第2話 新部門
「改めて、ちゃんと情報を読んでみた。やっぱりチャータメの熱量は半端じゃなさそうだな」
「時間あったからコメ欄漁ったけど、肯定的な意見がほとんどで、世間も大歓迎ムーブだね」
「新部門の公式開設と募集開始は一週間後」
それぞれが着眼点を共有する。
「俺たちの課題を整理すると、まずこの波に足を突っ込むかどうかってとこだな」
そもそもの話、と一馬が切り出した。
「活動に力を入れるっていうのをどの程度に思ってるか、共有しないと」
冷静な芽来の言葉に結翔がわずかにほおを膨らませる。
「僕は、やれるところまでやってみたい。結果には正直こだわってないけど、限界を試せるくらい、頑張りたい」
そう言った結翔には、先ほどまでとは違って少し影がある。
「俺も結翔に近いかな。でも、できるだけ上を目指して、ディメンションウォーカーとしての俺をちゃんと知らしめたい。そういう意図で活動に力を入れていこうって話をしたし」
結翔に寄り添う訳でもないが、少し穏やかな言い方だった。
「これまでの結果は悪くなかった。企画したコンテンツはまだ少ないけど、賞をもらったり、たくさんみてもらえた方だと認識してる。これも頑張ってきた結果だから、簡単にこれ以上を狙うのは難しいかも」
芽来は眉間に皺を寄せ、思いつめた表情だった。少し沈黙が流れたが、一馬が口を開いた。
「俺は、これまでの経験があっての今回だと思うし、挑戦には意味があると思う」
結翔がパッと目を見開く。便乗して芽来の方へと身を乗り出した。
「それに芽来が一番新しいことが好きだよね?リスクも労力も時間もそのために費やすらなら、悔いなしだよ」
結翔は芽来に視線を送って笑顔だ。
「現実問題が許すなら、もちろん僕だって楽しく活動を続けたい。進化していきたい」
芽来はムッとした顔でぼそっと言い捨てた。
「じゃあ、最初から決まってたよな」
一馬が一つ手を打つ。
「茶番は終わりだね。新部門参入で!これからも頑張るぞー」
「……うん」
「よし、じゃあもう一度仕切り直しだ」
姿勢を正すと、一瞬で会議らしい体裁を整える。
「今回はどういうパターンで介入するか練っていく」
淡々と芽来が指針を示す。
「まあ、臨時ユニットは複雑だもんねー」
結翔は思い出したように肩を落とす。苦笑いで、その記憶をたぐった。
「僕らで方向性を固めてから、協力を仰いでパーツを集めるか」
「前はそんなだったね」
うん、と頷いたのを確認して、一馬が切り出した。
「でもさ、まだコンテストは発表されてなくて数ヶ月余裕があると思っていいんだよな」
芽来が目を丸くして一馬を見返す。
「うん」
「かなり斬新な分野だろ?フルダイブって表現できるものがかなり新しいと思っていいと思うんだ」
「つまり?」
興味津々で結翔もくいつく。
「俺らが幅を狭めるのはナンセンスなんじゃないかなってちょっと思ったんだよ。具体的な話じゃないんだけど」
必死に一馬は言葉を捻り出した。
「いや、言うことはわかる。各分野のクリエイターは独自のセンスを持ってる。それを活かす方向性を模索するのにもいい機会」
「なるほど!」
一馬が決まり悪そうに頭を掻く。
「でもさ、前回もこの発想自体はあったんだよな。ただ、まとまらないし、責任問題とか利益とか権利とか結構しがらみが多いんだよ」
「でも!今度こそ諦めるべきじゃないよ!その一線にはどの企画部ユニットも悩んでるから僕らが積極的にこえていかないと」
「時間があるといったのは一馬。もう一度試してもいい」
芽来の口元は笑っていて、楽しそうだった。
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