戒しながら進んでいく。


「キー!」


 ブランがモンスターが近づいてきていることを伝えてくれる。頭上から現れたポイズンスパイダーは一斉に糸を吐いてきてこちらを拘束しようとしてくるのだがフランが風魔法で糸を弾き風の刃がポイズンスパイダーを切り裂いていく。


「アース・ブラスト」


 岩の砲撃が密集しているポイズンスパイダーに直撃し見るも無残な姿となる。アース・ブラストは過剰だったかもしれないが毒を吐かれてはたまったものではないので見敵必殺の構えでいかなくてはならない。


《レベルアップ!スキルレベルがアップしました。召喚モンスターのレベルがアップしました》


 柏崎命

 レベル2→3

 土魔法12→13、魔力回復3→4

 

 ブラン

 レベル3→4


 フラウ

 レベル2→3


 フォボス

 レベル5→6


 やはり世田谷ダンジョンとは比べ物にならない経験値で上がりづらかった命のレベルも上がっている。ポイズンスパイダーも警戒すれば大して強いモンスターではなくドロップする魔石もDランクのものでかなり美味しい相手だ。


 この程度の相手ならば樋口のパーティーが敗退することはないと思うのでやはり鬼門となるのはボスだろう。これまでの傾向からボスは道中のモンスターの上位種であることが分かっておりポイズンスパイダーの上位となれば強力な毒を持っていることだろう。


「また、お前頼りだな。相棒」


「カタカタ」


 アンデットであるアインは毒のバットステータスを受けない。それは肉体を持っていないからだと言われており盾役であるアインに毒が効かないというのはかなりのアドバンテージで相変わらず頼りなる召喚モンスターだ。


 アインを先頭にダンジョンを進んでいく。アイン目掛けて毒を吐いてくるポイズンスパイダーだがアンデットでるアインには全く効果がなくそれを理解できる知能を持っていないのか効きもしない毒を吐き続けており面白いくらい順調に進むことが出来た。


 《レベルアップ!スキルレベルがアップしました。召喚モンスターのレベルがアップしました》


 柏崎命

 レベル3→4

 スキル

 召喚魔法15→16、鑑定7→8、闇魔法4→5、魔法強化6→7


 アイン

 レベル5→6

 スキル

 状態異常耐性New!


 アヴァリス

 レベル2→3


 フォボス

 レベル6→8


 毒を受け続けて状態異常耐性のスキルまで手に入れてかなりの収穫であり手に入れた魔石の数も大量でアインのお陰でそんなに苦労せずにボス部屋の前までたどり着くことが出来た。フォボスの一定の確率で相手をスタンさせる咆哮のスキルが活躍して面白いぐらいポイズンスパイダーに通じてフラウの魔法の餌食となっていた。


「あんまり使いたくはないんだが」


『魔力上昇ポーション』 ランクD


『筋力上昇ポーション』 ランクD


 それぞれ一時的にステータスを上昇させるポーションでかなり破格のものであるがあくまで一時的であり使用効果が切れればステータスが半減するというデメリットがあるもので金額も馬鹿にならない者だったが強力な毒を使うボス相手に長時間の戦闘は避けた方がよく短時間でケリを付けなければならない。


 事前に強化魔法を掛けてボス部屋の扉を開く。中央には巨大な蜘蛛の姿があり赤い複眼が怪しい光りを輝かせておりこちらを威嚇している。


 クイーンポイズンスパイダー

 ステータス

 ???

 スキル

 猛毒、産卵、???


 スキルを見るだけで厄介なのが伝わってきて口から紫色の毒を発しながら下腹部からポイズンスパイダーを生みモンスターを増やして一斉に襲い掛かってくる。


「アース・ブラスト!」


「フリィー!」


 岩の砲撃と竜巻が同時に放たれてポイズンスパイダーを一掃していくクイーンへの道を遮っていたポイズンスパイダーを蹴散らしたことで前衛達が接近する。真っ先に辿り着いたのはフォボスであり周囲に散布されている毒を恐れることなくクイーンの長い脚に噛みつきアヴァリスの剛撃がクイーンの顔面にめり込み悲痛の叫びを上げる。


 自分に手痛い攻撃を与えたアヴァリスに標的を定めるがアインの挑発スキルでヘイトを集めて猛毒の弾丸がアインに放たれるが毒の効かないアインには通用せず驚愕するがアインの剣で目の1つを潰される。


「ダーク・ミスト」


 相手の視界を霧で覆い視界を封じる闇魔法でクイーンは視界を奪われて暴れるがモンスター達はそれを完璧に捌いてダメージを与えていく。命の危機を察したクイーンは口から大量の猛毒を周囲に散布しそれはボス部屋全体に広がっていき離れていた命にも範囲内で毒が回っていくのを感じる。


「成程、樋口パーティーを敗走させたのはこれが原因か」


 解毒ポーションを飲むものの毒の症状が遅れるだけであまり効果はないような感じがしておりこれは樋口パーティーが敗走するわけだと納得する。この毒状態で長時間戦闘は出来ず早く終わらせなければやられるのはこちらになりそうだ。


「アイン!アヴァリス!」


「カタカタ」


「ジャ!」


 ならば真正面から叩き潰すしかなくアインを盾にアヴァリスを突撃させる。狙い通りクイーンは毒が通用しないアインを警戒しているらしく攻撃をアインに集中しておりアインの後ろにいるアヴァリスの事は眼中にない状態のようで命はその間に確殺の状態を作り上げていく。


「ダーク・オーラ」


 防御力を減少させて攻撃力を増幅させる闇魔法唯一の強化魔法でただでさえ高いアヴァリスの攻撃力を強化してこの一撃で決着を付ける。


「ジャ!」


 アインの後ろからアヴァリスが現れてクイーンは取るに足らないと判断しようとしたが固く握られた拳を見てあれは自分を殺せるものだと理解するとその巨体を後ずらせ逃げようとするがその脚をフォボスががっちり抑えておりウルフ如きに跳ねのけようとするが時は既に遅しでアヴァリスの拳がクイーンの頭部を貫き、クイーンの巨体は力なく倒れる。


《レベルアップ!スキルアップがアップしました。召喚モンスターのレベルがアップしました》


 柏崎命

 レベル4→6

 スキル

 召喚魔法16→17、土魔法13→14、連携12→13、指揮11→12、闇魔法5→6、魔力回復4→5


 アイン

 レベル6→7


 ブラン

 レベル4→5

 

 フラウ

 レベル3→4

 

 アヴァリス

 レベル3→4

 

 フォボス

 レベル8→10

 スキル

 索敵New!


《クラスチェンジ条件が満たされました。クラスチェンジ先を選択してください》


『毒蜘蛛女王のブローチ』 ランクC

 攻撃力20 防御力40 耐久度50

 スキル

 猛毒


 Cランクの魔石だけでなくレアドロップまで落ちてフォボスのクラスチェンジもできる様になり苦労した甲斐があったと言える。毒蜘蛛女王のブローチは攻撃に猛毒を追加するというもので命が持ってもいいがそれよりも召喚モンスターに持たせた方がいい気がする。


 ホワイトウルフ

 ステータス

 筋力C

 体力C

 敏捷B

 魔力D

 スキル

 噛みつき、疾走、咆哮、索敵、風属性


 ブラックウルフ

 ステータス

 筋力C

 体力C

 敏捷B

 魔力D

 スキル

 嚙みつき、疾走、咆哮、索敵、闇属性


 ステータスは同じだが属性が違う。風魔法ならばただでさえ速いフォボスが更に速くなるが闇属性のデバフも捨てきれないが速さは力であり闇魔法は命も使えるのでホワイトウルフにする。


 真っ黒だった体毛は真っ白に変わったが黄金の瞳は変わらずふわふわとした感謝で触っていると癒される。精悍な顔つきになったが甘えん坊なのは変わらないようで舌を出しながら喜んでいる。


 そこそこ体力を消耗してしまっているのでポーションを飲む。エナジードリンクのような味がしてあまり飲み過ぎると体に悪そうでポーション中毒という病気もあるくらいであり飲み過ぎには注意しなくてはならず現代病の1つとして知られている。


「でも、本番は此処からだよな」


 初心ダンジョンは三階層から強さが格段に跳ね上がるという話であり小林のパーティーも随分苦労させられていると聞いている。しかし、獅子王はたった一人で四階層を突破し五階層に挑んでいるのだから足踏みしている場合ではない。


 金倉に今日手に入れたCランクの魔石で装備を作ってもらってそれから防具も新調しなければならない。やることは大詰めで四階層に向かうために準備を進めておかなくてはならない。


 ダンジョンを出ると安城の姿があり命を見つけると胡散臭い笑みを浮かべながらこちらに駆け寄ってくる。


「三階層突破おめでとうございます」


「流石、耳が早いですね」


「それしか取り柄がないもので」


 そういいながら彼は命よりも上でありよくも嘘をペラペラと言えるものだ。こんなにも早く知られているということは命の事を監視している者がいるということで安城ならばそれ位の事はしそうであり別に実害はないので気にしていないが気分がいいものではないが言ったところで辞めるとは思えない。


「良かったら一杯どうです?お話も聞きたいですし」


「まぁ、奢って貰えるんでしたら」


「是非ともご馳走させてください」


 食堂の近くにある喫茶店に案内されて一番高いアフタヌーンティーを注文しており三年生ともなれば金が有り余っているのか命も奢って貰えるのだからアフタヌーンティーを注文する。


「あの樋口パーティーが敗れた三階層を突破するなんて素晴らしいですね」


「小林のパーティーも突破したと聞いてますけど?」


「あぁ、小林くんはパーティーメンバーに蜘蛛特攻の装備を持たせていたようですよ」


 特攻装備とはモンスターの天敵の魔石から作られるもので非常に高価で学生では手が出せないものだが流石は小林というべきであり特攻装備があれば簡単に超えられるだろう。にしても非常に高価な特攻装備をあんな短時間で用意できるなんて小林の家は一体どれだけの金を持っているのだろうか。


 命もアインが毒が効かなかったから比較的、楽に突破できたのたのでアインがいなかったらと考えるとゾッとする。


 それから安城に三階層での探索の話を話して解散し明日の新聞には自分の事が乗るのかなと思いながら寮に帰える。

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