第拾伍話『M兄弟』─いつだってロイヤリティだ
A「ビックテックといい、創業は泥沼。煮湯を飲まされた人は多い」
B「それが、パロアルト住人、カリフォルニアの偉人たちの競争だ。
ちなみに東側はそんなに苦労していない。相対的だけど。」
A「さぁでは今回は創業なのに創業じゃない人たちの話を」
B「そんなのアメリカには一組しかないわ。残酷なまでに奪われた。しかしその恩恵で今日
世界第二位のフランチャイズを誇るファストフード、マクドナルドね。」
A「モーリスとリチャード兄弟は徹底して計算された「スピーディー・サービス・システム」を練った。そしてスタートは良かったしそのまま行けばいい人生だっただろう ミキサーを売る営業マンが現れるまでは。」
B「それがレイ・クロック。別に否定するつもりもないけど典型的なビジネスマン精神の体現者。映画界隈でいえばジョエル・シルバーというべきかしら。
『The Matrix』『Die Hard』『Predator』一世を風靡する作品の常に裏側にいた。彼はあくまでもプロデューサー。しかしいないと成立しない。ま、これはアメリカにおける権利の所在故、というのはあるのだが、いなければ成立しないという意味では同義よ。」
A「そう。自分の名前じゃない看板を使って、まるで自分の作品みたいに展開していった」
B「つまり、アイディアの代筆者。けれど記憶の原作者になってしまう。そしてそれは同時に監督業や脚本業が軽視されているということ。日本で唯一このジレンマに抗えたのは東小金井のスタジオ。あそこは監督もプロデューサーも両方強い。というか濃すぎる。」
A「話を戻すけど、そう。レイ・クロック登場でどんどんと傾斜していった。最初の関わり合いのときはまだバランスが取れていた。しかし。横暴になり彼ら兄弟がそういう場面においては素人がゆえに、徹底的に陥れ最終的には乗っ取った。」
B「クロックは兄弟のオペレーションに感銘した。これは事実。「これはアメリカの未来だ」と確信したはず。だからこそ、その行動にでた。ここまでは逆説で完全に成立する。問題が発露するのはここらからだ。彼は「共同でアメリカ全土に広げたい」と本気で思っていたが、兄弟は「拡大には限界がある」という慎重派。そしてそれはあくまでも「個人店」として運営していきたい。というのがあったからだ。しかしクロックは「マクドナルド・システム社」を設立。ここで自分のフランチャイズネットワークを実質的に掌握。これが最初の亀裂。その状態で、兄弟がこだわりを見せ始める。となるとクロックからすれば会社なのに「外部」から声を入れられるような感覚になったのでしょうね。その結果─兄弟は会社の「商号=McDonald’s」という名前に強い愛着を持っていた、同時にクロックは「ブランド力の中核はこの名前にある」と理解しており、これを全力で奪いに行った。サンバーナーディーノの本店をマクドナルドの名で残すという約束を、クロックは破った。当然兄弟は同種の店を「ビックM」で開設。
あ、ちなみに脱線するけどバーガーキングの創業はマック兄弟を知ってた。閑話休題。
しかし、現在では経済経営の見本となっているように新興勢力が出てきたら、既存のブランドの横に配置して潰すという戦法を打ってくる。ここら辺は意地悪でもあるが、ビジネスマンの性とも言えるわね。クロックにとってGolden Arches=黄金のアーチ=Mマークは自分の帝国の象徴それを「赤の他人に持たれている」という事実そのものに耐えられなかったのよ。
その意味では、彼の本質はビジネスマンというより、征服者に近い。」
A「もうね、あまりも清々しいよね。マクドナルド兄弟との出会い、フランチャイズの拡大
マクドナルド社の買収、名前の奪取と1号店の乗っ取り、ロイヤルティ1%の口約束と未払い疑惑、これ全部十年かかって無い。要は、最も大きな勝者は、優れたアイデアを思いついた者ではなく、それを奪って拡張できる者であるというわけだ──レイ・クロックが証明したのは、それが二〇世紀型アメリカン・キャピタリズムの勝者の姿だった、ということだ。
たしかにレイ・クロックは名前を奪った。だが同時に、名を育てた存在でもある。それは世界中の誰もが否定することができないのも事実だ。」
B「マクドナルド、マック、マック、マック、さぁMには不思議な魔法でもあるのかしら。
クロックはMアーチと名前にこだわった。そしてこれはジョブズのMacintosh= MACという略史にも通ずる。そしておそらく略称が象徴であり響きであるという意味で「マック」「Mac」は二大巨頭でしょうね。」
A「数字において3が強いのと同じだよ。三銃士、 三国志、三位一体、三種の神器、女三人寄れば姦しい、毛利元就の有名な三本の矢の例え、ゾロアスター教の三本柱、三幕構成、RGB、三連祭壇画、ギリシャ建築の柱式三分類、弁論術の三要素等あらゆる学問、構造、俗語、番組に使われ続けてきた。」
B「私に向かって放ってはいけない「例」が入ってなかった?嫌味かしら笑」
まぁいいわじゃあお返しよ。
アルファベットの十三番目に位置する「M」は、単なる音素ではない。
視覚的に見れば、三本の立ち上がりと二つの谷を持つこの文字は、まるで三つの山を折りたたんだ構造体なのよ。そこに、数としての「三」が秘める意味これは、構造、均衡、循環が内包されているように見えてならないのよね。「1」は点であり、「2」は線を生む。しかし「3」は初めて面をつくる。構造とは三つの要素が交差するときに初めて立ち現れる。
父と母、そして子。テーゼとアンチテーゼ、そしてジンテーゼ。過去、現在、未来。三位一体、トライアド、フィードバック。あらゆる体系的思考の根に、この「三」が潜む。
その象徴性を担う文字版が「M」だとおもうの。MはMother(母)の頭文字であり、生命の起源であり、循環の入口。ケルト神話における三相一体の女神乙女、母、老婆は女性性と時間、変容の構造をすべて三重に担っていのは当然ご存知よね?
そしてそれらはすべて「M」で始まる。Maiden, Mother, Matron.
音楽においても、和声を成立させるのは「三和音」であることくらは私でも知ってる。
メジャーもマイナーも「M」で始まり、三度音程によって性格を分けられる。
まさにMは、音の中に構造をもたらす入口だわ。私が好きな「情報」というカテゴライズに
おいても、記憶(Memory)、機械(Machine)、思考(Mind)これらは全て、現代における「M」は、サイバネティクス的語彙の起点であることに疑う余地はない。
もし文字がただの記号ではなく、「何かを予兆する身体」であるとすれば、Mは明確に
「構造の始まり」、すなわち3という数の形象的な化身である。
Mとは、構造がはじまる文字。
Mとは、意味が分岐する節点。
Mとは、3という数がアルファベットに現れたときの、最初のシンボル。
この世界に、秩序を与える最初の数は3であり、その姿を最初に帯びた文字こそ、「M」。」
A「そのうち、Mだから強いとか言って、魔法少女の名前を全部Mにする作品とか出てきそうだな」
B「既に半分くらい、そうなってるんじゃない?クリーミー〇〇、なんちゃら☆なんちゃらとか笑。いずれにしても、ニチアサ以外なのは確か。 というか音楽ならモーツァルトがそう。
コミックならMarvelもMね。私はDC派だけど。M=マイクロフトではホームズの兄貴だし、法則性はないけどこれは決まりだね。私のなかでは定説とするわ。」
A「日本の電子歌姫もMだね。「初音ミク」通称 MikuでありM。
日本のバーチャルポップカルチャーの象徴であり、
電子=サイバネティック×歌姫=人文的アウラという内在性に加えて、Mにはメカニズム
マシン・メモリー・ マザー・ミューズ」
B「そう、メカでもあってメモリーでもあって、しかもミューズ。
ああもう、Mってずるいのよ。人類の甘え全部詰め込めちゃうんだから。
某超天才人外化物の苗字もMだったわね。あ、作者もMか。
あれには甘えなんてないけど笑」
A「結局、飛べない蝶は夢を見る ということなんだろうか?」
B「マクドナルド兄弟も『およげ!たいやきくん』も恩恵は受けた。
しかし最大瞬間風速に乗れなかった。それがスティグマとなり、夢を見るんだろう。
本来あり得た現在を。その意味ではミクのボイスを担当された、藤田咲さんもある意味で似たような境遇なのかもね。たぶん、それが創業者じゃない創業者の運命。」
A「だから、いつだってロイヤリティなんだよね。買い切りは危険という教訓。」
B「あ、そうそう、因みにさっきみたいな、「M」と「3」、における相互互換性における定理、こういうのを一種のシャーマニズムというのよ。象徴が意味を発する瞬間って、どうしても
論理以前の確信だから。
それこそ、8 = ∞ の曲線的連続性、A = 1 = △ のピラミッド的中心性、Z =Ωの終端性。
これら全ては認識の側における「構造」にしかならないのよ。
そしてその直感的操作を、知の領域に持ち込むとシャーマンになる。
だからドヤ顔で披露してはだめ。わかった?心の中で思うくらいが丁度いいのよ。」
A「誰に言ってんの?」
B「うん、読者」
Music by. Ed Sheeran.『You Need Me, I Don't Need You』&米津玄師『Loser』
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