~口だけ貴族~馬鹿が頭脳系悪役貴族に転生したので、口振りだけ真似たら勘違いの連鎖を引き起こしちゃった

つかとばゐ

第1話 まぁこのキャラは好きだけどさあ!

アズール・ウルファン……俺が愛してきた育成ゲーム【RingWorld】で大好きな悪役貴族だった。彼は、確かに残忍性もあるが、そこには優しさもあり、悪役という点でも最高、そして人間性という点で見ても最高な人物だった。


そんな彼に俺は転生したのだが───


「いやゲームの難易度高すぎるだろぉ?!」


このゲーム……【RingWorld】は名前の通り、指輪が主な攻略の鍵となる。それはそれは、無ければ死と同義されるくらいにね。───例えば、攻撃力を上げるものだったり生存力を上げるものだったりなど、指輪は多種多様である。


「どうしたものか……」


しかし、このキャラ───指輪を付けれないのだ。何故かって?


「義手キャラだもんなぁ」


そう。───手がない。

指輪を付けるという行為自体はできるものの、効果を得ることができない。指輪はただのゴミと化す。


「だから頭脳を使って戦っていたのか」


よくよく考えれば、純粋な戦闘シーンなんて無かったように思う。……てか、なんで義手キャラなことを明かさなかったんだよ、製作者さんたちよぉ。


「人気なキャラだったのになぁ……スピンオフでも出したら良かったのに」


つくづく転生してから俺はそう思う。


「まだ転生して間もないからな……まだアズールについて判明することがあるかもしれない」


とりあえず、今やるべきことは……、ということだ。


「育成ゲームなのに育成できねぇんだよなあああ!!!」


そう、そうなのである。

このゲームはまず育成したいキャラが居たのなら、そのキャラと戦わなければいけない。


───しかし、俺の場合はどうだろうか?指輪を付けないと死と同義される世界であるのにも関わらず付けられなく、なんならそれを補っていた彼の頭脳も今や無い。つまり、戦ったら死ぬ。


「はぁ……このまま裕福に過ごしていくだけなのかな?」


貴族というからには確かに裕福だからこのまま過ごしていってもいいのだが……やっぱり、転生したからには転生前みたいにつまらない人生は歩みたくないもんだな。


「なんとか方法は……」


そう思い続けても浮かばない。

仕方ないよ、俺バカだもん。


「外でも行くか」


魔物が出ない程度の場所まで観光気分で行ってみるか。正直、この憂鬱な気持ちを晴らしたい。


「っと……一応な」


俺、隠していることがあるのだが、それは【遺書】を書いているということだ。まぁ、本来の彼なら危険を冒すようなことはしない人物だから遺書なんて書かないだろうが……なんせ俺は育成をしたいわけだ。もしかしたら誤って死ぬかもしれない。


俺はそっと机に遺書を置いておく。


……まぁ、家にはメイドさんたちしか居ないし、俺が二日くらい帰ってこなければ自室に入ってきても良いと言いつけているから見られることはないだろう。


「それじゃあ、行ってきます」


誰も応答しない部屋で、俺の声が響くだけだった。





「君、大丈夫か?」


俺は散歩していく途中で、道路の脇にみすぼらしい姿の少女を発見する。───どことなく見た事がある顔な気がした。


「ごめんなさいっ……な、なぐらないでくださいっ……です」


ここらでホームレスやら孤児など居るのは然程珍しくはないが、というのは珍しい。ふつう、こんな所に少女が居たら悪い人たちに誘拐されるだろうから。


「大丈夫……君、何でここに?」


「おかあさんにすてられて……それで……ひっ、ぐ……そ、それで……それでぇ……うぁ」


泣き崩れてしまった。

これは随分と深い訳があるな。


「育成は確か契約だろ……?だから保護なら


契約を交わすために戦う。ならば契約しなければいい。ただ、それなら育成していることにはならないから強くなることも無ければ好感度も上がらない。


そういう仕様だ。


「なぁ、君」


しかし、だからと言って見放すことはできない。俺は……そこまでゲーム脳じゃない。


「うぁ……ひっ、ぐっ、……な、なんで……すか?」


「───私の名はアズール・ウルファン……君を保護する男の名だ。覚えとくが良い」


彼らしく、真剣な眼差しと口調でそう言い放ったのだった。

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