一速の3000RPM「最高だね、部長!」

《ヴァガォォアアアアアッ...ガコッヴァァァェェエエエッ》

 筑波サーキットで軽く流したけど...約59秒か...。及第点かな...?さすがに私はプロドライバーじゃないから...本気で攻められないや。

 シミュレーションでは49秒...差が10秒くらいある...。やっぱりドライバーは雇った方が良いかなぁ...。でも私立高校の生徒にそれが...うぅ...ん。


《数時間後》


「ただいま〜」

『おかえりなさい。部活はどうだった?』

「ぼちぼちかな...、車自体はもう完成形に近いから、あとは運転技術を極めるか、プロドライバーを雇うかってところかな」

『車のことはよく分からないけど、何かあったらお母さんに聞きなさいね?』

「うん、わかったよ、ママ」


「ちょっと出かけてくる」

『わかったわよ、もう22時だけど...車で?』

「うん...コルベットで」

『気をつけてね』


 行こう...気晴らしに、私の「Chevrolet Corvette ZR1」で、最新のC8で。この子は...私が1番好きなスーパーカーの、コルベット。私は生まれた時からコルベットが大好きだった。中学生で車の免許を取ったときもファーストカーがC5コルベットだった。


「そこから...XJ220をレースカーにするなんて...なぁ」


 ...高速に乗ったけど...後ろから「キてる」あれは...「Dodge Viper ACR」...あそこのICを降りれば峠だ...あの峠はまだ舗装が古く、ドリフトもできるしグリップも...。

《--・-・ ・・- --・・ ・・ --・-・ -- ・・- 》

 リアのライトで伝えた。...これで分かるはずだね。「勝負しよう」と...。


 バイパーが軽く蛇行運転した...蛇行...まるで獲物を狙う毒蛇のように。


《料金は1400円です》


 高速を出たあとに直進すると門がある。その門を私は時速120キロで通る、相手も同じ。


《※この先急カーブ》


 ふぅ...停止線の上に止まって...。




「後ろの信号が赤になったら行くよ」

 顔は見えない...でも、頷いてた。


...3


...2


......1


《レッド》


《ガォォォアアッン...ガッ...ガァァェェアアッ》

《ウィィィヴヴヴヴヴァァンッ...ゥィィイイヴッ》

 あのエンジン...「入ってる」...悪魔と地獄猫の名を冠した挑戦者が身につけるスーパーチャージャーが...。


 「お姉さん」を演じてる私...でも...レースだけは...興奮して...本性が...でも抑える気は無い!




 サイドバイサイドッ!... フロントが流れるッ。グリップしろ...ッ。路面を噛め!

《ヴィイイイィィンッガァァェェアアアアッ》

 スーパーチャージャーの音が...隣で...ッ!しっかりしろ私のコルベット!

《パンッ!バァンッ》

 エキマニの中に残ったガソリンの残滓が燃え尽きる音...私のコルベットとバイパーが共鳴してる...。まるで...「喧嘩」みたい...ライバル同士のじゃれ合いのような...。

《キュイイイイイギャッギャャギャギャッ!》

 路面を削るタイヤの叫びが重なる。コルベットもバイパーも、横に流れた慣性を殺さずにコーナーへ飛び込む...っ!

 上手いっ...!あの角度で戻してくるの!?必死よ...。舵角を一度でも誤れば即スピン...そのギリギリで、互いが「ダンス」してるみたいね...。


 もうすぐ...。


《この先頂上駐車場》


 吠えろッ!ミッドシップとしての意地を!


《グァアウヴァアアアアアッ!ェエアアアッ!》

《ウィイイイインッ...パンッ!ァァァァッ!》


 ノーズは...どちらが出た?

 わからない。ほんの数十センチ。でも、勝ち負けよりも...胸の鼓動がまだレースを続けてる。


《キキッ...》


「いいウデだったわね...」


 疲れて汗も滝のように出てる...でも、お姉さんみたいに言ったつもり...。


『あれっ部長じゃないっすか?』


 ぇ...バイパーの運転席から...私の後輩が...?

 でもその顔...に...その憎めない笑顔...。


「はぁぁぁぁ....」


 力が抜けて立てない...。

 汗臭い...まるでワイスピの人達みたいなムキムキのドライバーが出るかと思ったら...。


『部長に...私は勝てました?』

「さぁ...でも、私よりタフなんじゃない?」

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