第三部 地元成り上がり編

第14話「期待の新星パーティ」

 金賀財閥や【黒曜の牙】を捕らえた、あのお披露目配信から三ヶ月。

 ​俺たち希望の灯リバティファイアの日常は、あの日を境に一変した。


 注目度が上がった俺たちのダンジョン配信の視聴者は右肩上がりに増え続け、全国で行われる年間人気ランキングの順位も順調に上がっている。


​【希望の灯リバティファイア

北海道ランキング :29位 ↑48up

全国ランキング  :777位 ↑1,071up

チャンネル登録数 :914,500人




 ​今日はパーティの皆と一緒に、久しぶりに街へ買い出しに来ている。

 知名度が上がったせいか、商店街を歩いていると、やたらと声をかけられることが多くなった。


​「あ……! もしかして、希望の灯リバティファイアの皆さんですか!?」

 ​制服姿の女子高生のグループが、俺たちを見つけてパタパタと駆け寄ってきた。


​「うわっ、本物だ! カッコいい!」

「いつも編集版の動画見てます! 私、トウマさんの勇者スキル大好きです!」

​「あはは、ありがとう。そう言ってもらえて嬉しいよ」

 赤髪の勇者トウマがリーダーらしく、人の良い笑顔で応えている。


​「ところであの配信って、本当に命がけなんですか?」

「そうだよ」と、トウマ。

「えーすごい! でもそれなら、もっと大人数で行けば安全なのにー」

​「それが、ダンジョンには10人までしか入れないんだよ。もし11が入ってしまうとダンジョンが暴走して、強力なモンスターが大量発生してしまうんだ」


 ​トウマがダンジョンの特性について説明すると、女子高生たちは「へぇー」と声を揃えて納得した。


​「なるほどー。……あっ、厨二少女ちゃんもがんばってね!」

「ちょっ、失礼ですよっ!? こう見えても私は、あなたたちより年上なんですよっ!」

​ 魔法使いのエマがもはやお約束となったやりとりを見せる。

 女子高生たちは「キャー!」と楽しそうに笑いながら、手を振って走り去っていった。


​「もう!」とプンスカ怒るエマと、それを見て笑う俺たち。


 ​──希望の灯リバティファイアはもう、誰にも見向きもされなかった地味な底辺パーティじゃない。

 今や人気急上昇中の「期待の新星」になりつつあった。


 ​そんな風に何度か声を掛けられながら、俺たちは目的の魔道具屋に到着した。

 カラン、とドアベルが鳴る。


 店内で商品を見ていると、聖女のハルカがとある棚の前で足を止めているのが見えた。


​「あれ……ハルカ、なんでそんなの買うんだ?」


 俺の問いに、ハルカが美しい金色の髪を揺らしてこちらを見る。彼女の手にはなぜか、MPポーションが数本握られていた。


​(MPポーションなら、俺が買ったものを渡してあるんだけどな……?)


​「あー……ちょっとね? これは私用で使うのよ」

​「私用……ってなんだよ?」

「うーん? まあそのうち教えてあげるわ」

​ ハルカはイタズラっぽく笑うと、また他の商品棚のほうへと歩いて行ってしまった。


(自腹で買わないでもたくさんあるのに……変なヤツだな)



​◇


 ​買い物が終わって解散した後、俺は一人で冒険者ギルドへ向かう。


​(順調に人気は出てるんだけど……そろそろもう一盛り上がり欲しいんだよなぁ)


 ​初回のモンスタートレインと盗賊団捕縛で注目度が一気に上がった俺たちだが、それ以降の配信は良くも悪くもトラブルのない順調なダンジョン探索。

 視聴者数は伸びているものの、その勢いは段々と緩やかになってきていた。


 話題性がありつつ、みんなの実力に合った依頼がないかをギルドで探し回るのが、俺の最近の日課になっていた。


​(これは……Aランク推奨だから受けられないか。Cランクだと受注できる依頼が限られるんだよなぁ)



 ──そんな風に依頼掲示板を眺めていると、突然後ろから「どけ、邪魔だ」と声がした。


 ​振り返るとそこにいたのはなんと、北海道のランキング1位パーティである【栄光騎士団ナイツ・オブ・グローリー】の面々だった。

 ​リーダーの勇者アーサーと、聖女が一人、男性の聖騎士と魔法使いの四人パーティ。


 全員が金髪、しかも全身を金色の装備で固めている。……テカテカ光って、見ていてとてもうるさい連中だ。


​「お前は……希望の灯リバティファイアの荷物持ちか。Cランクの分際で掲示板の前に立つんじゃねえ。端の方で見てろ」

「はあ……わかりました」

 下すような視線で俺を睨むアーサー。

 ​争って目立つのも嫌なので、俺は大人しく場所を譲った。


 見ての通り栄光騎士団ナイツ・オブ・グローリーはギルド内での態度が悪く、同業者からの評判は良くない。

 しかし実力があって狂信的なファンも多いのが厄介で、こいつらに変な噂を流されて評判を落としてしまったパーティも多いため、なるべく関らない方が良いだろう。


 ​しばらくすると栄光騎士団ナイツ・オブ・グローリーの連中は一枚の依頼書をビリっと乱暴に引きちぎり、四人まとめてふんぞり返りながら窓口の方へ歩いて行った。


​(相変わらずイヤな奴らだな……。あいつらを一気に追い越せるようなクエストは……おっ!)


 ​気を取り直して掲示板を確認した俺は、今のCランクでも受けられる、とあるBランクの依頼を発見した。


​(これは……希望の灯リバティファイアがさらに注目されるために、丁度良いクエストかもしれないぞ。よし、さっそく受注してみんなと作戦会議だ!)

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