◆かみさまへのおねがい◆

茶房の幽霊店主

第1話 かみさまへのおねがい。

※(恵比寿様と御稲荷様に関する手記)


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あなたは、神社に行って神様へお願いごとをしますか?

誕生の報告と健康を祈願する初宮参り、お正月の初詣、受験の合格祈願、

恋愛成就、病気平癒、厄払い、もしかしたら縁切りなど、何かしら願いを胸に秘め、神社へ行ったことがある人は多いかと思います。


しかし、神社は自分の願いを叶える場所ではなく、今から自分がどのように行動するのか、誓いを立てる場所だと言われています。

神様のご機嫌次第で、強力な加護を受ける場合もありますが、

願いを叶えるのはあくまでも自分自身の行動で、それを見守っていただくのが神社参拝です。


願いが叶えば、お礼参りと報告をしに行くこともお忘れなく。


地域や信仰によっては他にも細かい吉日があるようですが、

月の1日、15日に参拝するのがよいとされています。


早朝の神社はあまり良いものが集まっていないとのことで、

大体9時から14時ぐらいがお参りのベストな時間だそうです。


初めて参拝する神社なら、住所と名前を心の中で伝えてから

(声を出さなくても良い)お願いや誓いを立てると叶いやすいとか。

思い立った日が良いときもございますので、上記は目安としてください。


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自分と相性の良い神社を探すのも大事です。


有名な神社でご利益を得ようと行っても、境内に入って急に気分が悪くなったり、神社に到着する前にケガをしたり、行きや帰りで事故に遭ったりするなど、良くないことが起こったときは慌てず、心を静めて、他のご縁を探しましょう。


私自身も、とある神社を参拝したところ、境内に入った瞬間からピリピリした空気が皮膚を刺し、賽銭箱の前に巨大なカマキリの〇骸が阻むように転がっていました。


それでも無理にお賽銭を入れると、上から本坪鈴(ほんつぼすず)が落ちてきたのです。危うく頭に当たりそうになりましたが、前髪をかすめるだけで事なきを得ました。もちろん、参拝は断念し、そのまま帰りました。


後にも先にも、あれほど『神様の眷属に嫌われているな』と感じたことはありませんでした。偶然の出来事だとしても、その神社には行かないようにしています。


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お話は変わりますが、

私の一族【分家】では【稲荷信仰】が禁じられています。

子供の頃、親戚の誘いで家族と夜桜に出かけたとき、神社の入口近くで赤い前掛けをした稲荷像の前足をなでていたのですが、母に烈火のごとく叱られました。


『コンコンさんは恐ろしいのよ。怖い神様だから縁を結んではいけない!』

そう言われ、引き離されました。


その後、『狐は恐ろしい。祟られる』『家が火事になる』と吹き込まれ、【稲荷・狐】を恐れるよう教育されたのです。

今は亡き【分家の長男】が【恵比寿信仰】をしていたことと、関係していたのかもしれませんが、禁忌とされて二十年以上経過していました。


実家の壁へ掛けられていた【えべっさん】のお面と【福笹】には、熊手、小槌、宝船、米俵、小判、鯛など、様々な縁起物が付けられていました。


しかし、次男である父は、長男が事故死をしてから『福笹や熊手を買うお金がもったいない』と、最後に長男が買って飾っていた【福笹】【熊手】を誰も触れさせず、何年も放置し続けていたのです。

※(父にどういう意図があったのかは知りません)


年数を重ねたお面は、白い顔から飴色に変っていったのを覚えています。


長男のお嫁さんと子供が別に家を建てて出て行ってからは、お面や福笹、熊手と神棚も撤去し、仏壇だけはそのまま家に置いていました。

これにより、実家での信仰は廃れていったのです。


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七福神の一柱でもある【恵比寿様】を、伊邪那岐命と伊邪那美命の最初の子【蛭子命】としてお祀りする神社がいくつかあります。

外来の神、渡来の神、【漂着神】、漁業の神として神格化されたクジラとして解釈されることもあるようです。


一部の地域で水〇体のことを〔えびす〕と呼ぶのは、船に乗っていた恵比寿様が櫂(かい)を流してしまい、代わりに足で漕いでいたら、その足を鮫に喰われてしまったことが由来で、海で亡くなった人の体も様々な要因で欠けるため、そう呼ばれるのだとか。


水〇体が漂着すると大漁になるので、昔の漁師たちは喜んだと言います。

※【蝦夷・えみし(漂着するもの・神様からの贈り物)】が転じて【えびす】になったとの説です。


豊漁や商売繁盛、五穀豊穣、学業成就などのご利益があるとされる、

元は海に関係する神様です。


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一方、穀物の神である稲荷大神(宇迦之御魂神・うかのみたまのかみ)は、田畑の豊穣(ほうじょう)、火を扱う商売、鍛冶の神様でもあります。【狐】はあくまで稲荷大神のお使いであって、神様そのものではありません。


社(やしろ)以外で町内や個人で祀っているところでも、11月は収穫に感謝し、厄除けを祈る冬の火祭り、御稲荷様の前で火を焚く【お火焚き】が行われます。


【火伏の神様】でもあり、大火事を防いだお話も残っています。


ただし、信仰を怠りお祀りする場を不浄のままにすると、災いを起こすとも聞きます。

『稲荷を飾ると火事になる』と言い続けていた母は、そのことを言っていたようですが……。


台所でコンロに火をつけたまま別の用事をするような人だったので、

火の始末や見張りができないのは、神様ではなく母自身の問題です。


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御稲荷様は芸能の神様としても知られています。

技芸を磨く者の強い味方であり、自営業と相性が良いとされています。


また、願いごとが早く叶うとも言われています。

一族代々の繁栄を願い、家の敷地に【屋敷稲荷】の祠(ほこら)を建てる人もいます。引っ越しする際は家族とともに移動して、次の家でもお祀りするのです。


【稲荷信仰】の約束事は、『願いが叶ったら必ずお礼参りをすること』。


特に稲荷神社で願掛けをしたなら、お礼と報告は義務のようなものです。

対価・等価交換をきちんと清算するからこそのご利益なのかもしれません。


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2025年10月15日。つい最近の気になる話です。


これは情報元から直接聞いたものではなく、文章として拝読しました。

内容が実在する伝承なのか、口伝なのかも今のところ不明で、手記に加えるか迷ったのですが、書いているタイミングで入ってきた情報だったため、記しておくのを目的とし、ここへ載せることにしました。


以下は大まかな内容となります。

地名は伏せますが、ある土地では昔、稲荷に「子供の間引き」を依頼する習慣があったそうです。


その際、「酸味の強い、酸っぱい蜜柑(ミカン)」をお供えするのが条件で、依頼が達成された後も、同じく「酸っぱい蜜柑」を報酬として稲荷の前へ置くというものでした。


なぜ、「酸っぱい蜜柑」を差し出すのか。

それは、人の子供の味が「酸味を帯びた蜜柑」に似ているからだと。


昔、神社で宮司の奥さんに蜜柑を手渡されたことがあります。

当時の奥さんの言動が不可解で、ずっと頭に残っていたのです。


宮司の奥さんは自他ともに認める“大の子供嫌い”で、それを知らぬ人はいないほどでした。

もし、あの蜜柑を口にしていたらどうなっていたのか……。


祟る神様よりも人間のほうがよほど恐ろしく、闇深いのかもしれません。


まあ、これは私の勝手な想像です。

内容を共有した友人は、また違った考察をしていました。


さて、お伺いします。

あなたは、神社に行って神様へお願いごとをしますか?

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