透明人間

摩訶

第1話 環境なのか、認識なのか。



現代日本とは異なる並行世界の日本。

1つお隣さんの時間軸のお話し。

王制の日本で有り形骸化されてはいるが貴族制度が残る自由国家だった。

ほぼ同じ世界だが微妙に違う世界で起きた侵略行為。


誰も成瀬凛(りん)には気づかない。

見えてない訳じゃない。認識で来ない。

物理的に見えていても認識されなければ

透明人間だ。勿論、切り替えは出来る。

認識させる事も可能だが、楽に生きて行きたい

凛は周囲に認識させないで、暮らしている事が多い。仕事は株式の取り引きで利ざやを稼いでいる。年は20歳だ。金持ちではないが、さりとてお金に困らないぐらいの稼ぎは有る。

違和感を覚える。認識阻害をかけているのに、先程から正確に追跡されている。尾行か?

たまに居る。同人種に出会う。お互いびっくりするんだが。これは違う。偶然ではない尾行ってヤツだ。


(何か、用事でも有るのか?)


試しにテレパスで問いかけてみる。

無反応だ。そのまま帰宅する。尾行などする連中はこちらの自宅ぐらい突き止めてる。面倒な連中でない事を願うよ。


(私は翠。あんた、何処にも所属してないね)


ボイスチェンジャーのような声で聞かれる。

勧誘か?凛のようなスキルを重宝がる組織など、碌な組織じゃあるまい。


(勧誘ならお断りしている。真っ当に生きて行きたいからね)


テレパスはそこで止まった。話かけるのを辞める。勧誘なら執拗に食い下がる。違うのか?

音声は音波だがテレパスも波動でその人の個性が出る。波動は聞き分ける事ができる。話しかけてきた。女の波動を記憶して置く。凛にテレパスで1度でも話しかけると、波動を記憶される。指紋と同じで波動パターンは人物特定の決め手だな。敵対的な人はテレパスで話していい相手でない。勿論、敵対するならだ。普段はフレンドリーに使わせて貰っている。

もう話しかけてくる事もないだろうな。

解放された能力者に管理者達は気付いている

が、気付かないふりをしていた。

凛のように人類の制約から解き放たれた人は

ここ5〜6年で増えた。管理者達の許容する範囲がどのぐらいかは知らない。

いずれ凛のような人類は粛清討伐されるか、能力を奪われて監禁されるかだろうな。

もともと人類は皆が凛のような能力を当たり前のように持っていたらしい。余りの人類の暴走に(神)なのか、(宇宙人)なのかは知らないが

能力を取りあげて(年老いる)と言うワードを課した。肉体が滅べは長い人生で培った全ての

知識を失う。そして生まれ変わり1から知識を学ぶ。この星の文明の進化が遅い最大の理由だ。文明の進化に功績の有った偉人の魂は死ぬと、生まれ変わった人生では誘惑を連打される前世なら簡単にクリアで来た事がクリアで来なくなるほどの誘惑を連打される。貴方がイケメンなら、そして誘惑が多いのなら前世は功績を残した人類の功績者かも知れない。

決してこの星では有名人や著名人なってはいけないのだ。彼の魂はこの事実を知ってから14回生まれ変わった。彼は13回の人生の全ての記憶を保持したまま14回目の名を親から貰い、成瀬凛として生まれて来た。この事実に気付いてレジスタンスのような活動をするのは1年生達だけだ。今生で気づいたのだろう。何度も生まれ変わり知識を蓄積すれば勝てる相手でない事に気づくよ。絶望的なほど力に差がある。目立たないように生きる。管理者に敵対的な態度示さない事が生き残りの条件なのだ。もっとも大事な事は管理者が何者か探らない事だ。それをやって生き残った同志など、1人もいない。静かに生きてれば見逃すはずなのだがな〜


何かしたかなぁ?囲まれている。

レジスタンスなどの素人集団でない事は

一目瞭然だ。抗うか、おとなしく捕まるか

迷っていると話しかけて来た。


「14回生まれ変わった成瀬凛さんですね」


偉く美女を寄越したものだ。凄いオーラを感じる。この世の人類ではあるまい。800年ぐらい生きてそうだ。


「人間ですか?」


美女は笑う。タバコを出してくるので最後の一本かと考えて貰う。見えない場所に15人ほど。

認識で来ている。戦闘職の能力者だろな。

蹴散らすぐらいは可能だ。が、それをやると24時間追われるお尋ね者になる。早晩パワーバランスを失い捕まるだろうな。タバコに火を付けて貰う。深く吸うと、聞いてみた。


「人間ですよ。ホモ・サピエンスです!

ですが、この星のホモ・サピエンスでは無いですね…ふふふっ」


こちらを覗き込むような仕草を見せる。

話す内容が聞かれては困るのだろう。凛の周囲には認識阻害が作用している。この街の真ん中で殺されても誰も気付かない。飛ばすか?

凛はジャンパーだ。自分が飛ぶのは勿論だが

都合の悪い人間や物を飛ばしてしまえる。が、基本は800年生き続けた能力者には勝てないと思った。


「そうですか、私は何か問題起こしましたかね」


もう1人が出て来た。見てくれは若い男だが

1000年ぐらい生きてそうな化け物だ。


「貴方の態度はいいですね。話せる相手なら

都合が良いのでね。中には話し掛けただけで

攻撃を仕掛けてくる莫迦者もいてね。だから

美人さんに話しかけて貰うのです」


莫迦にしてるな。笑いながら話す奴だ。


「問題が有りますか?と聞いています」


女の方が場所を変えて話しがしたいと言う。


「恩師が、私はイケメンだから知らない人に付いていったら駄目だって。ごめんね」


女が振られたと笑う。


「話しは聞いておいた方がいいと思うがね」


男がテレパスで座標を指定して来た。飛べと

言う事かと確認した。


「はやり飛べたか、その座標だけで正確に飛べるのかな君は」


凛はムカつくのを抑えて話す。


「もう1度確認する。飛べと言う事か?」


飛んだ瞬間に指名手配された奴がいる。

逃げた事になる訳だ。


「それは違うな。彼は正確に飛ばずに、逃げたからだ」


凛の考えを読んだのだろう。


「逃げたのではないよ。座標が分からなかっただけだろうね」


相手の考えは読めないが。ニヤリと男は笑っている。


「飛べよ」


テレパスで女が(駄目よと)と言ったが、凛は飛んだ。何処かの応接室のようなところにでた。

ソファーに座る。電子端末が置いて有るので起動させて週刊誌を読んで待っていたら。仕出し弁当が来た。お茶くみロボットが丁寧な態度で弁当とお茶を出す。警務所ロボットのような高圧的な態度は感じない。


「頂きます」


壱万円ぐらいの幕の内弁当だが高級弁当を出すのなら穏便に済むのかと感じる。

結構な腕の仕出し屋に頼んだな。かなり美味しい。


「おぉ〜座標だけで正確に飛べる地球人がいるんだね〜」


先程の女が飛んで来た。睨んでおく。

美味いので、全部、食っておく。高級弁当など

滅多に喰えないので。


「話す事はないの、反抗的か、そうでないのか知りたいだけでね。貴方は聞いてたよね?

問題が有るのかと。答えは、問題ないですね」


なら都合がいい。凛が帰ろうとすると止められる。


「私はナミ。貴方の担当だ」


厄介な事になるのか?人類の幸せは知らない事だ。知れば先程のレジスタンス達のように迷うし、悩むし、苦しむのだ。ヘタな行動は管理者に敵と見なされる。


「この星の人間を裏切る事はやらないよ」


ミナは即答する。


「うん、させないよ」


僕のような人間は抹殺しておいた方がいいですよ。と言って見る。


「貴方は殺しても、直ぐに生まれてくる。殺された記憶を保持したままねぇ。そして何処に生まれ変わったのかまた、捜さ無ければならない。事実上の死なない魂生命体でしょう」


ふふふっと笑うのだ。何処まで知っているのかは分からない。まだ秘密は腐るほど有る。


「赤子なら直ぐに殺せるし、無力化も出来るだろう」


ただ笑うミナ。


「貴方のスキルは特異なのね。君等より永く生きられる私達のスキルに匹敵すると判断された

の。私達の弱点を知っているのでしょうね」


コイツ等は寿命買う長いだけで我等と変らぬホモ・サピエンスだからね。死ねば今生の記憶を失ってから生まれ変わる。弱点らしいものはそれだけだな。


「あぁ〜正確に分かっているのね。だから

貴方を抹殺できないの。貴方の恨みを買うほど莫迦者ではないからね」


今生の人生は失敗だ。いままで管理者に気づかれた事など1度も無かった。油断した。何処で気づかれたか?それを知るまで死ねなくなった。知って置かないと来世もバレるのが確定したからだ。


「貴方の事は調べたわ。私は貴方の好みの女のはずよ。私を自由に出来るよ」


ん!AIアンドロイドなのか。もう生身の人間なのかアンドロイドなのか区別が付く時代ではないからね。今時の若い女が仕事の為に好きでもない男に抱かれたりはしない。


「生身の人間ですよ。結構な悪口ですね~

セックスアンドロイド呼ばわりは傷つきますよ」


凛の手を取り自分の胸に押し当てる。心臓の鼓動を感じる。これが本物の鼓動で有る事ぐらいは直ぐに分かるのだが、手を引く事を躊躇うのだ。大きく張りの有る天然物のDカップだからだ。


「…あっ。ごめんなさい」


慌てて手を引く。


「いいえ。捜索活動中に貴方に惚れてしまったのでご自由に…ハニートラップではないですからね」


それを信じるほど、うぬぼれてはいない。


「では、質問。何故…私の能力を把握で来た?」


ミナは笑う。悲しい顔をする。こちらの意図を察したか。


「凛は危険人物に認定されなかったの。何処に隠れようと自由よ。でも貴方を特定する方法を

教えれば貴方は直ぐに自殺して私から逃げるよね。貴方に惚れた私が教える筈ないよね」


なる程。あくまで僕は自由の身で有る事になっているのか。これは逃げ切れないかも知れない。単純に暴力に訴えるような組織なら逃げられたかも知れないが、これはマズいな。

どうにも逃げ道がない。ならミナの身体を貰うか?このままでも逃げ道がないなら、折角の

ハニートラップだ。美味しく頂いておく。


「いまからラブホ。そこで話しを聞くよ」


嫌らしくミナの全身を視姦した。嫌がってくれれば助かるがな。


「いいよ。でもなぁ〜ロマンのカケラもない

誘い方なのねぇ」


何故かむっと来た。


「ミナだってロマンのカケラもない告白だったろ。もっと自然に告白してくれてれば、こちらも考えるよ。やり直すぞ!明日、出会うんだ。今日と同じ時間、同じ場所だ」


ミナは面倒くさそうに見ていた。仕方なさそうにしてる。


「ミニスカートがいいの、ショートパンツがいいの、どっちにする?」


コイツは俺に聞くのかよ。


「ショートパンツに決まっているだろう。

生足の注文を付けておくからな」


何故かムカつく。何時も冷静な凛にしては珍しい。徹底的にペースを乱される。

応接室から自宅へ飛んだ。若く美しい女性と

約束すれば浮かれる筈だが、そうはならない。

得体の知れない組織の人で有る。凛の見たところでは800年は生きている。おばさんを通こしている妖怪みたいなものなのに、綺麗なのだ。

そして凛の好みのど真ん中にいる。

やはりAIのアンドロイドではないか?好みに会う子をドンピシャ用意できるものではない。

不用意に外出するからこんな事になる。

風呂に入り考える。何故だ。

バレる筈がない。何処から嗅ぎ分けたのか?

分からない。諦めて寝た。明日は自分のペース

でいられますように。




✢この異世界の日本の王室表現は、作者の私如きが日本の皇室のファンタジーを創作する事を躊躇ってしまい。どうしても創作物と言えど

(天皇陛下)と書けませんでした。お許し下さい。✢



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