古都の陰陽道具訪問販売人 拙生さん 〜呪物もお引き取りいたします〜

アワイン

1

 人にとって大したことでもないかも知れない。でも、俺にとっては浪漫なんだ。

 これはちょっとした出会いの小話。

 小学校の頃、祖父のお通夜の時だ。父親と喧嘩した俺は外に飛び出たことがある。お通夜のとき独学で勉強しようとしたことがバレていて、大喧嘩をして外に出た。

 外に出て俺は大きな道路の前に着く。

 トラックや車にはねられて異世界転生でもすれば、俺は最強になれるのか。幼い頃の俺はそう考えていた。

 ふっとしたとき、隣に小さな小鬼が立っているのが見えた。

 霊力がある人間は妖怪や幽霊が見える。

 俺の家系は陰陽師の流れを汲む分家ではあるが、俺次第で途絶えてしまうという。

 お祖父ちゃんは霊力はあったけど俺ほどではなかった。父親に霊力がなくて、俺にはある。最後の希望のような形で霊力が強い俺が生まれたのだけど、お祖父ちゃんは陰陽術を教えてくれなかった。お祖父ちゃんは自分の代で陰陽師を終わらせるつもりだったからだ。お父さんは陰陽師の道具を何処かに売ってしまった。

 俺はアニメや漫画で見た陰陽師になりたかった。なれなくても、せめて術は使いたかった。

 妖怪や幽霊が見えても、無視をしろ。そう言われて小さい頃から育ってきた。なのに、その時の俺はお祖父ちゃんの言われてきたことを無視した。俺はそいつと目を合わせてしまった。見えるとわかった小鬼は俺ににたりと笑って囁く。


[なぁなぁ、トラックにはねられて死ねば、異世界転生できるかもしれねぇぜ?

そうすると俺TUEEEで無双できるかもしれないぜ?]


 この時、揺さぶりをかけられたんだと思う。陰陽術を使えて、異世界でチートできる。そう思って、道路に向かって飛び出そうとした。

 飛び出そうとする前に、手を掴まれて、動きを止められた。俺は文句を言うために体を後ろに向けると、身長の大きな人だった。

 俺と同じゆるふわの髪のくせ。少し長い金色の髪が目に入った。一つにまとめて整えられており、黒いサングラスを掛けていた。

 怪しい人だけど、驚くだけで何故か恐怖を抱かなかった。


「その小鬼の言うことは聞かないように。見るなと祐太郎から注意されなかったのか?」


 祐太郎とは祖父の名前だ。黒スーツの人は、俺のお祖父ちゃんの通夜に行く途中だったのだ。

 小鬼はその人に睨まれたのか、慌てて遠くへと逃げる。

 彼は俺を見据えたのに、しゃがんで目線を合わせた。

 サングラス越しに見える凛々しくも美しい目は、俺を射抜く。優しく頭を撫でられた。


「まったく、今生きている責任をそう安々と放棄しちゃダメだぞ。少年。そうすることは、拙生が許さない」


 真剣に止めてくれた彼、拙生さんは俺に優しく怒ってくれた。

 拙生さんは名前を教えてくれなかったから、俺が拙生さんと勝手に呼んでいる。



 そんな経緯、これが俺と拙生さんの出会いだ。



 出会ったあと、拙生さんに連れられて通夜の場に戻ってきた。なんでもお祖父ちゃんとお父さんの知り合いだったらしい。拙生さんは陰陽師の道具や妖怪に関連する道具を売る訪問売買人。彼は人の域から外れた人らしい。それって妖怪かなって思ったけど、厳密には違うようだ。拙生さん本人が家にあった陰陽師に関連する道具を買い取ったとのこと。お祖父ちゃんの遺言らしく、なんでも俺に危険なことをさせたくないらしい。

 陰陽師は星を見る専門でしょと理由をつけても、拒否して拙生さんは渡してくれなかった。その時の俺はムカついていたけど、拙生さんが。


「じゃあ、拙生が陰陽師について教えよう。教える条件は学校の成績と行動が良いこと。学級委員長をしっかりと務めること。拙生や陰陽師のことは秘密にすること。中学も同じ条件だ。それが出来たら教えてあげよう」


 とにこやかに言う。最初は無理だろと思った。でも、明らかな挑戦状だ。

 俺が頑張れば教えてもらえる。拙生さんは最初から諦めさせるつもりだったのだろう。

 ネバーギブアップ! そうはさせない。

 俺は頑張って、勉強した。体を動かして、運動部に入って、学業と部活に成績も残した。生徒の模範であろうと生徒会にも入って、生徒の模範であろうと先生に意見したり、生徒の中を諌めたりと、王道な姿勢をとった。

 陰陽師のことも、拙生さんのことも誰にも言わない。秘密にする。条件を守りながら、一日に一回は拙生さんに報告と陰陽術ご教授お頼み申すをしている。

 お頼み申すをして、断られて五年。当時を思い出してみると、拙生さんは見た目が変わってない。本当に人じゃないようだ。でも、人じゃないのに何故か人間味がある。

 勉学や運動に励んでいるさなか、陰陽師のロマンだけでなく拙生さんの一つの狙いも見えてきた。

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