第2話 追放先で出会ったヤバい奴ら

森の中。


追放され、城門から遠く離れた俺は途方に暮れていた。


木々のざわめき、遠くで鳴く獣の声。


「……完全に迷子じゃねぇか、俺」


持ってきたものはほぼゼロ。

水も食料もなし。


ああ、ブラック企業の残業より理不尽感が強いって、どういうことだよ。

そんな絶望的状況の中、背後にかすかな気配。


振り向くと、銀色の毛並をした狼耳少女が立っていた。


鋭い目つき、弓を構え、警戒心バリバリ。


「……だれ?」


その一言で、森の静けさが一瞬止まったような気がした。


「俺は……ただの転生者、じゃなくて追放者です」


いや、なんで自己紹介したんだ俺。

完全にツッコミ待ちの展開だ。


少女は眉をひそめ、俺を観察している。


「ふーん……まあ、どうでもいい。ちょっと離れて」


その瞬間、木陰から魔獣が飛び出してきた。


小型だが牙も鋭く、明らかに人間を襲うつもりでこちらを狙っている。


「うわっ、マジで来やがった!!」


俺は慌てて手を伸ばす。


《ストレージ》――手近な石ころを放り込むと、光と闇のエネルギーが炸裂し、魔獣は吹き飛ばされる。


少女は目を丸くして言った。


「……なにそれ!? すごすぎない?」


「いや、ただの倉庫スキルだし……」


心の中では「マジで世界救えそうな力だって隠してるんだからな」と必死にツッコミ。


少女は少し警戒を解き、にやりと笑う。


「面白い奴じゃん。名前は?」


「天ヶ瀬 夜斗。呼ぶな」


「ふーん……じゃあ『夜斗』ね」


こうして俺は、狼耳少女ルナと行動を共にすることになる。


彼女は不器用で少しツンデレ。

だが目は純粋で、なぜか俺の“闇”を怖がらない。


「追放されたけど、どうやら俺、ただの倉庫じゃないらしい……」


闇チートの力を自覚しつつも、俺はまだ慎重だった。


森を抜ける途中、俺たちは小さな村にたどり着く。


だが、村人たちは狼耳の少女を警戒し、俺の様子を疑いの目で見てくる。


「……面倒くせぇな」


心の中でつぶやきながら、俺は《ストレージ》を使い、小枝や石を闇エネルギーに変換し、危険を事前に排除。


「おい、ちょっと静かにしてくれ!?」


村人は驚き、ルナは感心した顔をする。


「……なんか、力の使い方、面白いね」


その夜、森の中で焚き火を囲む俺とルナ。

遠くで誰かが俺たちを見ていた。


「ふむ……なるほど、こいつが噂の闇チートか」


影の声が冷たく響く。


こうして、夜斗の異世界生活は再び動き出す。


追放されても、平和に暮らしたいと思っても、

どうやらこの世界はそんな甘くはなさそうだ――

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