第2話 強迫(きょうはく)
【登場人物】
A:借金取り
B:借金を返せない男
C:Bの友人
~Bの自宅~
A
「 おい、Bさん!今日が期限だぞ!早く金を出せ!」
B
「す、すみません、Aさん。もう少し待ってください。今月は給料が遅れてて...」
A
「聞き飽きたよ。もう何回同じこと言ってるんだ?お前は俺をバカにしてるのか?」
B
「そんなことありません!本当に返したいんです!でも今は無理なんです!」
A
「じゃあ、どうするつもりだ?このままじゃ利息がどんどん増えるぞ。お前はそれでもいいのか?」
B
「いや、もちろん嫌ですよ...でも...」
A
「じゃあ、契約書にサインしろ。これにサインすれば、利息は半分になる。代わりに、お前の家と車を担保にする」
B
「えっ!?そんなの酷すぎますよ!家と車を失ったら生活できません!」
A
「そう言うなよ。お前は俺に感謝しなきゃいけないんだぞ。俺はお前のためを思ってるんだから。これが最後のチャンスだぞ。サインしないと、お前の家族や友人にも手を出すぞ」
B
「そ、そんな...やめてください...お願いします...」
A
「じゃあ、早くサインしろ。さっさと済ませてやるよ」
(ドアが開く音)
C
「Bさん!大変だ!Aさんが来てるって聞いて駆けつけたよ!」
B
「Cさん!助けてくれ!Aさんが強迫して契約書にサインさせようとしてるんだ!」
C
「えっ!?それはやばいよ!Bさん、絶対にサインしないで!」
A
「おい、邪魔するなよ。こいつは俺に借金があるんだぞ。お前は関係ないだろ」
C
「関係あるよ。こいつは俺の友達だからさ。それに、お前のやってることは法律違反だぞ」
A
「法律違反?何を言ってるんだ?」
C
「民法96条によれば、「強迫による意思表示は取り消すことができる」ということだよ。つまり、お前がこいつに脅して契約書にサインさせたとしても、無効なんだよ。
A
「何だと!?そんなことあるか!」
C
「強迫とは、「人に意思表示をさせようとする害悪の告知」を指すんだ。お前がこいつの家族や友人に手を出すと言ったのは、まさに害悪の告知だよ。それによって、こいつは恐怖を感じて、契約書にサインしようとしたんだろ。これは「強迫によって意思表示を行った」ということになるよ」
A
「そんな...でも、こいつはまだサインしてないじゃないか。サインしなければ、強迫による意思表示じゃないだろ」
C
「それも違うよ。民法96条は、「強迫による意思表示は取り消すことができる」と言ってるんだから、サインした後でも取り消せるんだよ。もし、こいつがサインしたとしても、後で取り消せば無効になるんだよ」
A
「くそっ...じゃあ、どうすればいいんだよ!」
C
「簡単だよ。お前はこいつに謝って、借金の条件を見直すことだよ。それと、強迫や詐欺をしないことだよ。そうすれば、こいつもお前も幸せになれるかもしれないよ」
B
「Cさん...ありがとう...助かったよ......」
A
「ちくしょう...分かったよ...ごめんな...借金の条件を見直そう......」
~おまけ~
C
「さあ、Aさん。ここに座ってください。Bさんと話し合いましょう」
A
「はい...すみません......」
B:
「Cさん、本当にありがとう。助けてくれなかったら、どうなっていたかわからないよ......」
C
「いいよ、いいよ。友達だからさ。それに、Aさんも反省してるみたいだし、和解できるといいね」
B
「そうだね...でも、借金は借金だからね。返さなきゃいけないのは分かってるよ」
A
「Bさん...ありがとう...俺も無理やり契約させようとしたことは悪かったよ...でも、俺も困ってるんだよ......」
B
「どういうこと?」
A
「実はさ、俺も借金があるんだよ。お前に貸した金は、別のヤツから借りた金なんだよ」
B
「えっ!?そうなの!?」
A
「うん...俺は元々、小さな会社を経営してたんだけど、コ○ナの影響で仕事が減って、赤字になっちゃったんだよ。で、生活費や給料を払うために、高利貸しのヤツから金を借りたんだけど......」
B
「それが返せなくなったってこと?」
A
「そう...利息が高すぎて、どんどん増えていくんだよ。で、借金を返すために、他のヤツに金を貸したりしたんだけど......」
B
「それが俺のことか」
A
「うん、ごめんな。俺も追い詰められてたんだよ...でも、お前に強迫したことは許されないことだったよ。本当に反省してるよ...」
C
「Aさん...大変だったんだね。でも、そういうことをすると、ますます悪循環になるよ。高利貸しのヤツに頼るのはやめた方がいいよ」
A
「そうだね。でも、どうすればいいんだろう…借金は返さなきゃいけないし...」
C
「借金は返さなきゃいけないけど、無理やり契約させるのはダメだよ。それに、高利貸しのヤツも法律違反してるかもしれないよ」
A
「法律違反?」
C
「うん。消費者金融法という法律があってさ、貸金業者は年利20%以上の利息を取ることができないんだよ。それ以上取ると違法利息になるんだ」
A
「そうなの?俺が借りたヤツは年利30%だったけど...」
C
「それは違法利息だね。違法利息を取られてる場合は、その分を減らしてもらえる可能性があるよ」
A
「本当か!?それは助かるかも!」
C
「でも、それを主張するには証拠が必要だからね。契約書や領収書などがあればいいけど...」
A
「あるよ!俺はちゃんと保存してるよ!」
C
「じゃあ、それを持って弁護士に相談してみたら?弁護士なら、違法利息の問題を解決してくれるかもしれないよ」
A
「そうだね...でも、弁護士って高いんじゃないの?」
C
「そうでもないよ。弁護士によっては、無料相談や分割払いなどのサービスを提供してるよ。それに、違法利息の問題は、弁護士費用を含めて回収できる場合もあるよ」
A
「そうなのか...じゃあ、試してみるか、ありがとう、Cさん。教えてくれて助かったよ」
C
「いいよ、いいよ。それで借金が減って、楽になればいいね」
B
「Aさん、Cさんの言うとおりだよ。俺も借金は返すけど、無理はしないでね。それに、俺もお前のことは憎んでないよ。友達になろうよ」
A
「Bさん、ありがとう。俺もお前のことは友達だと思ってるよ。これからは正直に付き合おうね」
B
「うん。それが一番だね」
C
「よかったね。二人とも仲直りできて。これで幸せになれるといいね」
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