Mash V Magica
@manta_ei
1話 キノコ頭と魔法少女
「あの…先輩。少し…話したいことがあるんです。」
暗く肌寒い秋の夜。とある大きな街の帰り道、しどろもどろになりながら顔を赤らめた女性が唐突に口を開く。
「…どうしたんだい…?」
並列して歩いていた男はこの女性の発した言葉を察したのか、少しの間を開けて尋ねる。
「そ、率直に言います……」
少し溜めて、思いを言葉に乗せる。
「私…!!先輩のことが好きです…!」
この暗闇の中で一人の女性が愛を告げ、温かい息とともに吐き出す。
「こんな私でも…付き合ってくれませんか…!」
「あぁ…、勿論さ」
それを胸に受け止め、鼓動を高まらせる男。
二人は大きな心臓の音とともに、唇を近づける。
男は両腕を後頭と背中に回して……
「…わっ!ねぇねぇ志村!あれ見て!」
そんな映画のクライマックスを迎えるという時に、横から小声とは思えない声が隣から飛び出す。
映画の世界に入り込んでいたのに、一気に現実に引き戻された。
「ねぇ…!ナオキ!ナオキがスマホ見てる…!」
デカブツのオギーが肩をトントンと叩きながら、視線をそちらにむけようと誘導する。
何をそんなに見てほしいのかと思ったら、時間を確認するだけのためにスマホを出したナオキに対してだった。
「ねぇねぇねぇ……!見てぇ…!あれ…!やっとるで…!あいつ…!」
『こいつスマホ出して堂々とマナー違反しとるで』的なことを俺にアピールしたいのだろう。
全くもって18歳にもなってそんなことをして何が面白いのか分からない。
(あー…終わったぁ……)
折角の良いラブコメアニメのシーンがもう台無しだ。俺は両手で顔を抑える。
「ねぇ…ねぇ…」
「おい…おぎー…うるさい…!さっきから…!!」
掠れた声でオギーに対してナオキも応戦するが、
「へへへへへ…あーおもろ…。」
(…くねぇよ…!あー、マジクソやぁ〜〜)
そしてそんなことを考えている間に、
〜〜〜♪
映画の主題歌が流れ始める。エンドロールが流れ始めた。
(あぁ…終わった……)
11月7日の今日。オギーとナオキ、俺の陰キャ社不メンツで近所のデパート内の映画館に来たのだが今日は最悪な日だ。
(ラスト…全く内容入ってこんかった……)
折角の楽しみにしていたアニメ映画をこのたった一人のデカブツに邪魔されたのだ。あぁ…まじでこいつ…!!
落胆と怒りが交互に降り混ざって沸々と体の底から湧いてくる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
シアターからでて、ポップコーンとドリンクを返却場所に戻しにいく途中にデカブツが感想を語る。
「あぁ、おもろかったなぁ…このシュバ!」
悪気の無い顔でオギーはこちらを見つめてくる。
「あぁ…うざ……」
俺はこいつの顔が見たくなくて顔を逸らす。
あぁ…思い返すだけで嫌だ。シアターから出る時なんてもう周りからの視線はやばいのなんの。
俺達の近くの席の人たちみんな睨んでた。
もう心は痛いし…変な汗は超出るし……
「まぁまぁ、悪かったよキノコ…。今度飯奢ってやるから。」
俺のもっさりした髪を見て、彼はイジる。
うるせぇ、髪が伸びやすい体質なんじゃこっちは。なりたくてなっとるんじゃない。
ていうか反省してんのかこいつ…
(もう今度からはこいつと行かんとこ……)
今度から映画を見に行く時はナオキとだけ行こう。もう迷惑野郎とはこりごりだ。
「ちょっと!あなたたち!」
ビクッ!!
強烈な女性の一喝が勢いよく背中に向けられる。
3人共肩をビクつかせて、同時に後方を見る。
そこにいたのは自分と同年代くらいかそれより下の黒髪ロングの女性だった。
服装は茶色のブルゾンを羽織り、青のデニムパンツと黒いブーツという何ともおしゃれコーデだ。更にはサングラスをかけてよりおしゃれに拍車をかけている。
「さっき映画でうるさかったのあなたたちよね!?」
(あ……)
まずいこの流れは…
「他にもお客さんたちはいるのよ!?マナーくらいきちんと守りなさい!」
(あー……そらそうなるわな!!)
今にも声に出して叫びたかったが心の中でなんとかセーブする。
横に居たオギーはそれを受けて
「あ…はい、すいません。」
一応、彼にも悪いことをしていた自覚はあったのか謝罪をする。
「あ、あ……あのすいませんでした。 」 「えと…申し訳ないです……」
俺とナオキもここで謝るべきだとは思い、見知らぬ他人と喋るのが苦手ながらも善意が突き動かす。
「…君たち……一応身なり的にもう大人よね…?」
「あ……ハイ。」
「それぐらいの常識は身につけておかないとね…だめだよ。」
「……ハイ…」
((チクショウ…なんで俺たちまで…))
二人は不服ながらも、取り敢えずは返事をする。
「まったく…そういうところをしっかりしてよ……」
「ハイ……」
「じゃ、私もう行くから。」
そう言い残し、彼女は映画館の出口へと向かう。
その後ろ姿を俺達は見ていた時、横からナオキが口を開く。
「いやぁ…言われちゃったね。」
「も…申し訳ない…。」
オギーは彼女の説教が効いたのか、いつものビッグボイスが抑えられている。
やっとマナーモードに入ったか。
「草。」
俺は小声でそう残す。
なんか俺達の映画の邪魔をした報復を受けたようで面白かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
映画も終わり、数分経った頃。
デパート内の映画館から出て、次は何をしようかと1階で話し合っていた。
「んで?どうする?飯でも食いに行く?」
「あぁ……」
俺はスマホを取り出して時間を確認すると、もう1時を回る頃だった。
「どうする?」
俺は全く頭にいい案が浮かばなかった。
ファストフード…いやぁ……違うなぁ……
「まぁ…マクズで良いんじゃ……」
オギーが提案を持ちかけてきた時……
ジリリリリリリリリリリ!!!!
そんな他愛の無い話をしていると、けたたましいベルの音が店内に鳴り響く。
「え?何……火災報知器?」
普段学校の避難訓練でしか聞き慣れないあのベルだ。
どこかで火事が起こった?
ーーえ?火事?
ーーえ?まじ?まじ?いたずらじゃなくて?
一瞬の出来事に人々は足を止めて戸惑う。ざわざわと不安を湧き上がらせてくる者や普段あまりない刺激にワクワクしている者もいる。
しばらくするとアナウンスが流れ始める。
ーーこちらは、防災センターです。
ただ今3階で、自動火災報知設備が作動しました。
現在、確認しておりますので、係員の指示があるまでお待ちください。
3階の自衛消防隊員は、確認を行い防災センターに報告してください。
とのことだった。
「……ど、どうする?」
俺は急な出来事にどう対処すれば良いか分からず、戸惑っていると
「え?もう普通に出ようや……多分1階は火事なってないし。」
「…いや、確かにそうだけど……」
確かに見る限りでは火なんて見渡しても全く見えない。
「出口も近いし、もう先でた方が良いんじゃねぇ?」
とオギーが言う。確かにオギーの言うことは一理あるかもしれないが……
「え、え…でも指示があるまで動くなって……」
「まぁ、それより先避難した方が良いだろ。そっちの方が安全じゃね?」
オギーは自己判断を頼りに、そそくさと出口に行く素振りをする。
「いや、でも……」
それでも本当に出ていって良いのか分からず俺は困惑していた。
「ま、俺たち先出るぞー、いこナオキ。」
「…あ、うん。」
二人はそう言って出口へと向かっていった。
「あ……ちょっ…〜〜…!」
(どうしよう……二人はああやって言ったけど……)
(避難誘導を待って安全に……)
(いや…けど安全そうなのは確かだし………。)
ここぞという時に自身の頑固な悪い優柔不断な癖が出る。
(うーん……まぁ…出ようか。)
俺はしばらく迷った結果、すぐ二人の後を追うことにした。
そして目線を二人の方に向けると丁度、出口の自動ドアから出ていくところだった。
(あいつら…ちょっとは待ってくれよ……)
二人を追いかけようとしたその時…
「……!?」
ゴォッ
突如として自動ドアの前に熱気とともに火が広がる。
「…えっ!?」
明らかに、普通ではない火の広がり方だった。
火の元となるような物は全く見当たらない。
(ひ、火が……!!)
火は一気に広がり、こちらに敵意を持つかのように火が襲ってくる。
「う、うわぁぁぁぁっっ……!!」
俺は全速力で火の広がる位置とは真逆の方向へと全速力で走り出す。
ーーキャ、キャァァァァァ!!
1階に人々の大きな悲鳴が響き渡り、逃げ惑う。
(なっ…なんだこれなんだこれなんだよこれ!!)
俺は一心不乱に腕を振り、足を回転させる。
ーーアツいアツいアツい!!
ーーだ、だれか…うわぁぁぁぁ!!
周りの人々もとにかく火とは逆方向に逃げようと、悲鳴を上げて走る。
だが
「うぅわっ…!」
ついには反対方向からも火の手が伸びる。
とてつもない高温に、俺や周りの人々は足を止めてしまう。
(……や、焼かれる…!!)
反対側の火がこちらに来ると悟った俺は思わず目を閉じて、死を覚悟したが……
(あれ……?)
何故か火が急に止まったのだ。
……いやというより…
(ひ、火に囲まれた?)
辺りを見渡しても炎の壁が俺達を逃げまいとするように立ちはだかる。
炎はジリジリと空間を狭めていき、人々が自然と密集していく。
(取り敢えず、煙吸わないように……)
俺はとにかく口と鼻をハンカチで抑える。
(な、なんだまじで……)
有り得ない超常現象が起こっていることに俺は理解が追いつかなかった。
ーーどこだ。魔法少女は……
アナウンス程度の声の大きさが響き渡り、次の瞬間に火が集合してあるものへと変わる。
(なっ……)
それは魔法少女アニメなどで見るような、魔物だった。
3メートルはあろうほどの巨漢で頭部がヤギのような曲がりくねった角を生やしていて、鬼のような牙を生やし、目はヘビのような鋭い目つきに人間も合わせたような顔だ。
ーーう、うぁぁぁぁぁぁッ!!
人々は悲鳴の嵐を生み出し、パニックに陥る。
ーーいるんだろう?魔法少女よ……全ての階の人間は炎が包囲した。
(ど、どうなってるんだ……何が一体…?)
ま、魔法少女って…なんだ?本当にいるのか…?
ーー……身を投げ出す気が無いならば仕方ない…。ここにいる人間たちを焼き殺して確かめてやる。
そう言って両手のひらに火を纏わせ始めた。
「…ウソだろ…?」
案の定、次の瞬間にこちらに向けて火が手から放たれ、
こちらに向かってくる。
(あ、死……)
俺は悲鳴を上げるまでもなく死を悟ったその時、
「チェンジ!」
突如として謎の声とともに、障壁が目の前に出来上がる。
「はっ…」
障壁をよく見ると、タイル製でできていた。
そのためこちらまで火が広がることはなかった。
そして俺の後方から、目を疑う存在が前に出る。
「ほら、出てきたわよ。」
そこにいたのは、俺がアニメで良く見るような魔法少女だった。可愛らしいフリルのついたスカートとドレスとリボンで白髪。
間違いなく本物だ。
俺はその存在に目をきらめかせる。
(こ、このタイルの障壁ってあの子のおかげか…?)
ただイメージの魔法少女の能力とは違い、よくわからない。
ただ人目見てわかることは
(物体の形を変えた……?)
「取り敢えず全員下がって。死ぬよ。」
ーー……!!
その言葉に怖気づき、俺や周りの人々も彼女から離れる。
ーーアーティファクター《加工者》か……よし、舞台は万端だな。
よく分からない単語を発して、不敵な笑みを見せながら魔法少女の方を見つめる。
「……気に喰わない。」
そう言ってタイル製の地面に勢いよく触れる。
「うおっ…!!」
すると次の瞬間に俺のいた場所が窪んで、深さ3メートル程の大きな穴が出来た。
そして形状変化させたタイルが俺たちの頭上を覆い、視界は真っ暗になる。
(しぇ、シェルターみたいなものなのか……)
だがそれでもまだ辺りはパニックになっている。
ーーな、何だあれ!?
ーーちょっと…!私たち助かるのよね!?
不安を掻き立てる人々の悲鳴が異空間に響く。
ーーーーーーーーー
場面は変わり、人々を一旦避難させた魔法少女が魔物に対して睨みつける。
どちらかがいつ動き出してもおかしくない。
「………チェンジ形状変化!!」
先に動いたのは魔法少女だった。不意打ちをするように勢いよく地面に屈み、タイル製の床に両手で触れる。
ーー……!!
その瞬間にタイルがグニョンと形を変化させ、魔物に向けて襲いかかる。
急な不意打ちに魔物は苦い顔する。
ーーくっ…
防火性のあるタイルは並の炎では燃やし尽くせないためか、魔物は避け続ける。
「逃がさない…!」
そう言って形を伸ばし続け、仕留めようとする。
ーーまずい……
次の瞬間に羽を生やして飛び立った。
それを見逃さないように魔法少女は眼球を素早く動かす。
魔物は二階までの高さに位置していた。
猛攻がきついからか、地上から高く離れた空中へと逃げたのだろう。
「まだまだっ…!」
だがそれでも彼女の変形タイルは二階まで伸びて、そのまま高速で魔物に直撃させようとする。
ーー……!!
だがそれでも魔物はギリギリで攻撃を躱す。
「…そこ!」
…が、躱すことを予測していた彼女は伸びていたタイルの側面からもタイルを形状変化させて伸ばす。
流石にこれはイレギュラーだったのか、魔物は驚いた顔をする。
「もらっ……!?」
『もらった』と言葉を発する前に彼女はあることに気づいて、形状変化させていたタイルをピタッと止める。
ーー……?
魔物は何で攻撃を急に中断したのか分からなかったが、後ほど理解した。
ーー………やはりこの場所で襲撃して正解だったな。
魔物は余裕そうな表情を浮かべる。
「チィッ…」
魔物のすぐ後ろには二階部分があった。
万が一あそこにぶつかっていたら、崩壊した瓦礫が民間人のいるシェルターにも降り掛かってそのままぺしゃんこだろう。
「あぁ、まじ……」
魔法少女はかなりのハンデを負っている状況を理解して、思わず愚痴を吐きかけた。
「…あぁ、もう!!」
だが倒すことを第一なのを思い返し、伸ばしていたタイルを方向転換させる。
「当たれ…!!」
もう一度攻撃に専念してタイルを伸ばし続けるが、
ーーどうした…?焦ってるのか…?
ギリギリで魔物は避けて、二階部分にわざと当てようと攻撃を誘導するが、彼女の上手い調整のおかげでギリギリで止まる。
「くっ…」
魔法少女の方はかなり体力を消費してきたのか、劣勢に追い込まれていた。
ーーよぉし……さて……
ビュンッ
「……!!」
伸びるタイルの攻撃の隙を見計らい、一気に彼女に人間離れした勢いで魔法少女に飛びかかる。
「……ッぶな。」
ギリギリで攻撃を躱したが、この時少女の体勢が崩れる。
その隙を見逃さない魔物だった。
ーー喰らえ…!!
もう一度高く飛び上がり、空中で翼を利用して即座に方向転換する。
「やばっ…!」
向かってくるのを察知した少女は地面のタイルに触れて、また障壁を立てる。
「……ん?あれ…?」
この時少女は焦っていたため形状変化させるタイルの量を誤った。
「えっ…えっ…?」
丁度シェルターの端っこに居た志村の頭上だけなくなる。
志村は突如起こったことが分からず困惑することしか出来なかった。
(…取り敢えず…何とかこれで耐えるしか……!)
志村が困惑している最中、少女は防御に……
ーー無駄だ!
「……!?」
タイルの盾など関係なく、少女に向けて炎が放たれる。
「なっ…」
先程よりも火力が強いためか、防火性を持つタイルでさえもドロドロに溶かして焼き尽くす。
そのまま障壁を貫通させて火が彼女へと直撃し、彼女の衣服へと引火する。
「くっ…リバース《解除》!」
彼女は即座に自身の衣服に触れて、形状を変化させる。
シュルシュル
彼女の着ていたドレスとスカートが糸へと変わり、服の原型がなくなって地面へと落ちる。
そして彼女は見せパンと下着一丁へとなる。
「はぁ…はぁ…」
彼女は息を荒げる。
その合間に余裕そうな魔物が話し始める。
ーーおぉ…触れることで物体を元に戻したり、形状を変化させたり、物体そのものを変える力……これは良いアビリティだ。
「はぁ…はぁ…っ…うぅ…」
長いこと口や鼻を覆っていないため、少女は一酸化炭素中毒によって少女はめまいによってふらつき、顔が青ざめている。
「ハァッ…ハァッ…!!ホント…やられたわ。」
ーー2階にも3階にもまだ人間たちがいるのに…助けられなかった人間たちは無念だなぁ……
彼女を揺さぶるように魔物が煽りを入れる。
ぶちッ
「はぁ……はぁ…はぁ~〜〜………」
と効いたのか、たまりまくったストレスを何とかため息で吐き出そうとするが、意味はあまりなかった。
この時、彼女の心情は散々に叫びたいことでいっぱいに溢れる。
(あー…まじ…あーまじで……)
(……二階にいる人間たちごともう消し飛ばしちゃいたい。)
と魔法少女らしからぬ発言を彼女は心の中でぶちかます。
(こんなボロボロの格好で戦いたくないのよ…。あーだれか応援要請でもするかしら…?)
ーーおい…!俺等本当に助かるんだよなぁ!?
(……うーわ声的に明らかおっさんね。自分はなんもできないくせして……)
シェルターの中から聞こえる声に少女はうんざりとする。
ーーひっ、だ、だれか助けて……!死にたくない!」
(…今助けてる最中でしょ!グダグダ言うな男が!)
ーーね、ねぇ!なんで穴が開いたの!?私たち殺す気!?
(うるさいな!…たかが穴ぐらいで……)
「……え?穴?」
少女はそう復唱し、シェルターを作った場所に目を向ける。
「…や、やば…!」
急いでタイルで塞ごうとするが、それを魔物は見ていた。
ーーチャンス……!!
その隙に魔物が両手のひらから、志村のいる穴と少女の両方に向けて炎が放たれる。
(間に合えッ…!)
心で念じた通り、ギリギリで志村のいた穴をタイルで塞ぎ、少女の方に来ていた炎も、貫通しないようにタイルをできるだけ分厚く作る。
(ホッ……)
私は何とか犠牲は出なかったことにホッと一息をつくが、
ーー安心している暇はないぞ…
「しまっ…!」
それが仇となり、気づかぬうちに接近していた。
何とか高く飛んで避けようとするが
ーー逃がさん…!
ドゴォ…
「がっ…!!」
魔物が喰らわせたのは火の攻撃でもなんでもなく、純粋な拳だった。
思いっきり腹パンを空中で喰らい、地面に向けてふっとばされる。
ーーーーーーーーーー
先程急に開いた天井がすぐに閉まってくれたことに胸を撫で下ろした。
「あ、あー…!びっくりしたぁ!!」
急に上が開くから何事かと思ったよ。
まじで怖かっ…
ドガガガンッ……!
「へ…?」
けたたましい音とともに暗闇から明るい光が入り込むがその中に一つの影があった。
魔法少女自体がタイルの天井ごと突き破ってきたのだ。
「う、うぉぉ!!ぐえぇッ!」
俺はふっとんできた魔法少女とぶつかり、下敷きになる。
「かッ…かは…ッ…」
少女は悶絶してもう動けていない。
この出来事に周りの人々は阿鼻叫喚している。
「う…お、重…」
俺は小声でそう呟きながら、何とか彼女から抜け出そうとする。
「ん〜〜…!」
何とか力を振り絞り、上半身を巧みに動かして彼女の体から抜け出した。
よし、次は下半身を…
「かっ…かっ…」
脱出しようとしたが、その前に彼女の重体が目に入った。
「だっ…、大丈夫!?」
大丈夫なわけが無いのは分かり切ってるのに、俺は思わず声に出してしまう。
「カッ…カハッ…!」
少女は腹パンにより呼吸ができていなかった。周囲の暑さが、より息苦しさが上乗せさせている。
「ヒュー…ヒュー…ハー……スー…」
呼吸を少女は整え、飛びかけていた意識を何とか取り戻す。
「だ、大丈夫?し、しっかりして!」
俺は彼女の体をゆすりながら、少女の反応を確かめる。
(……あ、この子………)
少女は見覚えがあるのか、少女が『大丈夫』と言おうとしたとき…
ーーおい!助けてくれるんじゃないのかよ!
どうなってんだよ!
少女に向けて人々の中の一人がそう叫ぶ。
それにつられて
ーーお願い!私たちを助けて!
ーーさっさと、何とかできないの!?私こんなとこで死にたくない…!
どんどん人々は少女の気持ちなど考えずに、自身たちの願望を彼女に向ける。
「あっ……ちょっ…」
俺はこの人たちに言いたい気持ちは山々だったが、大衆に対して物が言える度胸が無いため、言葉を詰まらせることしか出来なかった。
「……っ」
俺は結局フォローすることに失敗した。
少女はそれを受けて自身をもう一度奮起させる。
「はぁ…はぁ…」
彼女は俺の体の上から退いて立ち上がる。
「あ、あの…大丈夫?」
「…心配する暇があるなら、私と同じ土俵に立って言ってよ…役立たず…」
と、俺を突き放すような言葉を言い残してそそくさと穴から出ようとする。
「あ……」
ーーま、いてもいなくても変わらないしいっか。
ーー志村はいいよ。別にそんな何かするわけでもないだろうし。
彼女の言葉によって、心に負っていた多くの深い傷を更に抉った。過去に散々言われてきた記憶がフラッシュバックする。
基本誰かからはいわれっぱなしの人生。
嫌だと思っても俺は上手く言い返せなかった。
(………)
そんな中で俺は魔法少女アニメに出会った。彼女たちは弱い人々を守って、寄り添う夢のような存在。
それに俺は心を奪われずにはいられなかった。
だからショックだった。
その心を奪われた存在からすらもこうやって突き放されたことに。
(折角会えたのに……)
そして最悪、俺はそのまま死亡エンド?
ここが人生の幕引き?
(………)
俺はしばらく、ショックで俯いていたが、この時あることを決意して顔を上げる。
(…こうなったら…!!)
ーーーーーーー
少女はすぐに超人的な身体能力を駆使して、高さ3メートルのシェルターからジャンプして脱出し、着地する。
ーーあぁ、生きてたか。内臓破裂でもして死んで欲しかったが…頑丈だな。
魔物はタイルの床に立ち、少女を見つめる。
「…はぁ…はぁ。」
少女は耳を傾けず、魔物が目を離した隙に何をするか分からないため相手の方を向いたまま、地面にそっと触れてシェルターに開いた穴を塞ぐ。
ーー…良いのか?その穴の方見なくて……
またもや何か魔物が話かけてくるが油断を誘っていると思い、無視する。
「………」
「もし、その穴から誰か出てきたらどうする?」
そんな奴、いる訳がないだろう。
ただでさえ自分の命が大切なやつらに自分の命を投げ出そうなんて勇気あるはずが……
「ぅぅうぉりゃあぁぁぁぁ!!」
突如として後方から物凄い叫び声が聞こえた。
「…!?」
そう、志村だ。シェルターの壁の窪みに足をかけて、穴が閉じる前に脱出したのだ。
「なっ…!?」
ーーだから言ったろ。穴を見た方が良いって……
そう言いながら魔物は右手の平で作った炎を志村に向けて発射する。
「バカ……!」
即座に志村を守るために、タイルで防ぐが…
ーーそうはさせん…!
左手の平から、かなり火力の強い大玉の火の玉を少女の方に飛ばす。
(……あぁ、やばい!この火力は…!)
流石にこの火力は完全に数秒で消し炭になる威力だ。相当厚い壁じゃないと死ぬ。
かといって志村の方も防がなくてはならないという精密な動作が少女には求められる。
(…あぁっ!もう!やるしかない!)
そう言って即座に床に手を触れる。
「チェンジ…!!」
自身と志村を守れる範囲の広く厚い壁を形成する。
ただ魔物に対しての攻撃に使ったタイルも含めて形成したため、これによって素材のタイルはもう残り少ない。
ゴォッ!
「ぐぅっ!」
強力な火が二人を襲う。
障壁となっているタイルの表面がドロドロに溶け出す。
「うぁぁッ……!」
あまりの火の強さに、少女は悲痛な叫びを上げる。
(あ、あの子は……)
体が吹っ飛ぶ瞬間に志村の方を見てみると、彼の方の壁も貫通する寸前だった。
(……くそっ。)
私は即座に地面を踏みしめて、人間では編み出せないスピードで志村のいる方へと勢いよく飛びかかる。
(頼む……届いて…)
そのまま自分もろとも、志村を掴むことができた。
ボゥッ!!
少女と志村は炎の手からギリギリで逃げた。
だが彼女の武器となる床のタイル素材は魔物の超高温の日でほぼ全て燃やし尽くされた。
志村と少女は密着して床に転がり、転がった衝撃によって二人の体に痛みが走る。
そのまま二人は仰向けになって倒れ伏す。
だが
「ぐぅぅっ…!!」
少女は屈強な意思を支えに、少女はすぐ起き上がる。
魔物に目を向けようとするその前に
「ハァ…ハァ…」
少女は志村に目を向ける。
だが志村の野郎は仰向けに倒れたままで、少女より傷ついていないくせに感謝の一言すらない。
(こいつ……!!)
少女は思わず志村を睨みながら、仰向けになった志村の胸ぐらを両手で掴む。
「ハァッ……!!ハァッ……!!っ…!なんで!?死にたいの!?」
少女は冴えないキノコ頭に対して相当な怒りをぶつける。
普段の陰キャな志村であれば何も言い返せないが、今回は一味違う。
「……うるせぇ!」
「なっ…」
そんなキャラじゃなさそうだったのに急に怒鳴ってくる志村に思わず、驚きを少女は隠せなかった。
「誰かからはいつも決まって見下されて!キモいだのなんだのしょうもねぇ!!俺何にも悪いことしてねぇだろうが!」
「は、はぁ…!?」
意味が分からないことを発する志村に思わず困惑してしまう。
「なのにそんな仕打ちをアンタみたいな人にもやられて…!?そのまま野垂れ死ねって!?」
「ちょっ…良いから落ち着きなさい!!」
完全に自暴自棄になっていて、生半可な言葉では動かなそうだった。
志村は発言をやめない。
「そんなのごめんだね!だから最後くらい俺は好きなようにやるさ!!嫌いなもの全部俺もろとも死んでしまえ!」
「俺の気持ちも知らないで役立たずって言ったお前も!理不尽に焼き殺そうとしてくるお前も!俺のことを悪く言う奴全員だ!」
そう言って魔物と少女に向けて敵意を向ける。
ーー…なんだあの無茶苦茶なキノコは…
魔物でさえも、こいつは人間なのかと疑う程に志村は狂っていた。
「そんな格好しておいて、結局俺一人が負ってる心の傷すら 救えないのかよ!上辺だけかよ!あー!だせぇ!」
「………ふざけんな!!」
この時彼女の中で何かが切れた。胸ぐらを掴んだまま、志村を床に向けて強く打ち付ける。
「こっちだって…!中身はあなたと同じ人間なのよ…!他人を救える範囲には限度がある。そう簡単になんでも救ってくれる思うな!」
「あ?なんですか!?魔法少女はそれを乗り越えて、救えるものを増やしていくのが当たり前じゃないんですか!?」
「……ッあぁそうだよ!乗り越えなきゃならないよ!」
「…!だったら…!」
「だから…!!多くを救うためには、必ず割り切らなきゃならないことがある!」
ビクッ
志村は少女の出す、迫力に思わず黙ってしまう。
「全て救おうと抱え込んだら…乗り越える前に潰れる!だから全ては救えないのよ!」
迫力に一瞬は押されたが、すぐに切り替えて少女を問い詰める。
「………じゃあ!その救えなかった人たちの無念はどうなるんだ!?まさかほっとくなんて言わないだろな!」
「それは……」
ボウッ
少女が言い返そうとした瞬間に魔物が火を飛ばした。
奇襲だ。
「うわぁっ…!」
「っぶな…!!」
志村は予測できなかった攻撃に声を上げて驚き、情けなく腰を抜かして驚いている。
冷静さを残している少女はギリギリで残り少ない床を使用して防ぐ。
ーー当たらなかったか……まぁいい。
(残りタイル2枚…!!)
もうこれ以上は流石に後が無い。
しかもこの志村を守りながらいくとなると……
「まずい……。」
ーーさぁ、もう後はない!大人しくお前の命を渡すなら、ここにいる全員を助けてやらんでもない。
「……………」
少女は深く考え込む。
万事休すのこの状況に、少女が出した答えは
「…分かった。私の身を差し出すわ。」
「……っ!?」
志村は少女の行動に思わず、衝撃を受ける。
(な、なんで……こういう時でも諦めずに勝つのがいつもの流れなんじゃ……
それか仲間かなんかが止めに来るとか…)
ーー…つまりは諦める…?ということで良いのか?
「私の命一つでみんな救えるって言うんなら…………」
「………!!」
この一言で志村はハッとした。
そう、これはなんでもかんでもご都合主義で上手くいくアニメ世界ではない。
現実的に今、命がかかった状況にいるのだ。
いつの間にか魔法少女なら絶対に何でもしてくれるなどという甘い幻想に浸っていたのだ。
現実と幻想の境目を見誤ってしまった。
ーーよぉし…こっちに来い。
「あっ……ちょっと待って…」
自分のせいで少女が窮地に陥っていることに、死という概念が志村を気づかせる。
志村は少女を止めようとするが
「こないで!」
と釘を刺すように少女は忠告し、また俺は止まってしまう。
少女は魔物の方へと歩き出す。
志村はそんな彼女の後ろ姿を見て、モヤモヤした感情が膨らんでいく。
「………な、何も死ぬ必要は無いだろ!それにその魔物は俺らの命の保証をするとは言ってない!無駄死にかもしれないんだぞ!?」
「………」
少女は少し歩みを止めようとして歩く速度を緩めるが、覚悟は揺らがないようだった。
「………!!」
志村はこの展開に焦っていた。
俺の起こした行動のせいで一人の命が奪われてしまうことに。
でも、もう後戻りは出来ない。
気づけば、少女は志村に目を向けずに魔物の懐まで近づいていた。
ーー覚悟は良いか?
「えぇ。」
ーーと、その前に何か変なことをしないように手を焼いておこう。
「…!?」
そう魔物が告げた瞬間に彼女の両手に向けて火が放たれる。
「ッ!!うあぁぁぁぁッ!!」
彼女の手の皮膚はただれてしまい、骨の部分が見える。
彼女は激痛によって床に倒れ込んでゴロゴロとのたうち回る。
「う、うあ……」
志村は人生初めての光景に恐怖してしまい、その場から動けなくなっていた。
(消えろ!消えろ!)
少女は何とか転がって火を床に押し付ける。
そのためなんとか火の消化は出来たが、凄まじい火傷を負ってしまう。
「うぅぅぅ………」
ーーこれで、俺に触れて形状変化させることは出来なくなった。そうだろ…?
そう言って魔物は少女の魂胆を見透かす。
「……!」
ーー騙し討ちで、肉塊にでもするつもりだったんだろうが……全部ガキのやることはお見通しなんだよ。んじゃ、痛いだろうしすぐ楽にしてやる。
そう言って彼は特大火力の火の玉を両手に溜め込む。
恐らく骨も残らないだろう。
少女は少し考え込み、魔物に向けてある言葉を吐く。
「ハァ…ハァ……最後に言わせて……」
ーーお、何だ命乞いか?
「そういうの…見通しが甘いって…言うのよ。」
と苦し紛れににやりと笑う。
ーー…は?
次の瞬間、キメラの立っていた床が何十メートルも窪む。
ーーぬぉぉぉぉぉ!?な、なんで…?
少女はそんな疑問に答えるよう、穴に向けて言葉を発する。
「私がいつ手を使わなきゃ能力が使えないって言ったのよ…バーカ。」
反響した声が魔物のところまで届く。
ーー手は…ブラフか!?
予想外の出来事に魔物はただでさえでかい叫び声を上げながら落ちていく。
そして……
「…押しつぶされろ!」
穴の側面の壁を変化させ、生きたように魔物の体を追う。
このまま圧死させる作戦だ。
ーーぐ、ぉぉぉぉおぉ…!!
ずぅ…ぅん
地下で鈍く重い音が響き渡る。
「た、倒した……?」
「……は、はぁ…はッ…ふ、よ、よし…」
やりきった笑顔を見せながら少女は倒れ伏す。
「あ……ちょっ…大丈夫!?」
志村は彼女がいきなりうつ伏せに倒れたため、何とか助けたいという一心で近づく。
「ど、どうにかして…助けを……」
志村があたふたとしている最中にも、建物内部はどんどんと倒壊していく。
「とりあえず…手には触れないように…」
そう言いながら、まずは彼女の体を起こす。
そして志村自身の肩を貸して、火からなるべく離れた場所に移動させる。
「…あ、暑い、重い…」
そう愚痴を吐きながら移動をする。
「…ん?なんか言った?」
びくッ
急に言葉を発し始めた少女に驚いて、貸した肩をすくめてしまう。
「い、いや何も……」
「そう…」
「………」
「………」
二人は先程の修羅場のせいで、しばらく気まずい空気感が流れる。
「あ、あの…さっきは……すいませんでした。」
志村は自分の犯した過ちに対して、謝る。
「……いいや…いい…のよ…」」
あまりの痛さに、魔法少女は上手く言葉が出ていない。
かなり重体だ。
「と、取り敢えず体寝かせますね。」
そう言って俺は彼女の体を床に向けて寝かせる。
「え、えーと…どうしよう……?冷やすものなんて無いし……」
医療知識が皆無な志村はただあたふたしながら、解決策を探すためにズボンのポケットからスマホを取り出す。
「包帯とか巻いた方が良いのか…?いやでもな…」
なんとか彼自身のスマホを検索して必死に対処法を探す。
この
「………」
その志村の必死になっている姿を魔法少女は視線を外さずに見ていた。
「え、えーと…とにかく患部を冷やして…?あとは…」
ボォォォッ!!!
「えっ……?」
突如として志村の後方から火柱が上がる。
火柱が上がった所を見てみると、そこは魔物が落ちた穴からだった。
「まさか……」
俺がそう呟いたその瞬間に、穴から勢いよく何かが飛び出した。
「ハァ…ハァ……」
そこにいたのは息切れしながら、これまでには見せなかった焦った顔を見せる魔物だった。
ーー…ッおのれ!!
「なっ…!生きてる!?」
ーーあれしきで俺をやれると思うなよ小娘ェ!!今度こそ完全に燃え尽くしてやる!!
またもや魔物は両手に火を溜め始めた。
「ぐ……っ!あっ…」
魔法少女は何とか自身の力を振り絞って立ち上がろうとするが、もう体力は限界に近しかった。
(…流石に…無茶しすぎたかも……)
あのチャージしている火の量は今ある物体量だけでは防ぎきれないと魔法少女は踏んだ。
「だ、大丈夫ですか…!?」
志村は満身創痍の少女の体を急かしながらも、優しく起こしあげる。
「早く!逃げないと!」
「ハァ…分かってる…わよ…!」
そうは言うが魔法少女の体は全く動かない。
(や、やばい!どうする!?)
逃げ場も無い。
逃げれたとしても多くの犠牲は免れない。
ーー灰も残らないくらいの火力で消し飛ばす!覚悟しろ!!
魔物は完全に激昂していて、何を言ってももう聞きはしないだろう。
(火の玉がもうあんなに大きく…!多分そろそろ飛んでくる…!)
「…………ねぇ…あんた、ちょっと…」
志村が火の脅威に怯えていた時に、魔法少女から突如として呼びかけられる。
「…な、なんですか…!?」
志村はこんなにも危機的状況の中に話しかけてきたので即座に魔法少女の方に顔を向けて、反応する。
「わ、私の武器になってくれる…?」
「……はい?」
志村はこのとき困惑することしかできなかった。
「お願い…!今ここにいる人達を助けれる可能性があるのはあんただけなの!」
魔法少女は時間がないためか強引に話を進める。
「ちょ、ちょっと待て!!俺があの地面みたいに変形するってことか!?」
衝撃の発言に思わず、敬語を忘れて話す。
「……まぁ、そう…なるわね…」
言いづらそうに魔法少女はそう言う。
「無茶難題なのは分かってる…!でもこればかりはあなたしかいないの…!!」
魔法少女は志村に対して懇願する。
「…………変形しても一応元に戻るんですよね?」
懇願する彼女の姿を見て衝撃発言を上手く飲み込み、言葉使いを敬語に戻す。
「……え、えぇ。」
魔法少女はそう肯定すると
ーー…コソコソとうざったい!!死ね!
その瞬間に巨大な火の玉がこちらに向かってくる。
「…っ!やれ!!」
「……!!」
志村は少女に向けてすぐ触れるように手を彼女の前に突き出す。
それにすぐに応じて魔法少女は志村に手を伸ばして触れる。
そして
ボォォォッッ!!
次の瞬間に二人は炎の中に飲み込まれてしまう。
完全に近くのタイルはドロドロに溶け、一瞬で気化してしまった。
ーーふん!生意気なことしてくれおって!!とっとと焼け死ね!
捨て台詞を吐くように魔物は火の玉に目掛けて言う。
激しく火が燃え盛り、二人は跡形もなく消し炭になった。
ーーへっ!ざまぁね……!?
と思いきや、魔物は異変に気づく。
飛ばした火が急激に小さくなったのだ。
ーー…何が…!?
そして火は完全に小さくなり消滅した。
消えた火の先に見えたのは
「…ハァ…ハァ…!?」
刀を持った魔法少女だった。
その刀の特徴としては刀身が長く、刀の鍔はキノコの形をしている。
周りの炎によって銀色の刀身がオレンジ色に光り輝く。
ーー…っ?何をした!?
「………?」
彼女自身もよく分かっていないのか、無言のままだった。
ーーくっ…!
魔物はヤケになってもう一度、同じ火力の火の玉を魔法少女の方に放つ。
「………うっ!」
魔法少女は咄嗟に自身の前に刀を構えて、火から身を防ぐようにする。
ーー……!?
それだけで防げるはずが無いと魔物は思ったが、刀に火の玉が当たった瞬間に火の玉が消える。
ーーまさか……
「…火を吸収した……!?」
少女も刀の効能に驚いたようで、まじまじと見ている。
【な、なんか…す、すんごいことなった!】
刀に変形した志村は開かない口で驚嘆する。
「…うぉ!喋った!」
少女は志村の驚嘆した声が聞こえたようで、無機質な鋼のボディーに反応する。
「えぇ?どうやって喋ってるのそれぇ?」
少女は興味津々に志村に質問する。
【さ、さぁ……あれ?というか体大丈夫なんです?】
「え…?あれ?た、確かに……」
さっきまでは痛みと一酸化炭素中毒で動くことさえも容易では無かったのに、いつの間にか普通に喋れるくらいの体力がある。
ーー…っ!余裕ぶるんじゃない!!
魔物は懲りずに二発ほど火の玉を放つが
「うおっと…!」
少女は素早く火傷した手で剣を握って捌く。
その火は剣に触れた瞬間に消える。
ーー……!!
魔物はあんぐりしたアホ面を少女と一本の刀に対して晒す。
【こ、怖ぇぇ!!い、生きてるよな…!?】
刀の彼は火を真正面から受けているのに、痛みも何も感じていない様子だ。
「…す、すごい…!これならまだ可能性はある…!!」
志村の存在により失われていた目の光を少女は取り戻し、威勢の良い目つきで魔物に剣を向ける。
ーーな、何なんだ!?その剣は一体…!?
魔物は得体のしれない恐怖に怯えるが
「んー?あぁ…えーと……あんた名前何て言うの?」
そんな魔物は無視して、刀身に向けて話しかける。
【え?
「…名刀、志村剣よ!」
ーー………?
魔物が今まで見せたことのない困惑した顔を見せる。
【…はい?何言ってんです?】
さすがの志村もこれには魔物に同意せざるを得ない。
「攻撃を吸収して相手を困惑させる即席アイテム……志村剣よ!」
本人はこの名前が満足気だが、そのネーミングセンスをしておいて『いい名前でしょ?』的なドヤ顔が出来るのは才能である。
【…意外にアホなのかこの人……ボソ】
少女ビシッと刀にの口上を言い切ったが、納得などいくわけもなかった。
これには魔物も
ーーそ、そんなバカなことが…
訳の分からない奴らに翻弄されてしまい、魔物は頭を抱える。
「……ってことで隙あり!!」
魔物の意識が少女から逸れた瞬間を逃さずに魔法少女は魔物に詰め寄る。
ーーしまっ…ぐぁぁッ!!
魔物はそれに反応できずに、胸部に一太刀喰らってしまう。
ーーな、なんて卑怯な奴だ…!
「あら?最近の魔法少女は性格が悪いのをご存知ない?」
先程の死にかけであった彼女とは思えないほど調子をこいている。
ーー…イキリやがってクソガキ!
怒りのスイッチが入り、魔物は近接戦に持ち込む。
自身の自慢の火を打っても埒が明かないと踏んだのだろう。
ーーそのふざけた剣、奪い取ってやる!
勢いよく刀身目がけて奪おうと、両手を伸ばす。
…が少女は上手く体を回して避け
「おっとと…危……
ない!!」
避けた勢いのまま魔物の体を斬りつける。
ーーガぁぁッ…!!
かなりの至近距離で食らわせたため、深い傷が胴体に深く入る。
ーーうぅっ!!
だが魔物もこのままやられるままではなく、すぐに距離を取りながら火を放つ。
「…危なっ!」
これには少し余裕をこいていた少女の顔も一瞬だけ崩れた。
だが、何とか刀を前に出して完全に無効化する。
ーー…? 「……?」
そしてつい先程至近距離で対面した時、二人はこの刀のとある秘密に気づく。
「…ねぇ、あんた……」
【……どしたんですか?】
「目貫の所が光ってるんだけど……」
【目貫?】
「私が今掴んでる所の目みたいになってる模様のこと。なんか光ってるわよ。」
【んえ?そうなんすか?】
実際に14個ある目貫の内、6個が黄色に光っている。
普通本人なら気づきそうなものだが…
「…気づかないものなの?」
【いや…このきつい体勢で見れるわけ無いだろ。】
志村は軽くツッコミを入れる。
「え?それに体勢とかあるの?」
【えっ…?さっきからずっと腰反った状態キープしてますけど?】
「……ぶっ。」
少し間をおいて、彼女は小さく吹き出してしまう。
【…え?なんで笑うんですか…?】
「ん?あぁいや、ごめん……フフフフフ…」
【こ、こっち真剣にやってるのに!?】
「い、いや…だって…そんな姿を想像したら面白くって……フハハハ!」
ついには高笑いをしてしまう始末だ。
【………そんな笑うとこかよ…】
コントのような様子を魔物に見せつけのように見せる。
ーー…ッこいつら…!形成が良くなったからって調子に乗りやがって!!
明らかに舐め腐った態度に魔物は完全に切れてしまい、とてつもない速さの火の玉の連弾を飛ばす。
【ほ、ほら!!そんな態度あんた取ってるから!!】
「…ちょ、ちょっと集中力が切れただけよ!!落ち着きなさい!」
ボボボボォッ
少女の身の丈程の火の玉が4発ほど正面から少女に襲いかかってくる。
「……ふっ!!」
だが少女は見事な剣捌きで、全てを消し去る。
【おお、すげぇ…えぇぇぇぇ!?】
思わず志村が感心していると、その消えた火の後ろから魔物が飛び出してきて、ない口で叫ぶ。火は囮だったのだ。
そのまま魔物は無言で刀を奪い取ろうと試みる。
「やば…!!」
後ろにバックして避けようと試みるが、
ーー甘い!!
それを読んで魔物はもう一歩を力強く踏み込み、少女との距離を一気に詰める。
「くっ…!」
少女は掴みかかってくるのを対策するように掴みかかってくる手に刃を向けて、斬りつけようとする。
ーー…かかったな…!!
そして瞬間的に掴むのを止め、刀の側面に向けて拳を振るう。
だが
トスッ
剣と拳が交わり、手応えの無く柔らかい音が響く。
どうやら物理的な普通の攻撃すらもこの刀は吸収してしまうようだ。
そして
「………光った…!」
目貫の所がまた一つ光が灯る。
二人はトリックを何となく理解した。
そして魔物は
ーーやはり、衝撃も吸収するか……ならば!
即座に連撃を刀身の側面に繰り出す。
ついに14個の目貫の部分に全て光が灯る。
ーー…喰らえっ!
ドガガッ
「うわぁっ…!」
14個の目貫が全て光ったのを確認した魔物は強い拳による衝撃を加え、後ろに吹っ飛ぶ。
「うぐぅ!」
【ま、魔法少女!】
少女は背中から地面に向けて倒れる。
ーーはははぁっ!どうやら吸収にも制限があるようだなぁ!?
嬉々として魔物は、少女に仕返しするかのように調子に乗って煽り散らかす。
ーーさぁ、どうする!?これでお前に頼れる味方はいないぞ!
「……うっ…ぐ……やってくれるじゃないの。」
ーー全て焼き尽くして絶望させてやる!
次に魔物は彼の周りの火を操り、全身に纏う。
ーーはっ!
そしてそのまま空中に浮遊する。
ーー貴様が近づいた瞬間、体がドロドロに崩れ落ちるぞ!
【ま、まずい……!!これじゃああいつを斬れない…!!】
志村はこの状況に今度こそ終わったと思い、絶望感が彼を襲うが
「……完全に刀からの攻撃をメタってきたわね……」
と少女はまだ冷静に相手の行動を分析するように呟く。
【な、なんでそんな冷静なんだよ!これで勝つ道筋なんて…!!】
この状況には流石に詰みと言っても過言ではないのに、少女は絶望した表情にならない。
志村はそんな彼女が不思議でしかなかった。
「……さっき救えなかった人達の無念はどうなるのかって…アンタ言ったわよね?」
急に魔法少女は志村に語りかける。
この場面で急に何を言い始めるのかと思い、
【…それがどうしたって言うんです!?】
強い当たりで少女に反応をする。
「…残念だけど、それに関してはどうしようもないの。ご都合主義でなんとかなるわけじゃないから……」
彼女はゆっくりと体を起こしながら話す。
「……だからこそ……救われる側も救う側も!助かり切るまで伸ばした手を絶対に引っ込めない!そうすれば…どんなに厳しい状況だとしても、できるだけ多くが生きる確率の確かな目印になるから!」
【………!!】
そうして魔法少女は刀を支えにしながら立ち上がり、志村の刀身は周りの火によって更にオレンジ色に光る。
「さぁ!行くわよ!志村剣!」
刀の剣先を魔物に向けて、少女は立ち向かう。
ドクン!
この時、刀の状態であるにも関わらず志村は揺れ動く心臓の鼓動を感じた。
そして……
【M《マッシュルーム》B《バイト》容量オーバー!!】
ビクッ
思わず魔法少女は志村が訳のわからない言葉を発し始めたことに驚く。
【鍵の
そして剣先から黄色く光る鍵が生まれ、床にポロッと落ちる。
「…な、何?鍵?」
少女はそれをすぐに拾う。
すると
ガコン!
目貫の所に鍵穴が空いた。
「え…?急に何…?結構良いこと言ったと思ったのに……」
少女は折角自身の中で考えて発言した言葉だったのに完全に無視されたことがショックだった。
【い、いやち、違う!なんか勝手に口が動いたんです!ほ、ホントですって!】
志村は必死に弁明して、誤解を解こうとする。
「…まぁ、分かったわ。取り敢えず入れて…?」
そう言いながら、鍵穴に光る鍵を入れて
「こう?」
右に回すと
ガチャッ!!
何かが開く音がした。
そして…
ーー……ぐおッ!?
「あ、なんか当たった!?」【な、なんか出た!】
何かが魔物の顔に直撃したようだった。
まるで何かに殴られたかのような……
ぽうっ
「あ、消えた。」
そして鍵を入れた場所は鍵穴がなくなり、光らなくなった。
「えーと…ここも入る?」
13個目の目貫の鍵穴にまた鍵をセットしてみる。
「入った…!」
また右に回すと
ーーグあっ!
またもや魔物は見えない打撃を顔面に受ける。
ーーど、どこから……
「もう2つ!」
そして流れを掴んだ少女は一気に鍵穴2つを開け、開けた所は光が消えていく。
ーーごぁぁッ!
魔物は連撃を鼻に喰らい、鼻の骨が曲がってしまい鼻血が大量に垂れる。
「5個目!」
そして10個目の鍵穴に鍵を挿したとき
ボォッ!
「わぁっ!」
見えない打撃とは打って変わり、剣先から炎が発射されたのがはっきりと見える。
ーー……あそこからか…!!
魔物は直撃しながら、目に見えなかった攻撃の正体を理解した。
どうやら鍵を開けると、吸収した分の攻撃を排出出来るというトリックらしい。
ーー(…なるほど…!俺の拳の打撃が飛んできたn…!)
と考えている最中に火の玉が飛んできて、直撃する。
ーーくぅ…こんなもの、俺が効くかぁ!!
流石は炎を体に纏えるだけはあり、全然効いていない様子だった。
即座にまた火を魔物は放つが
「……!!」
志村剣の攻撃を受ける容量がまた空いたため、また火を吸収する。
ーー…クソがぁッ!
悔し紛れに魔物は空中から物凄い速さで火の玉を連発させる。
「うぐっ!」
鍵を開けた部分にまたすぐに光り、14個全てに光りが灯る。
そしてまた鍵穴が空く。
「……まずい、受けきれない…!!」
怒涛のラッシュに剣だけでは対応できないと判断し、横にすぐ避ける。
「……こーなったら…!」
何かを思いついたのか、少女は3番目の目貫の所に鍵を挿して開ける。
すると
ボォォォォォッ!!
先程焼き尽くそうとしてきた火力の火を魔物に向ける。
ーーぐっ…!
魔物の出す連弾は巨大な炎によってかき消されてしまう。
ーー小癪な真似を……!
魔物の視界は火で覆われてしまう。
そして再度下を向くが
ーー……!?
そこに少女の姿は無かった。
ーーどこに……
ぞくッ
次の瞬間に魔物は後ろに怖い気配を感じてそちらの方に向く。
ーー……後ろか…!!
そこには魔法少女が同じ高さにいた。
床を形状変化させてこの高さまで伸ばしたのだ。
ーー(だがこの火の温度では近づいて斬ることなんて……)
「喰らえぇ!即興必殺!」
その掛け声とともに、少女はまさかの行動にでる。
「おぉりゃぁ!」
なんと刀を魔物に向けて投げる。
ーーぐあぁぁぁぁぁあっ!!!
魔物に纏わりついていた火を吸収し、そのまま左胸部を串刺しにする。
そして魔物は悲鳴を上げながら仰向けに落下していく。
「…まだまだ…!」
少女は足場を勢いよく蹴り、彼の落下する体に追いつく。
そして胸に突き刺さった剣を掴み、魔物の仰向けになった体の上に乗る。
ーーがっ…あっ……
魔物は苦しみ、喋ることさえ出来なかった。
「……
技名を叫ぶと同時にそのまま床に串刺しにされたまま魔物は床に叩きつけられ、巨体と位置エネルギーによって地面にめりこむ。
ーーゴガァァァッッ!!
悲痛な叫び声とともに、魔物は完全に意識を失い倒れた。
原理は分からないが、ゆっくりと魔物の体が消失していく。
「ハァッ…ハァッ!…ふー…」
少女は息切れしながらも、勝利を掴み取ったことにより思わず志村剣を高く掲げる。
ーーーーーーーーーーー
【い、いやったぁ!か、勝てた!】
志村は動かなくなった魔物を見て、飛び跳ねたい気持ちでいっぱいだった。
「コラ!調子に乗らない!まだ人がいっぱいいるんだから!」
【は、はい…!すいません!!】
志村は目前の結果に満足していたが、まだ目的は完遂していなかったことを再確認する。
「……でも今回ばかりはあなたを責めれないわね、ありがとう。」
【………!】
感謝されるのに慣れていない志村は無い頬を赤くする。
しかも女の子だから人間態だったらもっと赤い頬が目立っているだろう
【……い、いやぁ…でも俺もやらかしちゃったからな……】
自己肯定感の低い志村は、自分を卑下するような言葉を吐く。
「まぁ、確かに無謀に飛び出してきたアンタは褒められたもんじゃないけど……」
「でも……あなたが刀になろうと勇気出したのは……」
少女は少し間をおいて
「かっこよかったぜ…!志村 優斗!」
そうエールを送るように、ウィンクと言葉を刀身に向けて投げかける。
【……!】
ウゥゥゥー!!
とフォローされていた矢先、外から消防車や救急車のサイレンが聞こえる。
「おっ、来たね。じゃ、ラストの締め作業と行くかしらね。」
そう言うと彼女は刀身に触れて
「リバース!」
志村を元の人間の体へと戻す。
「おっ、おぉ!戻った。」
「じゃあ私は救助の手伝いしに行くから。」
と、ボロボロの体でそう言うと
「えっ、そんな…一人じゃ無理じゃ……」
「いいや、一応こっちも援助要請してるから…大丈夫だと思う。」
「え?そうなんですか!?」
実は魔物にふっとばされて、シェルターに穴が空いた時に彼女は壊れた瓦礫を通信機へと変えて、他の魔法少女にも応援要請をしていたのだ。
「5分くらい前だから多分そろそろ……」
「ごめん!りなちゃん!遅くなっちゃった!」
すると2階から、可愛らしいフリルと青いシルクハットが特徴の魔法少女が華麗に着地する。
「ま、魔法少女がもう一人…!?」
志村はこの存在たちがちゃんと複数存在していることに驚いている。
見た目は白髪の魔法少女とほぼ一緒で、艶のあるきれいな長い青髪がキレイだ。
「サンキュー…みかちゃん…」
「ってえぇ!どうしたの…その腕…!?」
そして出会って一番に彼女の腕を見て絶句する。
「いやぁ…それが痛くないんだよねぇ…なんでか知らないけど…」
「えぇ……」
とただひたすらに彼女も困惑している。
「とりあえず消火頼んだよ?」
「…まぁ、大丈夫なら良いんだけどさ。」
そんな雑談をしながら彼女は手から水を放出する。
(おぉ、水の使い手!)
「んじゃ!取り敢えずやっていきますか。」
両手を上に上げて、大きな水の塊を作りあげる。
そして
「よぉし、全方位スプリンクラー!」
するとその水は全方位に散らばり、当たりを囲っていた火が一瞬で消化される。
「おー、すっごいねぇ。りんちゃん。」
自動ドアのところの火も消火し、逃げるための道を作り出す。
わずか数秒でそれをこなしてみせた。
「ふー…後は3階も消火したら、消防士さん達に任せよう。」
「そだねぇ。後は建物内の人間の保護に専念でもしましょうかね。」
と二人は軽い気持ちで優先順位を声に出して組み立てていく。
「す、すごいなこの人たち……」
パリーン!!
そんな感心をしている時、自動ドアの先からバールを持った消防士達が自動ドアを破壊して突入してくる。
「おっ、キタキタ。さっ、アンタももう行きなさい。親が心配してるわよ。」
そう言って俺の背中を優しく強く押す。
少女の方を志村は振り返ると
「……じゃあね。」
とヒラヒラと少女は手を振る。
それに対して俺は
「…あ、ありがとう…ございました。」
相手の目をチラッと見るだけ見て、そそくさと出口へと向かっていった。
ーーーーーーーーーーー1週間後
涼しい秋の風が窓から吹き抜け、マンションの一室を循環する。
「あー…暇だな。」
志村は涼しい風の吹く、ベッドの上でスマホを見ていた。
するとあるネットニュースを見つける。
「………!」
そこには巨大ショッピングモール大炎上が見出しのネットニュースだった。
死者はなんとあれほどの火事で0。奇跡としか言いようがない。
あの事件の後は志村の親は今までにないくらいギューッと抱きしめ、おぎーでさえもいつもより優しく寄り添っていた。
本当にあの1日は色々な意味で奇跡が起こっていたと志村は振り返る。
「……ホント…奇跡だよなぁ……」
そう言いながら志村はスマホを閉じる。
「………はぁ。」
未だに志村は彼女のことを忘れられずにいた。
ここ一週間ずっと彼女のことしか考えていない。
ーーかっこよかったぜ……志村 優斗!
「……」
俺は頭に敷いていた枕を抱きしめた。
彼女の優しさ、美しさを思い出すと心の奥底がじわじわと温まってくる。
「……はー…」
そして心の温まりは体への火照りへと変わっていく。
「……よし。」
志村はベットから立ち上がりそして……
「志村 優斗君だよね!?」
「うわぁぁぁっ!!?」
思わず俺は叫ぶ。
今からやろうと思っていた矢先、突如として窓の下からほうきに乗った黒いとんがり帽子で黒い服で覆うというThe・魔女がタイミング悪く窓越しに現れる。
「え?なになになに!?」
突然のことに俺は叫んで驚かずにはいられなかった。
「あなたにちょっとこの子と来てほしいところがあるの!」
と親指でほうきの後ろを指す。
「え?この子って……あぁ!あの時の!」
黒い魔女に隠れて見えなかったが、後ろに白髪のあの人がほうきの上でだらっと伸びている。
もう少しでもバランスを崩したら落ちそうだ。
「やっ、やほー志村君。」
「ど、どうしたんですか!?」
ただ事じゃないのはなんとなく分かったため志村は聞き返すが
「…まぁここじゃ言うの長くなるから。後ろに乗ってよ」
「えぇ…」
と困惑する。
そしてここから志村は今あるこの常識的な世界から、新たな常識しか生まれない世界を知ることなり、翻弄されるとは思いもよらなかった。
Mash V Magica @manta_ei
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