赤衣少女の依頼簿
第二話 赤衣少女の蠱惑的な依頼
赤い帽子に、赤いドレス——まるで絵本から抜け出したような裕福そうなお嬢様であった。
事務所の渋い香りからフルーティーで軽やかな香りが少女の周りを包み込んでいる。
「こちらにお掛けください。本日はどういったご用件でしょうか?」
ゼフィルがいつになく、丁寧な声色で言った。
ゼフィルはエゼルに目配せをした後、エゼルは隣の部屋に向かった。
「私は、アリス・ルーメルと申します。よろしくお願いいたします」
品のある鈴音のような声で話した。
「すみません。こちら紅茶でございます。もしよければこれでもお飲みください」
エゼルが紅茶をそっとアンティークのテーブルの上に置いた。
「ありがとうございます」
「依頼なのですが、私のワンちゃん、飼い犬を探してはいただけないでしょうか?」
必死な声を隠すようにお話をした。
「どういったワンちゃんですか?」
「はい、このワンちゃんなんですけど」
彼女はそう言い、小さなカバンから犬の写った写真を出した。
その写真をカーテンから漏れる暖かな光を反射するテーブルの上にそっと置いた。
その写真には白く毛並みが整えられた美しい小型犬ローシェンが写っていた。
「承知しました。依頼料は五万円となりますがよろしいでしょうか?」
「はい、お願いします」
すると、彼女は茶封筒を優しく茶色にきらめくテーブルに丁寧に差し出してきた。
「ありがとうございます。では、確認いたします」
茶封筒からお札を半分出して、数を数えた。ちょうど、一万札が五枚であることを確認した。
「あと、先ほどのワンちゃんのお写真預からせてください」
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます。あと、いつ、どのあたりでいなくなったのでしょう?」
彼女は少し考えたあと
「ニ日前です。帰宅したときには、もうにはいませんでした」
「そうですか、、、1週間以内に見つけられるよう努めるので、連絡をするので最後にこちらに基本情報を書いてください」
「はい」
紙とペンを渡して書いてもらっている間に、少し考えた。
(なぜ、家から消えたのか?ほんとうにそうなのか?)
色々俺は考えていたが、彼女が書き終えたみたいだ。
「書けました」
そう言って、彼女は丁寧に書かれた情報の紙を渡した。
「ありがとうございます。では、これで終わりなので、お気をつけてお帰りください」
「はい、ではお暇させていただきます。本日はありがとうございました。よろしくお願いいたします」
彼女は丁寧に頭を下げた。
だが、体が少し震えたのを二人は見逃さなかった。
そして狭い事務所から大通りへとコツコツとハイヒールの音が遠ざかっていった。
「先輩って、お客様の前だと“キャラ”変わりますよね」
「まぁ、確かにな!お客様の前では誠実に対応することが大事だからな!!」
「だから、その仏頂面はやめて、にっこりとしたらどうだ」
「検討しときます。それより先輩、依頼内容を確認させてください」
「ああ、これだ」
犬の写真をエゼルに渡した。
「さっきの話はエゼルも聴いていただろう」
「はい、ただ、この犬種はかなり珍しいですね」
エゼルが写真を見ながら答える。
「そうなのか?」
「はい、この犬種だとざっと90万円はします。
それにこの犬種は我々の国ではかなり珍しいのでもう少しするかもしれません。私は少し調べてきますね」
エゼルはモーニングコートを着込み、グレーの手袋をした。
「そういえば、昨日の火事の件はわかったか?」
「すみません、まだわかっていません。分かり次第報告します」
「分かった、頼んだぞ!」
「はい、あと先輩、僕は外に出るので、依頼料は使わないでくださいね」
「はい、はい」
「絶対ですからね!ではいってきます」
そう言い、そっと外に調べに行った。
ゼフィルはソファに横たわり、茶封筒を見ていた。エゼルには注意されたが、すこ〜しだけお金を見るだけと思いつつ、茶封筒からお札を出すと、封筒の中にメモのようなものがあった。
それを見たゼフィルはコーヒーを飲みながら
「この依頼は蠱惑的だな」
と呟いた。
次の更新予定
「この依頼は蠱惑的だな」〜ゼフィルとエゼルの依頼簿〜 夢廻 怪 @Night_own_fan_1
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