一章 4

「さ、昨日も帰還道中に一応聞いたことだがもう一度尋ねようか。葉さん、あんたは家に帰りたい?それともここに残る?まぁどっちを選んだとしても、もう片方の道はほぼ永久に閉ざされる。二者択一ってやつだ」


 ライア達が草原に向かっている最中、シアンと葉はバルフィレム城の中庭で優雅にティータイムと洒落こんでいた。

 シアンはクッキーをつまみながら葉に尋ねた。これは迷イ人が必ず通る質問であり、彼ら彼女らの運命の分岐点でもある。


「もし、ここで帰らない選択をしたら……あたしは一生元の世界には帰れないってこと……なんですよね」

「そういうことだ。大きく分けて理由は二つ。一つは世界の軌道が原因だ。そうだな……」


 そう言って、シアンは持っていた紙に、ある世界で言う太陽系のような図を書いた。そしてその惑星に当てはまる丸をなぞり、言葉を続けた。


「世界ってのは惑星のように近づいたり離れたりしてる。だからあんたがここに来たこのタイミングを逃すといつまた近づくかわかんねぇ。あんたが生きてるうちには来ないかもしれねぇし、来たとしても私達がその時そばにいるかもわかんねぇからってのが一つ」


 これはつまり運が良ければ来年にも帰れる可能性はある。ということだが、残念ながら世界同士の軌道を完全に予測することは現状不可能のため、これはあまりにギャンブルだ。仮に一年後、十年後にその機会が訪れたとて、もう一つの理由が立ふさがる。


「もう一つは、世界どうしで時間の流れ方が違うことだ。例えば、エインスカイで一日たっただけでも別の世界じゃ一年経ってるってことがままあるんだよ。なんつったっけ?浦島太郎……とかいう御伽噺、日本にあるだろ?あれに近いな」

「浦島太郎、よく知ってますね」

「なんか知らねぇけど日本人はよく来るからな。軍務内でもその辺歩けば一人くらい会うだろ」


 そうなんだ、と意外そうな顔をする葉。何人か迷イ人が定住しているというのは話したが、歩けば会うレベルでいるとは思わなかったようだ。

 

「で?どうすんだ。さっきも言ったが浦島なにがしになりたくなけりゃ長くても今日含めてあと四日以内には決めて欲しいところなんだけどよ。急かすようで悪いが早い方があんたのためだ」


 世界を超えた己の運命を背負った選択だ。そう簡単に結論づけるのは難しいことぐらいシアンも承知の上。しかし本人のためにも、できることなら今日中に決めるべきだとも思っていた。

 考える時間を与えるつもりで、カップの紅茶を飲む。自分にしては珍しく、砂糖を入れ忘れていたらしい。好みではない渋さにしかめ面をした。


「ひとつ聞かせてください」


 俯いたまま話さなくなった葉が、再び顔を上げる。それは既になにか覚悟を決めたという顔だった。


「昨日も聞いたけど、あたしの弟の話。ここにいる可能性は、ゼロじゃない……んですよね」

「まぁ、そうだな。さっき記録見てみたけど、確かに数年前あんたと同じ七番世界からの迷イ人が来てるはずだ。私らが現場に行った時には既にいなかったから、どこにいるか、誰かが保護したかはわかんねぇけど」


 迷イ人は人身売買や違法研究者のモルモットとして狙われやすい。だから護リ人が直ぐに保護へ向かうのだが、間に合わない場合もある。何せ自由に動ける純血、完全な護リ人は三人しかいないのに対して、門はどこにでも開くのだから。

 数年前、迷イ人保護と門を閉じるためにシアンが現場に向かったが、肝心の迷イ人が誰もいなかったことがあった。時期はあまりあてにならないが、予測段階での接続した世界は一致していた。しかしそれが葉の弟だという根拠には弱すぎる。

 

「…………まさか、それが弟の可能性あるなら残る。とか言わねぇよな」

「えへへ、言います」


 流石にないだろうと思った理由に葉がはにかみながら頷いた。いや別に、それが本人の選択だと言うのならシアンが何かを言うつもりも無いのだが、あまりに不確定な理由だったので思わず盛大なため息をついた。

 

「はぁぁぁあああ、あんた意外とギャンブラーだな。いいか?私はちゃんと言ったぜ?どんな理由であろうと、ここに残るなら元の世界は捨てた気でいろって。理解できてる?」

「できてるよ、大丈夫です。それに、理由は弟だけじゃないんです。元いた世界に残る理由がないってのが一番なので」


 そう言った葉に迷いは無いようだった。ならば何を言ったところで変わらないだろう。せめて彼女がこの選択を後悔しないように。柄にもなくシアンは葉の未来を祈り、再び菓子を頬張った。


「んじゃ、トラリアに連絡してくるわ。エインスカイに住むなら住民登録とか色々必要だからな」


 ちょっと待ってろ、と声をかけ、シアンが席を外す。


一人になった葉はこの先会うことは無いだろう保護者達を思い出し、一度だけ心の中で謝った。


 ☆。.:*

 

「Hey幼女〜落ち着いた?怪我とかは……してないね」

「ずびっ…………ずずっ…………うん。してない」

「よし!何よりだ」

「オレ幼女って言って声かけるやつ初めて見たんだけど」


 漸く天使騒ぎから落ち着いた迷イ人の子供にライアが声をかけた。その声のかけ方に呆れながら、ソラは子供を眺めて感心した。あれだけの天使に囲まれて怪我の1つもしていないのは正直に言って奇跡だった。悪運が強いのだろう。そんなソラを他所にライアが話を進めていく。


「さてと、お嬢ちゃんお名前は?」

「リンナぁ」

「おっけーリンナ。リンナはお家に帰りたい?」

「………………ぐすっ、がえるぅううううう」

「泣くな泣くな、ちゃんと返してやれるから!安心しろよ〜このお兄さんがちゃーんと返してくれるって、本当に!」

「オレかよ」

 

 今回の迷イ人は元の世界への帰投を所望だそうだ。ならば、向こうの世界で大事になる前に返してやるのが1番だろう。それは分かる。だからといってなぜ当たり前のようにソラが門を開ける係なのか。

 

「私門閉じたし。ちゃーんと天使とやり合う前に閉じました〜〜〜〜」

「ああ、そうですか。ったくしゃあねえな。リンナ、家のことをよく思い出して。一番会いたいのは?」

「…………ねぇね」

「よし、ねぇねのことを沢山考えといて」


 護リ人の役目は本来迷イ人の保護ではない。確かにそれも必要なことだが、それ以上に異世界との門を開け閉めすることが仕事である。

 自然現象として開いた門を護リ人が閉じる。閉じなければ、魔法がない世界に魔獣が渡り世界が亡び、未知のウイルスが入り込んで世界が亡びるのだとはるか昔、親たちに口うるさく教えられた。これはエインスカイを『護る』ためなのだと。

 逆に開けるのは迷イ人を元の世界に送り返すため。まさに今である。間違えて別の世界へ送り返してしまっては本末転倒なので、かなり集中する作業だった。ライアが行わないのは方向音痴が災いして変な世界と繋がることが多いからでもある。


「あった、これか……」


 リンナ本人を手がかりにして、彼女の世界のドアノブを見つけ出す。傍から見たら眉間に皺を寄せて宙に手を伸ばしているだけなのだが、確かに見つかった。

 ソラが手を捻ると同時に空間が歯車のようにカチカチと歪み初め、やがて人がひとり通れる程の穴が空いた。 

 その向こうにはどこかの屋敷らしきものが広がっている。ちなみに言うと、ここは見渡す限りの草原であり、本来家の中どころか屋根のひとつも見えない場所だ。

 屋敷の中からは「お嬢様ー!何処におられますか!!」といくつもの声が聞こえる。中にははっきり「リンナ」と呼ぶ声をあった。成功したようだ。


「おうちの人の声!!ねぇねの声もする!」


 声を聞いてパァっと顔を輝かせたリンナを地面に下ろすと一目散に駆け出した。彼女は門を通った先でふと立ちどまりソラとライアの方を向くと、先程の号泣が嘘のような笑顔で、手を振った。


「助けてくれてとってもありがとうございます!!またね!!」

「おー!また、いつか会えたらね」

「あんまりねぇねに心配かけさせるなよ」

「うん!」


 元気な返事を残して、リンナのいた世界が閉ざされた。


「あいつ、お嬢様だったんだな」

「お転婆娘だ、うちの王女とよく似てるわ〜」


 くしゃみでもをしていそうな我らが王女を思い浮かべながら、ソラは再びライアのフードを引っ掴み、報告のため城に戻るのだった。


 ☆。.:*

 

「じゃあ、トラリアの方行ってるから。シアンに顔見せてこいよ、オレも終わったら行く」

「はいはい〜、んじゃあとよろしくね」


 シアンと葉がいる場所の近くまでライアを送り届けたソラは、迷イ人リンナについての報告をするためベルナイース隊の執務室へ向かった。シアン達は中庭にいるらしい。魔力の流れを感じるので、大方シアンが葉に魔法を教えているのだろう。

 シアンが葉を送り返しているという選択肢がないのは、ライアも恐らく葉はエインスカイに定住するだろうと思っていたからだ。ライアはまだ知らないが、事実その通りになっているわけであるし。

 案の定中庭に着くと、シアンが身振り手振りで葉に魔法を教えていた。シアンは基本脳筋なのだから、理屈で学ぶタイプとは合わないだろうに。苦戦している様子を見るに葉は理屈派なのだろう。と、見かねたライアが声を掛ける。


「はいはいハローおつかれさ〜ん、二人とも」

「あ、ぜぇ……ライアさん。……お…………お帰りなさい」

「遅かったな、ソラは?」

「ただいま葉さん、疲れてんね〜。ソラはトラリアんとこ、終わったらこっち来るってよ。それよりさ〜、シアン。さっきから見てたんだけどもう少し教え方どうにかならねーの?」

「見てたんなら声かけろ」


 悪態をつくシアンを横目にライアは近くの椅子に座る。いつから始めていたのか分からないが、葉は既に全力疾走したかのような疲弊具合だった。今まで魔法を創作物としか認識していなかった人間がいきなり自身の魔力使おうとしているのだ、それはそうだろう。

 魔法とはエインスカイの殆どの人間が使う力であり、魔力とはエインスカイで当たり前に生活に浸透しているエネルギーの1つでもある。

 この世界の生物は多かれ少なかれ必ず魔力を有している。迷イ人も例外ではない。逆に言えば、魔力の無い者はエインスカイに留まることが出来ないということでもある。葉のように魔法が想像上の産物である世界でも、その実魔力を持つ人間はいる。そういう人間が己の世界からはじき出されるようにエインスカイに飛ばされてくるのだ。


「だいたいさ〜、いつも言ってるけど私ら初めから魔法を使う人間は、こういう指導に向いてないんだって。し!か!も!ただでさえ感覚で掴む脳筋には土台無理な話だろって」

「なんだお前、いちいち一言多いな。喧嘩か?」

「は〜〜〜〜?事実を述べてるまでですが?」

「ちょ、ちょっと……なんでそんなに空気悪いんですか…………?!」


 ライアの言うことは最もだが、言い方が癪に触ったシアン。一瞬にしてピリついた空気に変わる。



 葉はどうしていいか分からなくなってしまった。原因の中心にいるのは恐らく自分なので。

 (トラリアさん……!助けて…………)


 慌てている間にも双子の言い合いはエスカレートしていき、一触即発の空気だ。昨日から思ってはいたが、飄々と掴みどころのないライアと、直情的且つ短気らしいシアンは姉妹でありながらあまり反りが合わないようだ。ここにはいない唯一葉が他に知っている人間、トラリアに心の中で助けを求めるが来るはずもなく。双子はついに魔法を使う準備までし始めている。

 実の所、シアンの説明は擬音ばかりで何を言っているかあまりよく分からなかったが、彼女の魔力に当てられた葉は魔力を感知できるようになっていた。それ故に、今の双子が魔法を使う直前だと感じ取っていたのだ。


「何やってんだ、アホ二人ぃ!!!!」


 突如中庭に怒声が響き渡った。直後、雷が落ちるような音ともにビリビリと空気が震える。

 葉が思わず瞑った目を開けると、頭にたんこぶをこさえた双子が倒れ、その間にピリピリと帯電している金髪褐色の男がいた。


「ちょっと目を離した隙にすぐこれだ。城内で喧嘩するなっていつも言ってるだろうが、マリーシャ泣くぞ」

「ソラぁ、テメェが一番乱暴だって…………」

「そーそー……自称平和主義者はどこいったよ……」

「なんだ。まだ反省の色がないのか」

「「痛い痛い痛い痛い!アイアンクローはやばいって!!」」

 

 項垂れつつも悪態をつき続ける双子の顔面を掴みギリギリと力を込めるソラに、さすがの二人も両手を上げた。その言葉に満足したのか、パッと手を離した。双子は揃って崩れ落ちた。


「はぁ、ごめんな、うるせえ双子で。迷惑かけたね」

「い、いえいえ!迷惑かけてるのはあたしの方なので……!」

「貴女が葉さんで合ってる?オレはソラ。このアホ2人の幼馴染みたいなもので、同じ護リ人だよ。よろしく」

「なーに二人してペコペコやってんだ、水飲み鳥かっつーの」


 お互いに謝罪を繰り返し、お辞儀し合う様子を寝転がったままのライアが茶化した。そして再びソラに殴られた。雉も鳴かずば打たれまいに。


「葉さんはここに残るんだっけ?トラリアに聞いたよ。それで魔法の使い方習ってたんだろ?確かに、自分で弟くん探すんなら戦えるようにはしておかないと、何があるか分からないからな」

「その通りです。でも、そのぅ、なかなか上手くいかなくって」

 

 お恥ずかしながら……と苦笑いをする葉。


「そりゃあそうでしょうよ。ライアも言ってたけど、オレたちは魔法を初めて使う感覚なんて覚えてないから…………あ!ちょっと待ってろ、さっき適任が暇してたから呼んで来よう」


 言うが早いか、ソラは再び城に戻って行った。ちょうどその時、撃沈していた双子が起き上がってきた。二度も制裁をくらったライアはまだフラフラしているが、自業自得である。


「呼んでくるってあいつ、誰呼ぶ気だよ……」

「適任、適任ね〜。元迷イ人連中のこと言ってるなら海斗、大地あたり?あ、でもあいつらが今暇してるわけないか……。響は論外として、じゃあイヴ…………ないな」


 ライアから様々な名前が出てくるが、多くが馴染みのある響きの名前。あえて元迷イ人の名を挙げているようだが、日本人が多いというのは本当のようだ。

 そうこうしているうちにソラが深紅髪の男を連れて戻ってきた。


「「スザっくん!!」」

「すざっくん?」


 双子に口を揃えて名、というより渾名を呼ばれた男は葉をじっ……と見つめた。なんの感情も読み取れないその表情に、葉は少し居心地の悪さを感じた。双子が呼んだ渾名をつい繰り返してしまったからだろうか。

 そのうち、男は「嗚呼」と納得したような顔をし、こう名乗った。


「お初にお目に係る。バルフィレム国軍、カノ隊隊長を勤める、カケル・スザクだ。先に言っておく、俺には人の顔が分からない。髪型、声、雰囲気で認識するから、髪型や髪色を変えたらすぐには認識できないと思ってくれ」


 彼の言葉はどこか武人らしく、堅い。けれどその瞳に揺れはなく、葉は自然と背筋を正していた。

 

「は、はい。風希葉と申します……。えっと……スザクさん?カケルさん?」

「スザクが家名でカケルが名前だ。そこの双子は語感がいいとかで家名で呼ぶが、基本は名前だな。まぁ、好きに呼ぶといい」


 カケル朱雀スザク。軍の中でも特に戦闘に特化したカノ隊、通称四番隊の隊長であり、本人は元迷イ人である。名の響きだけならば日本人に近いが、彼もまた葉達のいた世界と異なる異世界人だった。


「それで、ソラさん。俺は何故ここに連れてこられたんだ」

「暇そうだったから」

「待った!ソラくん?お前まーた要件言わずに連れてきたのか」


 思わぬやり取りに、ライアが勢いよく口を挟んだ。てっきりスザクは全て知った状態でここに来たものだと思われていたが、実際は何も知らされていないらしい。


「え?言ってないっけ?」

「言われていないはずだが」

「ああ………………すまん!言った気になってたみたいだ」

「そういうとこあるよお前」


 頭を掻きながら苦笑いで謝罪するソラに、黙って見ていたシアンも流石に呆れて口を挟む。言った気になって何も説明せずに行動するのはソラのいつもの悪い癖だそうだ。


「悪い悪い。カケルに葉さんの魔法指導役になってもらええねえかと思ってさ。ほら、カケルの故郷も魔法のないのが当たり前だっただろ?」


 ソラがスザクを選んだのは、どうせ教わるなら元々魔法を使うのが当たり前では無い人間に教わったほうが感覚をつかみやすいだろう。という理由かららしい。勿論、暇そうだったからと言うのも間違いではないが。


「そういうことなら承った。暇なのは事実だからな。」

「暇なの?カノ隊。本当に?」

「本当だ。今は戦争がないからな」


  スザクは迷いなく頷いた。その様子に、葉は少し目を見開く。こんなに簡単に話が進むんだ……と。さらにその後の「戦争」というワードに慄いた。ここは自分がいた世界ほど平和ではないのだと知らされた気分だった。


「にしても何故エインスカイに来て間もない迷イ人が魔法を?興味か?」


 魔法が使えなかった人間が己も使えると知って、その特訓を始めるのはよくある話ではあった。しかしそれを来界翌日から行う程余裕のある人間はなかなかいないため、スザクはつい疑問に思った。


「あ、いえ、それもあるんですけど……そうじゃなくて」


 どこから話したものかと言い淀む葉に、シアンが助け舟を出す。


「葉さんは弟を探したいんだと。じっとはしてられないから自分でな。そうなると自衛手段は必要だろう?」

「成程。理解した。要は一人でもこの世界で身を守れるようにすればいいんだな?」

「そういうことだ。頼めるか」

「問題ない」

「よ、よろしくお願いします!!」


 葉はこれから師匠となる男に、深く頭を下げた。すると、ライアがニコニコしながら葉の肩を組む。その勢いに思わずよろけそうになったが、きちんとライアに支えられた。


「やったな、葉姉!こいつは軍内部でもタイマンならトップクラスの強さを誇る。指導を受ける機会なんざ滅多にないんだ。ラッキーだぜ、本当に!」

「そ、そんな人がわざわざ……。葉姉って?」


 先程まで「葉さん」だった呼び方がいつの間にか変わっていた。不思議とライアの口から姉呼びされることに違和感は抱かなかったのだが、それはそれとして疑問は残る。そもそもソラを含めた三人は同い年くらいと思っていたが、どう見ても年上のスザクにさん付けで呼ばれているあたり立場と実年齢がよく分からない。

 葉の問いを聞いたライアはとぼけるように返答した。

 

「んぇ?いやだって〜、いつまでもさん付けって堅苦しいっしょ?これから長い付き合いになりそうだし、お互いフランクにいこうぜ。葉姉ってのはま〜、語感が良かったから?嫌だった?嫌なら止めるけど」

「い、嫌ではないですよ、ちょっと驚いただけで」

「あはは!敬語もやめやめ。私らに敬語使うやつはほとんどいないし!!言ったろ〜?フランクに!」

「はい!あ、違うか…………うん!」


 このやり取りをもって、漸く葉のエインスカイでの暮らしが幕を開けたのだ。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る