【短編】私の小説が一次選考を通らない理由
すぎざき 朱
【短編】私の小説が一次選考を通らない理由
本を読むときに、頭の中で音読して読む人と読まない人がいるらしい。
物語を書くとき、頭に映像が浮かぶ人、浮かばない人がいるらしい。
人によってこれだけ違いがあるようです。そもそも、私は何か見たり聞いたりした時に頭に物語の一部始終が出来上がり流れるのです。アニメの映像としてです。そして、それはいつも大体クライマックスシーンが先に浮かびます。そのクライマックスシーンを何度も頭の中で繰り返し再生して忘れないようにしてます。それから、物語を作っていきます。なので、物語の初めは初めではなく、二番目に作られるんです。一番最初に頭に浮かんだ山場的な盛り上がりシーンが最初、そして、軽い設定が浮かび、物語の最初を作り、最後と最初を繋げる中間を書いていくのです。全部ではないのですけど大体この流れです。見せ場的なものが浮かぶのです。
そして、私は現在、異世界転生やチート、令嬢ものなどのWEB小説界隈の多くを占めていると言われている(真偽は知りません)ジャンルを書いておりません。なぜかと言うと、沢山あるものを書いたって埋もれると思っているからです。すでに異世界や令嬢系やざまあは沢山あるんです。面白いものばっかりです。何百と作品があるでしょう。新しいものが特に浮かばないから書かないと言うものあります。
でも、そもそもが頭の中に勝手に浮かんでくるのです。このジャンルを書こう!とか思ってもなかなか書けないのです。どうしようもないのです。なので、浮かんできた映像を書きます。そう、頭の中に浮かんだ映像。それは、小さい頃から今までそれなりにアニメを見てきた私が想像するのです。そりゃ爆発シーンは壮大ですし、色や魔法を使ったときの光も物凄く綺麗です。
ですが、これは私の頭の中の話なのです。
これが、読み手の方には伝わらないのです。
でもよく見かける言葉があります。
「つらつらと説明みたいに書かなくていい。そこは読者の想像にまかせろ」その想像が自分の想像と全く違ったら面白くないわけです。
【Q:それは、想像力が乏しいと言う意味か?】
【A:違います。乏しいのではなく、違う想像をしているのです】
読み手が好きに想像できるのだけが楽しさだけではないですが、私は私の頭の中に浮かんだ映像を伝えるために文章を書いてます。そうです、説明に近いです。しかし、その説明を以てしても違う想像をする人ばかりでしょう。むしろ全員頭の中に浮かぶイメージは違うと思います。私と同じイメージをしてくれる方は誰一人いないのです。
だから私は、ちゃんと自分のイメージを伝えたいために、昔は漫画を描いてました。
ちょっとだけ脱線して、私が漫画家志望から小説家志望になった理由を書きます。
絵が下手なのです。人物は多分それなりに描けてました。絵柄は古いと某集○社に言われましたが。人物以上に描くのが辛かったのが背景です。背景がもうどうしようもありません。描き込みもできず、全体的にチープなコマでした。一コマすごく描き込むと達成感はありますが、また同じように描かなくちゃいけないのか・・・と絶望感が襲ってきます。
あと、絵を描くのは本当に時間が掛かります。つまり、物語が頭の中に流れてきてそれを絵にしていると信じられないほど時間がかかるんです。でも、その物語の結末どころか新作映像や設定などが頭に浮かんでしまうのです。追いつかな過ぎるのです。なので、小説に転向したのです。それなら頭の創作スピードに追いつくと思ったからです。
あぁ、もうこの時点で随分長くなってしまいましたので、転向理由の続きはサクッと述べます。
社会人で8年間休日も仕事に追われて心休めなく体調を崩しました。同時期コロナ禍で、一時自宅待機になりやっと時間が出来て改めて物語を作り続けることをやろうと思い、小説を投稿し始めました。そして、その後会社に出勤するようになりましたが体調が完全にダメになり、今も働きに出るのが難しいです。あと、その最中に親が病気になりました。退職して介護してます。その状況下で何ができるかと考えたら、もう何も出来ないわけです。だから、私は書いていた小説がもし評価されてそれが収入源になったらいいなってちょっと思ったんです。調べたらそれ以外でも、公募やコンテストなどが沢山開催されているではないですか。
もしかしたらチャンスがあるかも。と思い、物語を書くようになりました。
小説家になれる可能性はとか、この程度の作品じゃダメだとか色々他所様でそのような議論や創作論を見てます。とりあえず、今の私には書くことと自分の体を少しずつ治すことの二つしか出来ることがないんです。
話を戻しましょう。
さて、小説を読む時に、早く読むコツは?と言う質問をどこかで見かけました。その答えが、「頭の中で音読をしていると遅い。文字を読まずに見ていくと早く読める」と回答がありました。
試しました。
最初は確かに文字だけで見てました。でも、癖なのか途中から音読は始まっており、なんならご丁寧に映像が頭に浮かんでおりました。練習すれは出来るでしょうが、それだけと頭に残りづらく、休んだり日を跨いで読んだ時に前回までのあらすじを覚えられないと思いました。
そう、頭の中の壮大な映像を書いてはいるものの、読み手は映像として想像をしない人が多かったら?
印象に残らない、意味もわからないわけです。
もちろん全ての人が、この読み方をしているわけではないと思います。しかし、二手に分けるとすると、
①映像化する人
②映像化しない人
②の映像化しない人は、話の流れ、展開が面白いと思うわけです。話なんて全部そうですし、面白くないとどうしようもないんでしょうけど。なので、私は映像化した情景を含む話の流れというより、いわゆる『エモい』的なものを一緒に練り込んでいると、それは一切伝わらないのではと感じたのです。
私の頭の中に浮かんで、私が選んだ言葉は、文字読みの人には伝わらない言葉だらけの構成だという事です。しかし、一枚の風景画を見て、文字で伝えるときに何を言うかは人それぞれです。それこそ価値観です。
私は自分の頭中に映像があります。しかし、読み手の方には何も情報がないんです。
これって本当に難しい話ですよね。
話を変な方向に進めますと、私の小説がコミカライズしました!となったとしましょう。
コミカライズに関してキャラクターのイメージなどは原作者の意見が反映されるのかされないのか知りません。もし、完全に絵描きさんにお任せになったとしたら。きっと、私の頭の中の主人公と全然違うキャラデザになってしまう可能性があるんですよねきっと。
『心の芯が強く、元気でボブヘアーの主人公女性』
で、どのような女性が浮かびますか?
『心の芯が強く』と言う文字で、浮かんだ主人公女性の顔の目は猫目でしたか?
私の作品の『一年が十一ヶ月しかない君たちへ』と言う作品の主人公女性のイメージです。でも、彼女は私の中では猫目じゃなくてぱっちりのちょっと垂れ目なんです。
『元気』でどんな元気さが浮かびましたか?声の大きい天真爛漫な女性でしたか?でも、彼女の元気は体力に自信がある!の元気なんです。
『ボブヘアー』何色ですか?ここには色を書いてないんです。何色ですか?黒ですか?でも、彼女は明るすぎない茶髪なんです。
そう、私の頭の中の映像は決まっているんです。しかし、以前見た上記の言葉『説明はいらない、読者が想像するからいい』の言葉がどこかに焼き付いてこびりついて、最近の小説の主人公の容姿をほとんど書いてないことに気づきました。別の小説の男子高校生3人が集まるシーンでは、イメージしやすいように『長髪の金髪』や『背が高く短髪のスポーツマン』など書く時はあります。しかし、主人公には触れてないですね。
そう、一度映像として認識してしまっている私は、全く以て初めて私の作品を見てくださった方には分かりづらい状態になっているのです。それを助長させるもう一つの理由が、『既存ジャンルではない』事です。
例えば、私の頭の中の映像、次回作が異世界や悪役令嬢などだったとしましょう。このジャンルはある程度皆さん目にしたことありますよね?ちゃんと読んだ事がないにしたって、広告に漫画の一部がGIFでご丁寧に断罪直前のシーンまで流れてくる事ありますよね?
情報として頭に入ってるんですよ。そうすると、少ない情報でも、私の文章でも物語がイメージしやすいわけです。もちろん現代の学園ものだって沢山名作はあります。しかし、ここに新規の設定を持ってきたとしましょう。ただの魔法でも、呪いでもなく、近いような似てるような、でも全く新しい設定です。
そんな新しいもの、前例がないものの想像は、見た人の今までの知識や記憶からの想像です。
違う想像をされるならまだしも、”想像がつかない”となると、途端につまらないと感じるのではないでしょうか。
それが、私の作品です。
だからこそ、ある程度世の中に多くあるここ十数年ほどで人気になった異世界や令嬢のジャンルでは、基盤の想像が容易に出来るのです。そこに新しい要素が加わると面白いのです。多分。
私も、AIに読ませて『似た作品があるか』を探させてた時期があります。完全に新しいものを描きたかったからです。新しいものをただ描き続けるだけならいいのですが、映像がないものに関して読み手が一切想像できないというリスクがドッカンドッカン発生していた事に今になって気づいたのです。
だから、漫画って強いですよね。設定や状況を可視化してるわけですから、頭の中をダイレクトに伝えることができるんです。それを描き続けるって本当に凄いことです。はい、私はそれが続けられない人間でした。
知名度と実績がないと、新しいジャンルを描いても見向きもされないのはそういうことなのだなと、実際にはもっと他にも色々理由はあるのでしょうけど、一つの原因として辿り着きました。
結論、読み手が想像しずらい事を書いているから、”面白くない”んです。
”一次選考も通らない”ということです。
読んで頂きまして、本当にありがとうございました。
【短編】私の小説が一次選考を通らない理由 すぎざき 朱 @sgzk
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