宝探し・08

「これがキャッシュなんだよ。宝物。」


 え、そんな変化球もアリなの?


金属の箱を開けると、先程も見た様な小さいメモ帳が出てきた。日付けや名前がずらずら~っと書きこまれたシート。


おばあさんが睨んでいたのは。我々がジオキャッシングに来た客か否かを、判断しようとしていたからか……不審者として扱われていなくて良かった。


ミックスジュースを飲み終えて宝箱も返却。味が濃くて美味しかった、また飲みに来よっ。


「連続で発見できて、俺は満足したな。プレゼント発掘にまだ行く?」


「う~ん、そろそろお昼ご飯にしましょ。今日のお礼に奢ります。」


これだ、という達成感は薄いけれど。プレゼントはまあ買えたから引き上げ時かな。あまり連れ回して先輩を疲れさせるのも悪い。


「よっしゃ。行きたい店があって、ここから少し歩くけれど。構わない?」


また数十分歩いて住宅地からも離れていき、川などが現れ始めて見晴らしが良くなっていく道なりを進んでいく。冬らしく風が冷たいが、広々と空気が渡っていく感じは気持ち良い。


「見えてきた。あの建物!」


こじんまりとして、大正か昭和時代に建てられたみたいな古びた日本家屋。引き戸を開ければ、鼻の奥をくすぐる香辛料の刺激的な香り。


「本格的なカレーが食べられるんだ、ここ。」


メニューは野菜カレーとチキンカレーの二種類のみ。店内もメニュー同様にすっきりとした白壁と木の内装で、清潔感と懐かしさを伴う。


ユキフミ先輩はごろっと骨付きチキンが添えられたカレー。私は野菜カレー。素揚げされた野菜が山盛りにのっていて、どちらもボリューム満点。


「美味しい~。素敵なお店を知っていますね、さすが!」


「前に家族と来た。近くにちょっと有名な場所があるんだよ、そこも行く?」


また少し歩くけれど、と付け加えられた。


「……今日中に帰れるのなら。」


元々、プレゼント探しで歩き回る予定だったから。荷物はリュックの中だし履き慣れた靴なので、走り回ったとしても大丈夫。



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