菊でここまで話を広げられるのかと、作者の発想に脱帽しました。曽祖父の熱意に焦点を当てることで、本作の菊の魅力を発揮しています。品評会。興味のない人には、賞も作品の良さも注いだ情熱も充分にわからないでしょう。それでも命をかける人は命をかけるのです。美しくておぞましい菊の話をぜひ読んでみてください。
小学生の頃、授業で菊を育てたことがある。一つだけ花を残し、それ以外はむしる。その時のぷちっとした、或いはこりっとした不思議な感触や、折れ口から漂うすっとした匂い、そういうのを思い出した。余計なわたしの感想はいらないだろう。一つの花を軸に、得も言われぬ居心地の悪さ、不気味さをじわりと描く怪作です。