君を愛した六年間

針猫(はりねこ)

第1話

僕は生まれた時からこんな形をしていた。

僕は神を憎んだ。

笑い合う人々の声は僕の胸に深く突き刺さった。

僕を誰か見つけて。


君が初めて会いにきた。

僕は心配されるのは嫌だった。

強がってみたけど、君の方が何倍も強かった。

君が夕日に向かって帰っていくのをみて、胸が苦しくなった。


毎日君は会いにきた。

僕に食べ物をくれた。

中には盗んできたものもあった。

僕のためにそんなことをしてくれるのが嬉しかった。


僕は大人になった。

食べ物も自分で探して食べられる。

でも、君と一緒に食べたいから、君が来るのを待っている。

今日は、摘んできた花を渡そうと思って。


君がきた。

君は男を連れてきた。

僕は、なんとなくこの男が怖かった。

でも、君が毎日僕のところに来てくれるなら、それでいい。


でも君はもう会えないんだと言った。

男は婚約者だった。

君はパンを食べ終わって僕を撫でた。

僕は花を渡せなかった。


夜になって僕が狩をしようとしていた。

そのとき、たくさんの大人が僕の周りを囲んだ。

裏切られたとは信じたくなかった。

でも花を渡そうとしたことは恥ずかしくなった。


僕は必死で吠えた。

一人の大人は見覚えがあった。

たしか婚約者の男だった。

僕はなぜか、その男の足に強く噛みついてしまった。


初めてこんなに強い力で噛みついた。

歯が肉に深く刺さって、抜けなかった。

僕がやつを見上げた時。

後ろから撃たれて死んだ。


もし僕が人間だったら、君と一緒に暮らせていたのかな。

もし僕が人間だったら、君は僕を愛してくれた?

もし僕が人間だったら…

君に花を渡したかったな。


愛してる。

さよなら。

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君を愛した六年間 針猫(はりねこ) @770harippa

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