第38話「ゴエモン」

 神の特別室を出ると、そこは居心地の良い和室だった。


 畳の匂い。ちゃぶ台とコタツ。

 そんな場所で、ジョージとトウマがリラックスした様子でくつろいでいた。


 ​コタツでミカンを頬張っていたジョージが片手を上げる。

​「よおヒロ、お疲れさん。神さまとの話は終わったのかよ?」

「うん、なんとか終わったよ」


 ​寝転がって、赤毛の子猫とゴロニャンたわむれていたトウマも顔を向けてくる。

「お疲れさま。どんな話だったんだい?」

​「うーん……まあ後で話すよ。それより……可愛い子猫ちゃんだな?」

「だろう? サラミちゃんっていうんだ。ここに住んでるんだって」

「ミャ〜オ」


 ​トウマの首元にスリスリしている子猫。

 確かにサラミみたいな赤茶色の毛色をしている。とてもふわふわで気持ちよさそうだ。



 ──​その時。「よう、邪魔するぜぃ」と、特別室の方から誰かが入ってきた。

 派手な着物に、逆立った黒髪──なんとなく歌舞伎かぶき役者のような雰囲気のおじさんだ。


​「オイラは、ゴエモンっていう神だ。ヒロ、さっきはお疲れさん。面白いもんを見させてもらったぜ」

「どうも……ありがとうございました」

「おう。そんで盗賊のジョージっていうのは……お前さんだな? レベルはもう70を超えてるのかい?」


 突然ゴエモンから話を振られたジョージ。

 驚いた様子で、慌ててコタツから出る。


​「はい……レベルは73です」

「そうかい。なに、面白いもんを見させてもらった礼がしたくてな。オイラの加護でお前さんを転職させてやるよ」


​(おおっ! 転職!)


 大会が始まるまでの一週間以内に探さなきゃと思ってたけど、まさか神さまの方から声をかけてくれるとは。


 ​ジョージは意外な展開に驚きながら、慣れない敬語で答えた。


​「そりゃあ、ありがてぇ……ことです。ちなみにアナタ様から加護を受けたら、俺はなんのジョブになるんですかね?」

「ヘヘンッ。そりゃあ、なってからのお楽しみよ」


「お楽しみ……って言っても、人生かかってるからなぁ……。できれば方向性だけでも教えてもらえませんかね?」

「なあに、そんな心配すんな。オイラが加護を与えるなんて滅多にねぇんだから、大船に乗ったつもりで祈ってみろ」


 ​豪快に笑い飛ばされる。

 ジョージは困ったようにこちらを見た。


​「ヒロ……これ、どうするべきだ?」

「うーん? 基本的に転職は初期ジョブの上位互換で、弱くなることはないからね……ジョージが決めて良いと思うよ」

「そうか……」


 ​ジョージは短いアゴヒゲを撫でながら少し考え込む。

 やがて、決心したようにゴエモンを見た。


​「俺は……ここでアンタと会えた縁を信じる。ゴエモンさん、俺に加護を与えてくれ」

「おう、それでこそ男だ! じゃあそこに座って目を瞑りな」


 ゴエモンの指示に、​ジョージが座って目を瞑る。

 ゴエモンは懐からキセルを取り出すと、ゆったりとした独特な舞いを踊りながら、何かを唱え始めた。すると──


 ​──カッ!


 ゴエモンが金色に輝き始める。

 その光がジョージへと吸い込まれていき、今度はジョージが、黄金色に輝いた──。




​「──終わったぜ……気分はどうだい?」

「なんていうか……すげぇ、世界が変わった気がします」

 ​ジョージが自分の手を見つめる。


​「そうかい。その力を使いこなせるかはお前さん次第だ。ジョージ……期待してるぜ?」

「はい……! ありがとうございました」


 ​二人に芽生えた、師弟関係(?)

 ……のところ悪いが、俺はどうしても気になることを尋ねた。


​「……で、ジョージ。なんのジョブに転職したの?」

「ああ、そうだな。すこぶるイキなジョブってことは感覚でわかるんだが……ステータス確認っと」


 ​ステータスを開いたジョージはその表示を見て、「えっ!?」と目を見開いてカチーンと固まった。


​(固まっちゃった……なんのジョブだったんだ? 俺も──スキル【鑑定】発動っと)




​────────────────


​名前:丈志ジョージ(24歳)

ジョブ:【大泥棒おおどろぼう

レベル:73 ↑16up

HP:4,850 / 4,850 ↑1,400up

MP:1,750 / 1,750 ↑500up


​【ステータス】

STR(筋力):420 ↑130up

VIT(耐久):350 ↑90up

AGI(敏捷):750 ↑240up

DEX(器用):880 ↑330up


​【スキル】

短剣術A、二刀流C、隠密S、索敵A、罠解除 A、開錠A、投擲B、鑑定B、調合、合成、錬成、影縫い

new! 略奪スナッチ、new! 忍術(初級)


​────────────────



「お、お、大泥棒ってなんだよ──ッ!?」

 ジョージの叫びが穏やかな和室いっぱいに響き渡った──。

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