第2話 息ぴったりな幼馴染


とある一日にて。純一は自身の友達である蓮也と一緒にいた。


「お前らって仲いいよな」


「お前らって誰だよ?」


「決まってるだろ?真由美さんだよ、真由美さん」


「……俺とあいつが?」


蓮也の言葉に顔を顰める純一であったが、そんな彼を見て呆れたように蓮也はため息を吐く。


「なんだよ?」


「……いや。ていうかそもそもさ、なんで二つもジュース買ってるんだよ。俺いらないぞ」


「違うよ、これはあのバカの分」


「……なんで?」


「なんでって……さっきジャンケンで負けたから」


「お前ら一周回って子供か?」


「仕方ないだろ。俺もあいつもヒートアップして気がついたら……ジャンケンしてたからよ」


そんな会話をしているうちに、教室についた。そこには友達と話している真由美の姿もある。


「おい」


純一は彼女に呼びかけると、持っているジュースを投げつける。

真由美はそれを友達と話しながら、片手で受け取った。そう、純一の姿を見ずにだ。


『……』


「……な、なんだ?」


これには目撃していたクラスメイト、特に二人の友達は唖然としていた。


「……今に始まった話じゃないけど、真由美さんと息ぴったりだよな?」


「はぁ?んなわけないだろ。こんなのいつも通りだよ」


「……そういえば思い出したわ。お前ら体育祭の二人三脚で圧勝してたんだった」


蓮也が思い出すようにそう言うと、純一は再び顔を顰めた。


「そんなに思い出すの嫌なのかよ?」


「…………」


沈黙が肯定かのように純一は黙る。

何せその時の二人もいつも通りに喧嘩をしていたからだ。



『おい、足引っ張るんじゃねえぞ」


『そっちこそ、私の勢いに飲まれて転ばないようにね』


『はぁ?誰にもの言ってんだこの脳筋女』


『誰が脳筋女よ、この軟弱男』


『『あぁ?』』


パァン!!


『うわっ、おいもう始まったぞ!』


『ちょっと!あんたが変に突っかかってくるからスタートダッシュが遅れちゃったでしょ!?』


『んだと!挑発に乗ったお前が悪いじゃねえか!』


『なによ!!』


『なんだよ!!』





「……って、喧嘩しながら一位もぎ取ってたもんな。皆んな笑ってたぞ?」


「……だから思い出したくなかったんだよ」


バツが悪そうにしながら、二人は体育祭の思い出に浸って席に着く。


「俺もお前らみたいに息ぴったりな幼馴染がいたらなぁ。なんか彼氏彼女通り越して相棒って感じするし、羨ましいわ」


「あんなの持っても苦労するだけだぞ?毎日鬱陶しいしよ……」


「……ん?……あ」


「どうしたんだ?」


「……おい、真由美さんで思い出したけど、明日ってあれだよな?」


「?あれってなんだよ?」


「いや分かるだろ……!だって明日は真由美さんの——」


蓮也が何かを言う前に、授業が始まるチャイムが鳴った。


「……とにかく!明日は忘れるなよ!ぜったい!ぜったいだからな!!」


「?おう」


その言葉の意図がよく分からなかった純一は曖昧な返事をする他なかった。

なぜ蓮也がそこまで念押しをして伝えようとしたのか。

それはそうだろう。何せ明日は——芦田真由美の誕生日なのだから。

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