化石を彫り、夢駆ける少女たち

@sor1111

一速の1000RPM「XJ220-改」

 私は偏差値65程の私立高校に通う女子高生、ごく普通の女子高生...のはず?友達もそこそこ、生活もそこそこ、成績はちょっといいくらい。でも、入ってる部活がちょっと特殊。

《サークル名:やばいレーシングカーつくろう!》

「名前どうにかならなかったのかな...」

 どうでもいいか...部長である私が一番乗りかな?

「ニオイやばっ...」

 おぇ...。もう...昨日のままじゃん...片付けしろって言ったのに...。まったくうちの子達は...。

「XJ220...改」

 XJ220改は、私たちが中古で買ったボロボロのXJ220をレストアし、レーシングチューンした車。私達はジャガーに正式な支援を受けていて、エンジンも供給されてる。XJR-9をデザイナーした「トニー・サウスゲート」さん本人からビデオ通話で指導を受け、正確な風洞実験をしてる。

「来月あたりにはレースに出られるかな...」

 CD値約0.7で...上位のレーシングカー程かな...。最高速度は出ないけども...コーナリング性能は高いね。見た目は...結構ゴツくなってしまった...でもトニーさんが言うんだから...しょうがない...。

「シミュレーションでサルト・サーキットを3分34秒...。GT3のタイムが約4分だから...。まぁ、ルールを無視した車だから、そのくらいかな」

 シム上での話、本番とシムでは圧倒的に違う。エンジンもダメになる。心臓はコスワース製3.5LのV12自然吸気。最高のエンジンだけど...。でも、壊れるときは壊れる。

「油でツルツルな床...あと少しで部員が来るから、掃除しないと...」

《ごしごし...》

 汚い...ちゃんと掃除しないと...。


《数時間後》


『部長!ちわーっ!』

「こんにちは...はぁ...」

『どしたんですか?』

「いや...掃除したから...疲れてしまって...」

 ほんとに...つかれた...はぁ...。でも、頑張らないとね。

『大丈夫すか?休んでてくださいよ』

「ありがとうね...」

『任せてください!わわっ!』

「大丈夫!?」

 まだ水が乾いてなかった...。転ばなくて良かったぁ...。

「ごめんね...」

『だ...大丈夫っすよ!』

 ふぅ...。




《キュルルルィィィィ...キュキュキュッ...ガォォァァァァアアアンッ》


 ヒリヒリするけど...いい音、それに...。

「回してみるね」

《ガォォァァァァアアアンッ...ガォォァァッ》

『異常なし!回転も滑らかっすよ!』

「よかった...V12は気難しいけど...手懐けられてよかった...」


《カチッ...スンッ...》


「あのさ...このXJ220改は、GT3から旧GT1の中間を目指してつくってるじゃん?」

『そっすね...ホワイトボードにも書いてある...』

「でも今参加できる有名な箱車レースは、GT3/GT300と、GT500じゃん?でもこの車にリストリクターをつけると、パワー不足は否めないから...」

 あとFIAから公認されてない車だし...。唯一参加できる有名なイベントやレースは、Good woodのFoS...うーん...。

「いっそのことトヨタとジャガーと私たちで、チームを組むとか?トヨタはアマチュアの支援してるし...」

『でも私たちにできるかな...って』

 たしかに...。でも、かつてTS010とXJR-14...化け物で戦いあったあの二社が協力するって...私個人としてはとても...興奮するっていうか...。




 でも「お蔵入り」って言葉は聞きたくない。




 レース好きとして、それを極めてここまで登り詰めたのに、だから...絶対に諦めない。

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