鶴の一声-承-1
まず洗わないといけないのは家族構成。と、遺書の内容。
友人の家族は全員で7人。
まずは渦中の友人の祖父
「宮森
そして友人父「
友人の彼「
同居してい友人父の妹。「荒木
そして、叔母の娘。「
彩花さんは旦那さんに先立たれたらしく、実家に身を寄せているそうだ。
娘さんがまだ小学生。無理もない。
次に遺書。どちらもとても内容は簡素だ。
1つ目
「現金以外のものに関しては重次に渡す。現金に関しては、金額に対して、法に則って分与しなさい。」
2つ目
「全財産を陽子さんに託す。息子は金銭管理ができないから、陽子さんよ。どうかよろしく頼む。」
パッと見た印象は。1つ目の遺書の方が真っ当かと思った。
「普通に考えたら自分の家継がせる人に遺産多く残すよな…
でも1代でこんだけ資産作った人が、色々潰したくないって考えたら…そういうこともあるのかな…」
正直そこはいわゆる「家庭の事情」のレベルだ。
そとの私から見たら、重次さんが余程散財とかする人間かどうか、なんて分からない。
というか、一般人の私からしたら。
多少散財癖がある程度では到底使い切れない金額が相続されそうなものだ。
「お前の親父、なんか金遣い荒かったりするの?」
私は友人に電話で聞いてみた。
「特別そんなことはないとは思うけど…
まぁ金遣いがどうとかって言うより、仕事してないからな…」
まさかの返答。重次さんは仕事をしていなかった。
そうなると、1通目の遺書も嘘くささが漂う。
「無職に…急に会社とか資産全部ぶつけるのはありえないかもしれんな…」
ともあれ、自身の息子夫婦に継がせることはしたいらしい。
「母親は?仕事何してるの?」
「普通の、会社員だよ。特別お金に強い訳でもないな。経理とかやってればわかるけどそうでもないみたいだし…」
早速手詰まりだ。
1代で築いた莫大な遺産を。
1.無職に担わせるか
2.息子ではなくその嫁に担わせるか
もっと庶民的な金額だったらどちらも有り得ただろう。
だが金額は億を超える。なんてレベルじゃない。
「1回質問を変えるか。利治さんってどんな人?」
「どんなって言われてもなぁ…しょうじき数ヶ月前に帰ってくるまでほとんど会ってないから記憶にないよ…仕事仕事で世界中回ってたらしいからね。」
「なるほど…」
「まぁでも性格はおおらかだよ。仕事はめちゃくちゃできるけど、小さいことは気にしないみたいな。細かいミスとかは人柄でカバーみたいなタイプかな。」
「ちなみに、他の家族から見た利治さんは?」
「どうだろうねー。うちの家族、裕福ではあるみたいだけど贅沢はしてないからねー。親父はあんなんだし、お袋は結婚するまで普通の社会
人だったから玉の輿狙いーって言って仕事辞めるのは気が引けたんじゃない?」
「なるほどなー……ん?まてよ?
そもそも家庭内不仲って誰が不仲なの?」
「え?親父と叔母さん」
「は?お父さんとお母さんじゃなくて?」
私はここを見落としていた。
てっきり受け取りの対象になっているご両親が不仲なのかと思ったらそうではない。
父親と叔母。つまりは兄妹喧嘩なのである。
そうなるとなぜこのふたりが争うのか。そこがひとつの焦点になる。
友人いわく、双方の言い分はこうだ。
彩花さんの言い分としては、至極真っ当なことを言っている1つ目の遺書が正しい。
どうやら2つ目の遺書に納得がいかないようで、相続について調べたそうな。遺留分があるから全てを陽子さんに渡すのは違法だと。
これだけの財を成した父が、それを調べないで書くはずがないと言っているらしい。
重次さんの言い分は、こっちの遺書の方が俺の事よくわかってる。だそうだ。
なんとも皮肉というか、本人も認めているんだなぁと。
こんなにも薄い内容で彩花さんと喧嘩になるのは、ある意味兄妹だからギリ喧嘩になったってレベルだと思う。
私は正直法律には明るくない。
そこで、ある人に連絡をしてみた。
「………」
「………」
「あの、電話に出たならもしもしくらい言わないんですか?」
「意外なことをしてみたかったので。楽しめたでしょ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます