武士の約定 ~誓いと裏切りを選んだ武士道が導く追放と滅亡の絆
星うさぎ
前編 裏切りと追放
「たった今をもって、ここバルクは我ら
国と呼ぶには人口七万人という小さな獣人族の国バルク。
元々はもっと小さな集団生活が各地でされていたが、人間からの差別、
隣国には軍事大国であるゾルディアがあり、いつ
それが今まで起こらなかった要因の一つが、同盟を結んだ
そして同盟を結んでいた国のなかでもバルクは特に小さな国であり、そんなバルクを
「なにを言ってるんです? スザク殿、悪い冗談はやめていただきたい。
私たちは今まで共に時間を過ごし、テーブルを囲んで食事も共にしてきた。
それが突然こんなこと、信じるわけがないでしょう!?
ゾルディアが
広場に集められた獣人たちの周囲には刀の
獣人たちを取り囲んでいるみなが
そして集められている獣人たちから、一歩前で言葉を投げかけているのは銀狼の獣人。
まだ昼前というくらいの日差しは、長髪と言える銀色の髪を輝かせている。
顔立ちは人族と変わらないが、頭にはピンと立っている耳。
後ろには銀色でフサフサとした
そんな銀狼と話しているのは、
歳は四〇辺りで、他の者が着ている
「ダッカ、この状況がわかっていて、ただの悪ふざけだとでも思っているのか?」
「悪ふざけではないと言うのなら、これはどういうことですか?」
自分たちの命運を左右するだろう今のやりとりを、銀狼以外の獣人は静かに見守っていた。
「ゾルディアが我が国
だが
さすがの我が国でも、今の状態ではどうなるかわからん。
よってここバルクを明け渡して時間を稼ぎつつ、我らは
そのためお前たちがいては邪魔なのだ。確かにこの土地から追い出されることになるが、お前たち獣はどこでも生きられるであろう?」
「我らを獣と口にするかっ!?」
だがその瞬間、周囲を取り囲んでいる者たちが刀の
「我らにもいくらかの
それでもこの土地に留まるというのなら――――致し方あるまい」
「くっ――――。キサマらを信じ、同盟を結んだ我らが
キサマら
「――――」
「自分たちのために我らを裏切って利用したこと、たとえキサマらが死んでも忘れんぞ。
キサマら同胞すべて、ゾルディアに
さっきまでの怒りなど生ぬるい。銀狼ダッカは憎しみと言えるほどの目を
そんな銀狼とは対照的に、
「夜までは待ってやるゆえ、荷物をまとめて出ていくがいい。言っておくが、妙な動きをしたら赤子であろうと
そして日も暮れて夜の
道は両側が
「ねぇ、なんで僕たちが出ていかないといけないの? スザクたちは友だちだったんじゃないの?」
まだ四歳くらいだろう羽の生えた男の子が、同じように背中に大きな羽を持った母親に訊ねた。
「……私たちはお友だちだと思っていたけれど、そうじゃなかったということよ。
悲しいことだけれど、あーいう人間が世界には多いの」
「悪い人間だったっていうこと?」
「……そういうことかもしれないわね」
「じゃぁみんなでスザクたちを追い出しちゃえばいいじゃん!」
子供ゆえに素直な考えなのだろう。だがこれは現実的ではない。
獣人は一般的に身体能力が人間よりも高いが、魔力による身体強化はかなり大雑把な傾向にある。
繊細な魔力コントロールを苦手としているため、魔法の発現も得意とは言えない。
それでも元々の身体能力が高いため、獣人は決して弱いわけではない。
むしろ人間からすれば、獣人との戦闘は
だが
世間ではそんな
それがたとえ勝ち目のない戦いであったとしても。
そんな者たちと子供たちがいる状態で戦えるわけもない。
仮に勝利したとしてもゾルディアが侵攻してきている状況。
獣人たちが戦いを選択するということは、状況的に自殺するようなものであった。
「村に残っている者は?」
「はっ。倉庫などもくまなく
「そうか……門を締めよ」
そんな獣人たちの視線を
「
地面から吹き上がるように炎の壁が立ち上がり、周囲の空気が熱を帯びる。
辺りには
「しばらく
振り返って
獣人たちの顔には悲しみや絶望、怒りという感情が現れている。
そんな獣人たちに一度視線を向けた
武士の約定 ~誓いと裏切りを選んだ武士道が導く追放と滅亡の絆 星うさぎ @lightnovelpeko
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