宇宙転生アクシオン

ミミササ

プロローグ


 新宇宙創成歴198年。

 人類が地球圏以外に住み始めてから198年。文明は人類の予想を超え、発展していき宇宙では数々の国家が誕生していたが、当然その中には独立できていない星も存在する。

 場所は月。そこでは独立に対する緊張感が高まり、独立派と保守派の内部分裂と言う状況にまで陥っていた。そんな月には歴史を動かす一人の天才がいた――。


 ――月の天才、ゼネラル・アクシオン博士。

 私がそう呼ばれたのはいつからだろうか……。


「アクシオン博士、A-01【アクシオン】の整備が終わりました」

「そうか、ご苦労」


 月面に置かれた軍事施設にて整備士から報告を受けた私はコックピットへと向かっていた。


 ここは月面。そこで行われている極秘実験、人型機械兵器の試験的運用。人型兵器【アクシオン】、その開発者である私、ゼネラル・アクシオンは5回目となる機動実験のパイロットとして参加していた。


「それでは博士、自分達は後方へ下がります」

「あー、一応聞いておきたいんだが……」

「はい」

「ジークの奴は来ているのか?」

「いえ、ジーク様が来られたと言う情報はまだ……」

「そうか」


 ジーク・アンシェルク。月の独立運動組織〈ルミナス〉最高幹部の一人だ。

 そして、ここまでサポートしてくれた私の親友にして恩人の一人だ。


「ジークの奴も大変だな」

「本当ですね」

「月の独立運動の為とはいえ、宇宙国家の会合にこんな夜更けまで付き合わされるとか……ま、ここ月だからだいたい夜なんだけどな!」


 時刻は深夜1時。現在、月は国家としては認められていない。その為、月は最も近い星である第1人工惑星国家〈ギリアン連邦〉の領地下にある。


 その独立の為に独立の為に色々なコネとこの人型機械兵器【アクシオン】が必要らしい。

 まあ、政治面に弱い私がとやかく言えたことじゃないが、忙しいらしい。


「それでは博士、自分たちはこれで……」

「ああ」


 そう言って整備士に背中を見せた時だった。

 パンッ!と一発の銃声が鳴り響くとともに腹部が熱くなった。


「あ…え……は?」

「お、お前!何やってんだ!?」


 地球より軽い重力に引っ張られる体が横転しようと後ろを振り返った時、視界に写ったのはさっきまで話していた整備士が銃を持ったもう一人の整備士を取り押さえている現場だった。


(撃たれたのか……私が……?)


 地面に着いた体から溢れ出てくる血の波は止まらず、肉体の死を予感させる。


(ダメだ……痛い、熱い)


 体で感じる情報は目に映る情報よりもはっきりと感じ取れる。


(死ぬのか……私が……か)


 【アクシオン】が戦争の道具になるんだ。当然、こうなる覚悟もあった。


 当たり所が悪かった。そう感じさせる程の痛みが、熱が、意識が死と言う現実を突き付けてくる。

 目の前で騒いでいるのはわかる。だけども……。


(視界が……)


 目に映る光景がだんだんとぼやけていく。

 それにつられて意識も朦朧と保てなくなる。


(ここまで……か。すまん……ジーク、あ、と……は…………)


 意識が途絶える。


 ――新宇宙創成歴198年、ゼネラル・アクシオン博士。

 ――暗殺により死亡。


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