第2話 嘘

この世界は嘘ばかりだ。


「ゆきです。よろしくお願いします。」


バスローブ姿の男に言う。お手当を貰い、

シャワーを浴びる。


唾液だらけの唇でキスをされる。

顔が歪みそうになるが意地で笑顔を保つ。


正常位で必死に腰を振る男の顔を抱き寄せ

キスをする。

笑いかけながら喘ぐふりをする。


「気持ちい?」


気持ちいいわけないだろ。そう思いながら

満身創痍ですとでも言うように


「うん…っ…気持ちいっ…」


なんて答える。バカな男。

男は演技なんて気づかない。

私の演技は散々AVで研究し尽くしているため、見抜くやつはいない。


そしてなによりも、笑顔。

笑顔は化粧よりも大事だと思っている。


「ゆきちゃんはいつも楽しそうでお手当の渡し甲斐があるよ。」


当たり前だ。楽しいと思わせるのは昔から得意だった。


「君といると時間があっという間だ。いつもありがとう。」


「君は頭がいいんだね。話してて楽しいよ。今どきこんなに話せる子はいないよ。」


p活は顔だけでは稼げない。コミュ力、所作、服装などが必要だ。


「ううん、こっちこそいつもありがとう。また呼んでね。」


そう言って身を翻しホテルを出る。


煙草に火をつけ、煙を吐く。


「キモいんだよ。カスが。」


吸い殻をつま先で踏みつけ、ネオンの中を歩いていく。


ヒールの音が響く。いつの間にか履けるようになっていた。


財布の中の札束を数え、また煙草をふかす。


「ゆきなんて女、いないのにな」


ゆき。20歳。もちろん人によって18歳にも19歳にもなれる。もしくは未成年にも。


「…あはっ…バッカみたい」


夜の街へ消えていく。汚れた札束を握りしめて。嘘で塗り固めた自分だけを信じて。


まだ16歳だった。

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