第25話 再捜査へ


「おい、勝手に話を進めるな」


 不機嫌そうな表情をさらに深めて、鉄夜が言った。

 

「え、どうして。鉄夜くんも来る流れじゃない?」

「俺が行くのはいいが、こいつらはダメだって言ってる」

「え」

「え?」

「おいらたち?」

 

 シャクドウとミロク、それからルシャが声を上げた。


「当然だろ。カクリヨ生まれのお前ら二人は、現世あっちに行くのだって無理だ」

「ええっ。おいらたちは留守番かァ。じーちゃんは、ウツシヨ行ってるのに」

「ヤマモトさんは元々、廃れ神……現世で奉られていたからね」

「え! ヤマモトさんって……シャクドウくん、ヤマモトさんのお孫さん?」

「……うん」


 この一体の顔役だという、山のように大きな身体の鬼。楢崎よろず探偵事務所の常連だ。

 たしかに、ちょっと面影がある。

 

「最悪、祓魔師に祓われたり、霊力を使い切って消滅したりするんだ。お前らみたいなガキを連れて行くわけにはいかん」

「……それくらい、わかってるし」

「母さんが、しんぱい。ほんとうにダメか」


 俯くルシャの頭を、鉄夜がくしゃっと撫でる。


「心配するな。オトナにまかせときゃいいんだ」

「……うん」


 ミロクが、ヘビの尻尾の先で、あやめをひょいっと指す。


「ルシャ。大丈夫だ。このあやめって人、ウジウジしてるけど頼りになるって、鉄夜が言ってた」

「……え、私?」

「おい、余計なこと言わなくていい」

「だって、そう言ってたじゃないか。新しい助手のウジウジ女は、ああ見えて凄いやつだって」

「う、ウジウジってそんなに何回も言わなくても」


 いや、ウジウジしているのは、本当のことなのだけれど。

 でも、口の悪い鉄夜が、自分のことをそんなふうに言っていたなんて。

 誰にも注目されない、脇役の自分を。

 

「……俺はマジで思ってることしか言わん。それに、龍彦が助手に選んだモノだ」

「鉄夜くんって、本当に素直じゃないね」

「あ??」

「な、なんでもないです」


 とにかく、と龍彦が所長らしく話を纏めにかかる。


「僕ら三人で、全力でルシャくんのお母さんを助ける。だから、安心して待っててほしい」

「……わかった」


 ルシャが、二股になったしっぽをしならせる。

 ばし、とルシャの肩をシャクドウが叩く。


「なあ……今夜はおいらの家に来るといいよ。ルシャの爺さんも一緒に」

「え、でも」

「うん。うちのじーちゃん、ルシャの爺さんと飲みたいって言ってたし!」

「おい、ズルいぞ。私が仲間はずれ!」

「ミロクも、来れば?」


 和気藹々とする子どもたち。

 あやめは、ぐっと拳を握る。ルシャの母を見つけてあげなくては。


「じゃあ、僕と鉄夜くんで操作をしよう。祓魔師に遭遇したら、気を引いて……とにかく、対象の保護が最優先だ」

「おう。報酬は弾んでもらうぜ」

「もちろん。それで、あやめさんは……」

「はい!」

「留守番で」


 龍彦が、あやめと目を合わせることなく宣言した。

 留守番。

 ……留守番?

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