『三面鏡』

苺香

第1話 『三面鏡』

いにしえの 調度品の前に 跪く

像が重なる 無限回郎


自分の目からはみえない

真横や 後ろ姿

無限回廊に 小さな「私」


妖艶な 和装のあなたを 映したかしら

ふんわり 揺れる髪を 映したかしら

これまで ずっと あなたを映し

あなたを 見守り続けて来た


自分の目からはみえない

真横や 後ろ姿

無限回廊に 映し出されたあなたを

鏡は覚えているのか


あなたは 鏡に映る自分に

「お母さん……」と少女の笑顔で言う

そこに母をみつけ 子どもに戻る


貴方は 最後の役割を 果たしている

「老い」というものを 私たちに教える


その姿は 私たちに

毎日を

大切に過ごすことを 教えてくれる


鏡に映った自分の姿 目に入り 微笑んで

もうそれだけで 素晴らしき日々

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『三面鏡』 苺香 @mochabooks

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