第4話 初めての初心者三人チーム
翌朝、私たち三人はギルド近くの食堂に集まった。ロクス君とウナちゃんは昨日のジャイアントヌシの素材でおそろいのパイルスピアを作り、アタシはスピリットハンマーを作っていた。
イラズ「ほら、やっぱり…ロクスと私は余った素材で腕を作ったけど…。」
ロクス「うん…やっぱりといえば…ウナちゃんは兜を作りましたね…。」
ウナ「何かおかしいですか?兜のほうが能力が多いですよ!」
イラズ「それはそうだけど…火属性攻撃強化と火耐性って、珠獣や珠龍の弱点が火属性の時には…火耐性はいらないでしょうね…。」
ロクス「うん…火に弱い珠獣や珠龍が火を使って攻撃してくる可能性は低いね…。これから新しいモンスターが出ても、何か納得する理由がない限り、そういうモンスターはまずでないだろうね。」
イラズ「それから、はじめに兜を続けて二個作るのは…。」
ロクス「そうそう、オレらは前に作った脚をまた装備して防御力を上げてきたけど…ウナちゃんが作ったのは兜二個…。」
ウナ「ひぇー、頭を二個にしなきゃ!」
ロクス、イラズ「そっちかい!」
私たちは食堂で朝食をとり、食べ終えたあと、その席に座ったまま、今日の予定を話していた。
イラズ「朝食の前、特設組合の依頼をざっと見てきたけど、昨日のジャイアントヌシの素材で作った火属性武器が有効な依頼ではルフルフの依頼が多かったわ。」
ロクス「ビーズファイターの基本として、イベント中とかでたくさんいる珠龍や珠獣を選ぶべきなんでしょうね。」
ウナ「目の前の珠龍や珠獣をやっつけるだけじゃないの?」
イラズ「そうよ、特に昔龍なんかは絶対戦いに行っちゃだめよ!」
ロクス「基本、特設組合から依頼が来ていたら、その依頼の珠龍や珠獣を倒し行くんだ。」
イラズ「この前、余分にやっつけてはいけないと、指導されたでしょ…。私たちファイターもこの大自然の中に大自然のモノを利用して生きているのよ…。やっつけ過ぎて珠龍や珠獣が絶滅してしまったら、我々ファイターも困るのよ。」
ロクス「特設組合にある依頼は特設組合の管理下のものだから、絶滅につながることはまずないはず…。」
ウナ「ふーん…なんとなく、わかった。」
イラズ「やっぱり、わかってなかった…。」
ロクス「今覚えたらいいさ…。」
ウナ「ルフルフの依頼が多いなら、ルフルフをやっつければいいわけね…。」
ロクス「依頼が多いときは、イベントだったりするけどね…。言っておくけど、オレらの世界の話ではなかったぞ!」
イラズ「そうね、私たちはイベントとか言って、ダウンロードが追加されるだけで、基本依頼なら何を狩りに行っても大丈夫だったわ。」
ウナ「アタシは昔から、細かいことは苦手なのよね…。」
イラズ「ウナちゃんは腕がいいから、私たちもいろいろ助かってるから、別に問題ないわ。ただ、見つけたから全てをやっつけるのはやめてね。」
ロクス「まぁ、珠龍がはじめに噛じろうとするのは、いつもウナちゃんだし、オレも助かってます!アハハハハ…。」
ロクス君がふと視線を戻すと私たち女子二人が鋭い目で見ていた。
イラズ「ちょっと、ロクス君!その言い方はないでしょ!」
ウナ「そうですよ!今日はロクスさんが先頭を歩いてください!」
ロクス「あっ…すみません…。今日は私が体を張ります…。」
前に注意されたあとなので、ロクス君は思わず弱気になってしまった。
アタシは特設組合に入り、依頼を受けるため列に並んだのだが…この前、受付嬢を困らせていた痩せこけたライトシューターのファイターの番のまま、案の定、受付嬢を手こずらせていた。
イラズ「早くしないかな…みんな待っているのですけど…。」
老人ハンター「あぁ~、最近毎朝アイツで止まるらしい…。」
イラズ「そうなんですか?」
ガタイのいい大剣使い「受付嬢の姉ちゃんもルックヤックが減ってきてるから、他をやってくれと上から言われてるらしいぜ!」
イラズ「あらら…大変ですね…。」
背の高い弓使い「練習練習って言うけど…本当に効率のいい練習になっているのかな?」
ここにいた者たちは皆受付嬢との話を聞いていた。
痩せこけたファイター「………一発も外したんだ!一発・も!だぞ!」
受付嬢「ルックヤックにそれだけ当てられたら、もっと難しい珠龍もこなせると思います。是非!次は今多くなっているドンギャグラスをお願いします!」
痩せこけたファイター「ダメだ!ダメだ!ダメだ!ダメだ!名ビーズファイターは外しちゃいけないんだ〜ッ!」
受付嬢「当てること、でなくて、やっつけることが重要なのです。」
痩せこけたファイター「いいや!違う!このまま先に行ったら、弾切れになって、時間オーバーになる未来が見えてしまう!」
受付嬢「それでも、前進することで、きっと強くなって、そうならない未来が見えます!」
痩せこけたファイター「いいか!一回外すと!弾切れに一歩近づくんだ!」
受付嬢「違う珠龍をやっつければ、違うスキルが付いた装備が手に入ります。そして、だんだんより強力な装備が手に入ります。」
痩せこけたファイター「そのためには、一発も外しちゃいけないんだ!」
受付嬢「少しなら、外してもやむ得ません!」
痩せこけたファイター「オレはいい装備を使うに相応しいファイターにならなきゃいけないんだァ〜ッ!」
上を向いてギルド中に響き渡る大きな怒声をあげた。受付嬢はしばらく下を向いて、
受付嬢「はぁ〜…。」
と大きなため息をつくと、一枚の依頼の紙を渡した。痩せこけたファイターはまた雑につかみ取ると、風のように特設組合から走り出ていった。それからは順調に列が短くなっていった。
アタシはギルドからもらったルフルフの一枚の依頼の紙を手に持ち、二人の道案内をして雪原を歩いていた。もちろん前を歩いているのはロクス君である。
イラズ「そこの交差点を右!」
ロクス「静かだな…なんか、小型珠獣もいないけど…。」
ウナ「小型がいないから、大型もいないとは聞いたことありません!」
イラズ「シーッ!音に敏感なモンスターなんだから…。」
そのとき、私たち三人の背後から静かに静かに忍び寄る大きな影があった。一番後ろを歩くウナちゃんに忍び寄り後ろから何かを何度もカミカミした。
ウナ「それやめて!」
大きなモンスターが噛みついたのはウナちゃんの盾だった。
ウナ「今朝、ガッツリ肉を食べてないからって甘く見ないでよ!」
と、カウンター砲撃を頭に押し込んで撃った。
イラズ「コイツがルフルフよ!」
大きなモンスターは白く流線形の体をしていた。
ロクス「通常型で全弾撃ち込まれるのが一番痛いんだ!」
と、押し込んでから全弾撃ち込んだ。
イラズ「アタシの友達に気安く近寄らないで!」
と、スピリットハンマーの大振りを頭部に連打、ルフルフはたまらずダウンした。
ロクス「ヴッ…。」
イラズ「どうしたの?アナタも殴りなさい!」
今度はウナちゃんも残弾を撃ち込んで、そのまま斬撃杭砲へつなげていた。ウナはリロードしながら、
ウナ「何もたもたしてるのですか?」
ロクス君はパイルスピアをガチャガチャしていたが、
ロクス「弾切れでした…。」
と、リロードした。その時にはルフルフは起き上がっていた。
ロクス「なんか損した感じ…。」
ルフルフが咆哮をした。ロクス君とアタシは防煩がなかったので、その大きな轟音に思わず耳を塞いだ。
ロクス「うわっ!うるさっ!」
イラズ「ひゃー!」
ウナちゃんは咆哮を盾で防いだ。
ウナ「これが、咆哮なの?すご~い!」
ロクス「そうだ…。咆哮は盾で防げたんだ。」
イラズ「前進、攻撃以外の行動になる盾なんて、アタシは持たない!何でも避ければってなっちゃうから…アタシは全てを攻撃力にする!」
ルフルフは大きく後ろへ飛んで距離を取った。私たち三人は前進して一気に距離を詰めると真ん中にいたウナちゃんはルフルフと正面に向かい合った。ルフルフは首を長くして覆い被さってきた。
ウナ「必殺技ゲージは戦闘中にも溜められるのよ!」
と必殺技を撃った。ルフルフは覆い被さったものの、逆に大ダメージを受け、後退りした。
イラズ「よし!こっちも!」
スピリットハンマーを大振りして当てたが、あまり効いてないようだった。
イラズ「この珠龍には打撃はあまり聞かないのね…。」
ウナ「私たちが頑張らなきゃね!」
ロクス「こういう所で立ち止まることがないように…」
斬り上げて叩きつけて全弾撃ち込み、
ロクス「みんなで弱いところを…」
続けて薙ぎ払うと斬撃杭砲を撃った。
ロクス「補い合うんだ!」
大ダメージを受けたルフルフは力尽き倒れた。
ウナ「やった!今回はゲージが無くて、最後を取れなかったけど、勝ったからいいわ!」
イラズ「剥ぎ取りましょう!」
ロクス「おぅ!」
目を輝かせて剥ぎ取りだした三人…ロクス君が右手に持ち、天にかざした青い珠龍玉のかけらを一瞬止まって二人は見ていた。
イラズ、ウナ「おめでとう!」
ロクス「やったぜ!ようやく手に入った!」
その夜、特設組合の近くの食堂で、私たち三人は夕食を食べていた。
ガッツいて食べるロクス君とウナちゃんであったが、アタシは途中で食べるのをやめて窓から外を見ていた。
ロクス「食べないなら残ってるガッツリ肉もらうぞ!」
イラズ「いいわ…。あまり食べる気がしないから…。」
ロクス君が手を伸ばすと、ウナちゃんにその手をつかまれた。ロクス君はウナちゃんの顔を見てからアタシの顔を見て手を引っ込めた。
イラズ「もったいないから食べて…。食べる分だけはじめにより分けたから、口はつけてないわ…。」
ロクス君は戸惑って、アタシとウナちゃんの顔色を交互に何度も見た。ウナちゃんは手振りで食べるようにクロス君へ伝えると、ロクス君はフォークを残っているガッツリ肉にブスリを刺して取り上げると、自分の皿へ持っていった。ロクス君が貪り食う中で、
イラズ「あ〜ぁ、失敗したな…。」
と一言、ウナちゃんは心配そうに
ウナ「どうしたの?」
イラズ「武器の選抜…火属性のスピリットハンマーは使い所はあまりなさそうね…。珠龍玉かけらもアタシが最後になっちゃったし…。」
ロクス君がグビグビ飲んでいたが、一瞬途中で止まったが、また飲みはじめ、今度は最後まで飲み干すと、大きな声で話しはじめた。
ロクス「このくらいのことはいいじゃないか!オレたちはイラズちゃんが珠龍玉のかけらを取るまで、最後まで協力するよ!」
イラズ「……………ありがとう…。」
ロクス君の力強い言葉に、アタシは少し気分が良くなった。
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