第34話「太客」
虹色の光が収束し、砂煙が晴れていく。
アーサーが立っていた場所には、もう誰も立っていない。戦いの跡が残る荒野が広がっているだけだ。
勝った。
俺はチャット欄をチラリと確認する。
“すげええええええ!”
“これは本物だな”
"希望の灯最強!"
“白黒決まったな”
“アーサーが悪だったってこと?”
“ぽいね”
“世代交代だ!”
猛スピードで流れるチャット欄は試合前と打って変わり、
流れは、完全に変わった。
あとは
「ハルカ!」
「ハルカさんッ!」
俺はすかさずカメラを向けた。
ちょうど、アーサーに掛けられていた呪いが解ける瞬間だった。
ハルカの視界を覆っていた黒いモヤモヤが晴れ──その大きな瞳に、いつもの輝きが戻った。
「……見える。皆の顔が見えるわ……っ!」
「ハルカさん。本当によかったです……!」
抱き合って喜ぶハルカとエマ。
トウマもジョージも、心底ホッとしたように笑っている。
(うん……良い画だな)
俺は視聴者に見てもらえるよう、その光景をアップにする。
すると、万能カメラに気づいたハルカが、ふとこちらを見た。
「えーと……応援してくれた皆さん。ありがとうございました。
ペコリ、深々とお辞儀するハルカ。
チャット欄には「がんばれ」「応援してるよ」「我は信じてましたぞ!」といった温かい言葉が溢れかえる。
顔を上げたハルカは潤んだ瞳のまま、じっとこちらの方を見つめ続けている。
そして、花が咲くように温かく微笑んだ。
「ホントに……ありがとね?」
──ドキッ。
ハルカの言葉に、俺の心臓が跳ねた。
(今のって……カメラの向こうの視聴者に言ったんだよな……?)
カメラ越しに目が合っているみたいで、俺はしばらくドキドキしたままだった──。
◇
その後の展開は早かった。
この配信がきっかけとなって、即座に保安ギルドが介入。
結果は、真っ黒。
まず『魔道具詐欺罪』。
慈善事業と偽り、ハルカの善意につけこんで、半年間にわたって大量のポーションを騙し取っていた事実が裏付けられた。
次に『名誉毀損罪』。
自分たちの罪を隠すために、あろうことか公共の電波を使って、無実のハルカを「横領犯」「人殺し」に仕立て上げた件だ。
その他、余罪が出るわ出るわ。
アーサーを含めたメンバーは全員逮捕。
冒険者資格も当然はく奪された。
多くの視聴者を騙していたこともあって、批判の声は止むことがない。
彼らは二度と、表舞台に出てくることはないだろう。
こうしてハルカの無実は証明され、
それだけではない。
北海道1位パーティを、正当なバトルの末に打ち倒したのだ。
この配信の切り抜き動画は瞬く間に拡散され、日本中で再生されることとなった。
ランキングも一気にうなぎ登り。
◇
アーサーの件が一段落した俺は、癒しを求めて秘密基地に来ていた。
ひんやりと澄んだ空気。見上げればどこまでも広がる夜空と、白銀の月。
浮世離れした絶景の中で、俺は露天風呂に肩まで浸かり、完全にとろけていた。
「あー……最高だー……」
「ヒロさん。喜んでいただけたようで何よりです」
振り返ると、黒い燕尾服をピシッと着こなした銀髪のイケメン若執事──人間姿の真竜アルが立っていた。
手には桶とタオル。
完全に出来る執事の佇まいだ。
「アル、最高の露天風呂だよ!」
「ふふ、周りの岩にはリラックス作用のある『月光浴の霊石』を使っておりますからね。疲労回復効果は抜群です」
「あー、染みるわー……」
俺が脱力して湯船を楽しんでいると、アルが目をキラキラさせて身を乗り出してきた。
「ところでヒロさん。アーサーとのバトル、我は感動しましたよ!」
「……あれ、アルも見てくれてたんだ?」
「もちろん。ヒロさんの推しは、我の推しですから! いやー、感動して投げ銭しまくりましたよ」
(……ん?)
俺の脳裏に、とある記憶が蘇る。
「ああ……そういえばチャット欄に一人称が"我"の太客がいたかも? あれ、アルだったんだね」
「ええ、我はいつでも
確か、いつも高額の投げ銭を連発してくれていたはずだ。……まさかこんな身近に上客がいたとは。
「でもアル、そんなにお金使って大丈夫なの?」
「その心配には及びません。我は最近、人間のグルメを楽しむために冒険者としてお金を稼いでいるのです」
「えっ、そうなの? 全然知らなかった……」
「
まさか世界最強格の真竜が、青森県で冒険者活動をしていたとは。
青森のダンジョンバランスが崩壊していないか少し心配になるが……。
(まあ……グルメと投げ銭のために稼いでるなら、問題はないのか?)
アルは料理もどんどん上達しているし、もはやペットというよりは頼れる執事だ。
基本的にはアルの好きにさせてあげよう。
「……でもさ。ダンジョン攻略って、魔物を狩らないといけないよね? アルはそれ、同族として嫌じゃないの?」
「心配ありませんよ。ダンジョン内の魔物はしばらくしたら復活しますから。狩り放題です」
(お前がそれを言うのかい……)
「それよりヒロさん。お風呂上がりには絶品の和食もご用意しておりますよ」
「おお、さすが! それじゃあそろそろ上がろうかな」
俺はザバッと湯船から上がると、用意された服に袖を通す。
そして俺は絶品の和食を堪能しながら、アルと一緒に今後の【
――――――――――――――――――――――――――――
あとがき
第三部終わりです。
いつも作品を読んでいただきありがとうございます🥹
実は、こちらの作品カクヨムコン11というコンテストに参加中なのですが、面白い作品が多すぎてボコボコにされてます(´・ω・`)
コンテストは皆さまの★評価やフォローが得点になるので、ぜひ★評価や作品フォローで助けていただけると嬉しいです!!
◇今後の予定
本作はこれから全国編になって、さらに盛り上がっていく予定です!
2〜3月くらいに完結かな? と思います。
個人的に愛着ある作品なので、評価に関わらず完結は絶対させます!!
……が、やっぱり★をいただけると嬉しくてモチベーションも爆上がりなので、ぜひとも下のリンクから応援よろしくお願いしますm(_ _)m
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