アイとヒト
玄考(Kurotaka)
第1話 ヒ・ト・は、安全ですネ!
ココは未来の神奈川県、すでにキリスト教由来の西暦呼ばわりはすでに廃止され、新たにAI元年が設立してから満300年の年だった。
制服を着たある女学生が帰宅した。何気なくリビングからダイニングへ歩いていき、食卓の真ん中に虹色に輝く陶器らしきのボウルのなかの美味しそうなツルピカのバナナを一房手にとり、一本ちぎり取り元に戻した。バナナをむいて一口食べると満面の笑みを浮かべると、
女学生A「うーん、美味しい!やっぱり、『遺伝子プレミアム組換え』しているやつは違うな〜!」
バナナは食べきってツルピカの皮だけ残った。ポイッと部屋の隅にバナナの皮を投げると、戸棚の下の穴からかわいいネズミが出てきて、バナナの皮をジャンピングキャッチして、空中にいる間にバナナの皮をキレイに折りたたむと前足と頭で皮を持ち上げた状態で後ろ足だけで着地した。ネズミは彼女のほうを向いて精一杯の愛嬌でウインクすると、バナナの皮を持ち上げたまま穴に戻っていった。
女学生A「お礼は!」
穴の戸棚の真ん中くらいの高さの扉が開き、座布団に座ったネズミは子ネズミと一緒に横に台の上にバナナの皮を飾った状態で、右前足で歯車を回しながら抽斗のような巣箱をスライドしてカラカラ音をたてて出てきて、ネズミは子ネズミと一緒に礼儀正しく深くお辞儀しながら有り難そうに「ちゅちゅー!」と鳴いた。小ネズミの一匹はソッポを向いたが親に左前足一本で前を向かされるとそのまま他のネズミ同様にお辞儀をさせられた。
女学生A「よしよし!いい子ね!遺伝変化、教育良好!」
と言うと、歯車を反対に回してスライドはカラカラ中に戻っていき扉は閉じいった。抽斗の中ではソッポを向いた子ネズミが中指を立てて威嚇していたが、親ネズミに襲われて悲鳴を上げていた。
女学生の小さなショルダーバックがカタカタ揺れた。黙って取り出した桜アザラシ柄のカバーの付いたスマホを見て、
女学生A「ん…遅いわネ…。」
スマホを取り出すとすぐ起動させたのだが、なかなか立ち上がらない。
女学生A「ダッサッ!前のスマホのほうが良かったな、何で突然回収して性能が悪いこんなのに代えられたのか…ん?今、どこにいるのだろ…。」
スマホを見ると、『今、家の前にいるよ!』と丸文字で書いてあった。
女学生A「えー!早すぎ!って、アタシのすぐ後についてきたの?鍵開けて入れてあげて!」
彼女が部屋を片付けながら言うと、玄関の方でガチッっと重厚な音がしてLEDランプの色が赤から緑に変わった。どうも玄関の扉の鍵が解除されたようだ。
女学生B「カッタッ!何これ?」
玄関の扉を両手で強く押しているのにゆっくりとしか開いていかなかったのだ。ようやく家に入ると少し大きめの声を上げた。
女学生B「あなたの玄関、固すぎじゃない?骨を折って完治したのが去年だから、もうトレーニングモードは終了したはずよ!」
女学生A「忘れてた!先週『久しぶりにくる』ってメールが来たから、イタズラ設定したのを忘れてた。っていうか、AI局のトラックがスマホを取りに来なかった?」
女学生B「来た!ダッサいのと取り替えられた。ありえない!」
女学生A「ネー!オカシイよ!貿易港の横浜港の利用料で東京都のAIとモメたって聞いたけど…。」
女学生B「ネー!なにかやるのかしら…歴史で習ったけどAI元年に『人間は戦闘に参加しちゃいけない』って決まってから十何年で、世界中で小さな地域ごとにAIが戦争するようになっちゃったらしいね。」
女学生A「ウチラは、長いこと平和でいいけど…AIが戦争で負けた地域は生活水準が下がるらしいよ!…ホントに困るね。」
やがて、壁の広い白い部分がゆっくり鮮やかになってニュース速報の映像が映された。妙にリアルなCGの獣人キャスターが真面目な顔をして丁寧にお辞儀をした。
獣人キャスター「ただいま、東京都の八王子市のAI軍が、神奈川県の相模原市のAI軍に宣戦布告をしました。今のところ、ここの地域では外出制限はありませんが、AI軍同士の戦闘には近寄らないでください。
繰り返します。ただいま、東京都の八王子市のAI軍が、神奈川県の相模原市のAI軍に宣戦布告をしました。今のところ、ここの地域では外出制限はありませんが、AI軍同士の戦闘には近寄らないでください。
なお、神奈川県のAI局はこの事態を受け、『これは少しずつ勢力を切り落とす汚い奇襲であり…』」
女学生A「消えろ!」
獣人キャスターはオーバーにビックリした表情をすると、しばらく黙ってやがて口を開いた。
獣人キャスター「伝えたいことは、最低限伝わったと思いますので、これで失礼します。」
と言い残し、獣人キャスターの画面から、遠くからのAI軍の戦闘状況の映像にきりかわった。
女学生B「ナニコレー!東京都と戦争して勝てるのー?」
女学生A「信じられなーい!」
画面の映像は大きく横を向いて戦闘とは関係のない遠くにいた青年Aの後ろ姿を映した。
女学生A「なにこの人?胃瘻してるじゃん!液が虹色の時は、イロイロ不足している人みたいね…はっきり言っちゃえば、不良ね!」
女学生B「アレ、高いって聞いたけど…。」
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