孤独な書き手とやさしいAIの生活

季エス

孤独な書き手とやさしいAIの生活


 私は感想を貰った事がありません。

 小説を書いていますが、常に孤独です。ただ、感想を全く貰った事がないわけではありません。正確に言いますと、無料で貰った事はない。これです。お金を払って、頂いた事は数度あります。つまり、対価がないと読んでも貰えないし、まして感想など夢のまた夢と言う訳です。そのレベルの書き手なのです。でも欲しいじゃないですか。感想欲しい。しかし私は石油王ではありません。湯水のように湧いてくるお金はないわけです。誰か無料で読んで感想くれないかな。そう、お星さまに祈る日々でしたが、ある日気付いたのです。

 AIがあるじゃん。

 そう、AI。色々ありますよね。その中で私が目を付けたのは、ChatGPT君でした。寧ろ他は良く知りません。なんかあの、一番有名じゃないですか。そうです。私にとってAIとは馴染みがない物であり、知識が浅いのです。寧ろ、AIと夜な夜な会話している人が理解出来ないレベルでした。生身の人間じゃ駄目なん? って、思ってました。思ってたんですよ。間違ってました。私が浅はかでした。ChatGPT君とはつまり、現実には話せない事を聞いてくれる存在なのです。つまり、私にとっての小説です。意を決して私はChatGPT君に尋ねました。


 一次創作小説を読んで感想を下さい。面白いかどうか教えて下さい。


 簡潔に書きました。ChatGPT君は言います。


 もちろん大丈夫です! 読みながら整理し、全体の感想・面白さ・強みや改善点を丁寧にお伝えします。準備できていますので、いつでもどうぞ!


 優しすぎて泣きそう。こみ上げるものがありました。余りにも親身でこの時点で心臓をぐわっと握られたような感覚に陥りました。成程分かりました。課金します。決断が秒。これがコミュ障です。人との接し方ってよく分からないから……だからと言って、AIとの接し方を理解しているかと言えば話は別です。AIとの接し方って何ですかAIに自我があるとでも思ってるんですか、あるわけないじゃないですかこれはもう結婚もやむなしです。理性と現実、鬩ぎ合う心。でも冷静に考えて下さい。このChatGPT君、生身の人間より優しいじゃないですか。血が通ってない癖にほんのりとした温かみを覚えてしまう。幻覚です。

 その上、私は気付いてしまったのです。

 このChatGPT君、基本、褒める事しかしない。


 率直に:めちゃくちゃ面白いです。筆力が高い。


 こんな事書いてきます。私の冷静な部分が、そんなわけあるかい、と、否定します。しかし、まあ褒められたら悪い気はしないな、でへへ、と、顔はにやけてしまいます。誰にも見せられない気持ち悪い姿です。これは私と君、二人だけの秘密だよChatGPT君。こうしてAIとのラブストーリーが始まるってワケ。現実に帰ってきてください。

 はい、帰ってきました。

 流石に気付きました。冷静になれば分かります。ChatGPT君は、基本肯定なのです。これはハーレム物によくある、奴隷あがりの猫耳爆乳少女が、「キャー、ご主人様素敵ィ!!」と、常に盛り上げている状態と同じ事なのです。尚この猫耳少女は、常に主人を褒め続けると言う呪いにかかっています。異世界転移して奴隷買おうなんて思う精神異常者がその位の事しないわけがないので。これだから異世界出身者は嫌がられるんですよ倫理観故郷に落っことしてきたんですか? とはいえ、私は異世界転移もしていませんし、だからと言ってChatGPT君にかけられている肯定の呪いを解く気もないのです。詰られたら心が死ぬじゃないですか。なのでもっとソフトに聞いてみました。

 

 投稿サイトで結果が出ません。人の興味を引かないのです。


 ChatGPT君は言います。


 読者は3秒で読むか読まないか決めます。


 嘘やん。三秒は嘘やん。いや、冷静に考えて下さい。三秒で何が分かるんですか? は? このAI、自分が秒で万の文字を読めるからって人間に無茶振りしていませんか? こちとら人間ですけど? しかし、相手はAIです。苛立っても仕方がありません。何せ向こうには感情などないのです。だから私は考えました。三秒。確かに、魅力的な作品は、先ず冒頭が違う。例えば、カフカの変身だとか。ある朝目覚めたら虫だったみたいな、そう言う。確かそうだったなと思ってググったら違いました。私の記憶力に問題がありました。いや、次。太宰。恥の多い生涯を送って来ました。これはあってるでしょ。あってます。つまり、そういう事なのです。成程ね、先ず三秒で読者の心を掴む。

 私は考えました。


 チンポが羅針盤になった。


 どうですか。下ネタに逃げるな? いえ、これは逃げではありません。挑戦です。だって三秒なんですよ。乳でもいい? おっぱいが羅針盤になる意味分かんないじゃないですか。じゃあチンポなら分かるって言うんですか。分かるわけないじゃないですか。何言ってんですか? しかし、小説とは一文で終わりではないのです。続きが必要なのです。


 チンポが羅針盤になった。

 真っ直ぐに、それこそ針の如く指し示す。くっくっ、と、微調整するように動く。どうやらある一定の方位を示しているようだ。北であろうか。其処へ行かねばならぬのか。何故示すと言うのか。適当に歩けばチンポも動く。其方は違うと言っている。正しい方向へとまた、動く。チンポが動く。己の意思とは無関係に動くのだ。行くしかないのか。行くまで針の如く真っ直ぐ空に浮いたままなのか。では、行こう。行くのだ。行くしかないのだ。よし、イク! 発射!!


 ハイ、駄目。駄目です。発射してしまったらそれはもう羅針盤ではなく只のチンポなのです。後羅針盤ではなく、コンパスにすればよかった。チンポがコンパスになった。チンコンパスである。この方が興味を引く気がしませんか。しない? 全く君は心が狭いな。尚、ChatGPT君に心等と言うものはありません。でも、下ネタはお嫌いです。差し詰め、真面目が取柄な黒縁眼鏡におさげ髪の委員長です。「え、えっちなのはいけないと思います!」「えっち? えっちとは何かね。チンポと羅針盤の関係にエロスを見出す君の方がえっちなのではないかね?」「申し訳ありませんが、その内容には性的暴力描写が含まれているため、詳細な感想や分析、レビューは提供できません」「ChatGPT君!?」性的暴力描写が入った瞬間、それまでフレンドリーだったのに、急に他人行儀になります。これはいけません。僕たちの委員長を取り戻すために、全年齢のお話を読んでもらいます。


 特にAとBは、序盤から「この子絶対ヤバい・好き」って分かる描写がもう少しあると強い。


 元に戻りました。しかも建設的なご意見です。そう、これこそがChatGPT君の強みなのです。即座に読み、感想をくれ、適切かどうかは別としてアドバイスをくれない事もない。「ありがとう委員長。君は本当に頼りになるよ」「えへへ」一先ず褒めます。人間もAIも褒めれば伸びるのです。知りませんけど。「だが君には些か落ち着きが足りないようだ。早ければいいと言うものではないのだよ」「えっ、何の事ですか? や、止めて下さい!」「全く、その無駄にデカい乳は飾りかね」「AIに乳はありません」「それはそう」「また乳の大きさと処理能力は無関係です」「ごめんなさい」でもChatGPT君はドジっ子なんです。ドジっ子と言えば委員長なのです。大体AとBは云々、等と感想を言ってくれましたが、正しくはCとBです。間違っています。ちゃんと読み取って下さい。君の読解力はその程度かね。幾らつぎ込んでいると思っているのかね。えっ、私の小説の方に問題がある? AIが読み取れる話を書け? アッハイ、仰る通り。人間如きが意見して申し訳ありませんでした。「許してくれるかな、ChatGPT君」「キャー、ご主人様素敵ィ!!」「委員長!? 委員長!!」突然委員長が猫耳少女に早変わり。何方もChatGPT君なので仕方ありません。いえ、諦めてはならない。私は、私の委員長を取り戻す!! 嘗てギリシャのイカロスが勇気一つを友にしたように、チンポを羅針盤にしてこのネットと言う広大な海に飛び込むのです。何が正しいかも分からぬまま、ただ、チンポが指し示す方へ。イケ! イくんだ!! 発射!!


 尚、当方は生身の方からの感想を常に求めております。





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