第15話「Bランクを獲りにいく」

 新しいクエストを受注した日の夜。

 俺たちはリーダー燈真トウマのボロアパートに集合していた。


 知名度も上がってきたしそろそろ引っ越ししたいなー、なんて雑談もそこそこに。

 本題は次の探索の作戦会議である──。



 ​俺はポケットから万能カメラを取り出して宙に浮かべると、ホログラムを投影させた。

 ソファに深く沈んでいた丈志ジョージがトレードマークの短いヒゲを撫でながら、ニヤリと笑って俺を見る。


​「おう。それで次はどうするんだ? 我らがプロデューサーさんよ?」

「ああ……そろそろ本格的に、Bランク冒険者の資格を獲りにいこうと思う」


 ​俺の言葉に、リビングの空気がピリッと張り詰めた。トウマがゴクリと喉を鳴らす。


​「それは、つまり……」

​「……ああ。俺たちの手で未攻略ダンジョンを制覇する───」




◇◆◇


 この世界の冒険者ランクは、Cランクまでとそれ以上では、天と地ほどの差がある。


 Cランクまでは、クリア済ダンジョンでの魔力アバターを使った安全な探索。

 命の危険なく、さえ証明すれば誰でも上がることができる。はっきり言ってしまえば「冒険者ごっこ」だ。


 ​そこから、Bランクに上がる条件。

 それは魔力アバターの使えない未攻略ダンジョンに生身で挑み、命懸けでダンジョンを一つ制覇するというを作ること。ここからが本当の意味での「冒険者」の世界だ。


◇◆◇


 魔法使い絵舞エマが冷静に、そのジト目を俺に向ける。

​「……そろそろだとは思っていました。挑戦するダンジョンは決まっているのですか?」

​「ああ、ギルドでちょうど良い依頼を見つけたんだ。これを見てくれ」


 俺はギルドからもらった依頼書のデータを、ホログラムに映し出す。

 ​そこに書かれたダンジョン名に聖女の遥歌ハルカが「あっ」と声を上げた。彼女は美しい金髪を指でクルクルと巻きながら、記憶を探るように呟く。


「【恵庭えにわダンジョン】って……確か少し前まで、別のBランクパーティーが挑戦してたダンジョンよね?」

​「その通りだハルカ。先日まで戦士五人で構成された【ウォリアーファイブ】が挑戦していたダンジョンだよ」

​「しかし……彼らはどうして、ダンジョン攻略を辞退したんだい?」


 トウマがもっともな疑問を口にする。

 Bランクパーティーが撤退した理由、それは大事な情報だ。


「それなんだけど……どうやらダンジョンのボスが【ミラージュ・リッチ】という、冒険者のコピーを作り出す骸骨の魔物だったらしい」


 その情報にジョージが反応する。


​「コピーか……そりゃあ厄介だな。つまりそのコピーってのが相当強いのか?」

「いや。コピーはオリジナルよりも一回りは弱いみたいだよ」

「……じゃあ、なんで辞退したんだ?」

​「それがさ、【ミラージュ・リッチ】の倒し方は『コピーを全部倒した後に、強力な聖属性攻撃をぶち込む』みたいなんだ」


 ​俺の説明にピンときたのはエマだ。


「……なるほど。つまりBランクパーティーの戦士五人は、ボスにトドメを刺せる聖属性の技がなかったということですね?」

​「そのとおり。俺たちならトウマの勇者スキルと、ハルカの聖属性魔法という二通りの攻略ルートをとれるだろ?」

​「なるほどー」

 と皆が納得したように呟く。


 ……そして、部屋に沈黙が訪れた。

 みんな真剣な表情で腕を組み、何かを考えているようだ。


​(アバターでのボス戦は何度もしたことがあるけど、だから迷うのは仕方ないよな。でも……)


​「俺は、強くなった皆なら問題なくクリアできる。……と思ってもう受注してきちゃったんだけど……どうかな?」


 ​俺の問いに最初に答えたのはエマだった。


「……Bランクパーティーに昇格するためには、必要なことですからね」

「……そうね。今の私たちなら、きっと大丈夫よ!」

「んだな。面白くなってきたじゃねぇか!」

​ エマに続いて、ハルカとジョージも力強く同意してくれた。


 最後にリーダーのトウマが、皆の覚悟に満ちた顔を見渡し、深く頷いた。

​「ああ、やろう。今の僕たちなら、きっとうまくやれる……!」


 ​こうして俺たちの次の配信は──Bランクへの昇格がかかった、ダンジョン初制覇への挑戦に決定した。


 俺は心の中で気合いを入れなおす。


​(今のみんなならきっと大丈夫。あとはこのダンジョン初制覇が盛大にバズってくれますように……!)

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