第3話 ウナって美味しいのかな?
翌日の朝、ウナちゃんはギルドへ向かう途中の交差点で、バッタリとロクス君と会ったらしい。
ロクス「ウナちゃん、おはよう!」
ウナ「おはよう!ロクスさんはパイルスピアにしたので、私たちは武器が入れ替わったのね…。前衛をよろしくね!」
ロクス「はーい、ガンバりまーす!」
と、ロクス君は愛嬌を振り撒いた。
ウナ「今日は、ドンギャグラスの素材で作った武器で来いってフューチャーさんが言ってたけど…。」
ロクス「そうだね…。我々ファイターは戦うのが仕事だから、派遣されたところで戦うことだけ考えることだけですね…。」
ウナ「なんか、私たちは脳が発達してないおバカさんみたい。」
ロクス「そんなことはないよ。特設組合の人たちが、どの珠獣や珠龍を狩るべきか、考えてくれるから、我々ファイターは戦うことだけ考えればよくなる。仕事の分担ですよ…。」
ウナ「まぁ、いいか!働ければ!」
お互いに『結構単純だな…。』考えてたみたいで黙っていたらしい、あるとき突然、ウナちゃんは立ち止まった。
ウナ、???「もしかして…。朝帰り…。あなたたちはできてたの?」
ロクス、???「チゲェよ!ちょっと前にそこの角で会っただけやねん!」
ロクス君はふと前を見ると、先輩とアタシが一緒に歩いていたのを見つけた。
三人「アハハ…。なんかハモったね。」
フューチャー「………ほぅ…。」
道が狭いので、私たち四人が一列になって特設組合へ向かった。先頭を歩いていた先輩が今日の予定を話し始めた。
フューチャー「これから毎日毎日ドンドン難しいことをやっていくから、気が抜けないぞ!」
特設組合に着くと、フューチャーは手早く今日の依頼の手続きを済ませ、すぐに目的地へ向かった。
フューチャー「今日のターゲットはジャイアントフナだ!、昨日はその弱点である水属性の武器を作るためにドンギャグラスを狩りに行った。」
ロクス「二日目でジャイアントフナですか?」
イラズ「大型珠龍初級の最強の火属性攻撃をする珠龍ね…。」
ウナ「強いんだか、弱いんだか、わからない言い方しないでください…。」
ロクス「そうか、それで昨日は水属性の武器を作るために…。合理的ですね。」
イラズ「まず、いろんな属性の武器をそろえるんですね。」
ウナ「面倒なときは、力で圧す!覚えとこう!」
イラズ「アナタね、ビーファイの世界では制限時間があるから、弱点属性を考えない大変なことになるわよ!」
ウナ「武器を最大強化すれば、普通になんとかなります!」
イラズ「そりゃ、なんとかなるけど…。与ダメの効率とかもあるし、ギリギリの条件で戦うときの鼻の差で負けたとき悔しいと思わないの?」
ウナ「鼻の差で負けたときは、もう一度挑めば少し上手くなっていてなんとかなります!」
イラズ「どうしようもない差が埋まるかもしれないわよ!」
ウナ「どうしようもない時はアキラメレバ…。」
ふと気付いたらロクスと先輩が並んでこちらを見ていた。
フューチャー「話を聞け!狩りに行くときは弱点属性の武器をなるべく持っていけ!それが十分強化されてないとき、できないときは、十分強化された無属性の武器を持っていく手もある。」
ウナ「無属性の武器が一本あればいいじゃないの?」
フューチャー「同じくらい強化した武器ならば、無属性よりは弱点属性のほうがより高い与ダメが期待できる!」
ウナ「少しの差なら腕でカバーするのは…。」
フューチャー「これからたくさんの珠獣や珠龍の素材が集まるだろう!その素材の使い道として有効である!」
ウナ「そんなことで何時間も悩むよりは寝たほうが…。」
イラズ「ハイハイハイハイ、ウナ、そのくらいにして、あなたの装備はアタシたちが考えてあげるから!」
と、アタシはウナちゃんの兜を指差すと
イラズ「アナタは昨日、余った素材でギャグラスヘルムを作ったんだから、バランス強化は遠距離武器ではあまり役に立たないことに気付いてないでしょ!」
と、今度はアタシとロクス君の脚を指差して
イラズ「アタシとロクスはギャグラスグリーヴを作って水属性強化して、さらに強化して水属性強化が必要なときに長く防具として使う計画をしているのよ!」
ウナ「守るのなら頭が一番大事じゃないの?」
フューチャー、ロクス、イラズ「ハァー…。そっちか…。」
フューチャー「このゲームの中ではそういうことは考えられてない!防具にはそれぞれ異なる補助機能が付いている!その狩りに応じて適した補助機能の付いた防具を選ぶといい!」
ウナ「細かいこと考えないで、しっかり休んで、ベストコンディションで腕でカバーすればいいじゃん!」
ロクス「そりゃそうだけど、ベストコンディションであって、十分な装備で行ったらさらに強くなるだろ!」
ウナ「ヴッ…。」
イラズ「ロクス君、たまにはいいこと言うじゃん。ウナの屁理屈に負けてない…。」
ウナ「屁理屈とは失礼な!」
ウナちゃんが怒って膨れていると、
フューチャー「いいや!両方主張していることは正しい!要は総合力だ!ウナちゃんの言い分も一理ある!突然、難しいことをやってしまい、動揺したまま狩りへ行ってしまったら、ベストコンディションであるはずがない!」
ロクス「そりゃそうだ…。」
イラズ「ウナちゃん、言っておくけど作る装備の相談には応じるけど、最低限することとして、作った装備のスキルは理解してね。」
ウナ「ハーイ!」
ウナちゃんが素直に返事をしたので、三人はホッとしてしまった。
突然、ウナちゃんの周りがスッと暗くなった。
ウナ「あれ?!」
大きな赤黒い珠龍の大きな口が近くにあった。
ロクス、イラズ「ヤバい!」
警戒が緩んでいたので、先手をとったのは赤黒い珠龍だった。ガブリッ!ウナちゃんはかぶりつかれたように見えた、が、そのときにはウナちゃんはすでに必殺技を撃っていた。
ウナ「なんでまたアタシなの?!今日の朝ごはんにはガッツリ肉があったのよ!」
絶え間なく激しい機関射撃の連射に、大型珠龍は少し後退りした。
ロクス、イラズ「あれはウナちゃんのチート必殺技!」
フューチャー「感心したねぇで、お前らも殴れ!」
この言葉にアタシは後ろに回り、ロクス君は頭に砲撃を当てた。
フューチャー「コイツが今日のターゲット!ジャイアントフナだ!」
イラズ「昨日のヤツと違って身軽でやりにくそうなヤツに見えますけど。」
ロクス「しかも、体力も弱体化してない!タフだ!」
ウナちゃんは回避と射撃を続けながら、先輩を見ると
ウナ「オジサン暇なのぉ〜?手伝って!」
フューチャー「ん???!!!ワタシはオマエらが一人前になるのを見届けに来た!ヤバいときしか手は出さない!」
ウナ「十分ヤバいんですけどぉ~!」
と言いながら、そのまま回避と射撃を続けていた。
ロクス「まだまだだ!耐久力高っ!向こうの回避率もバカにならない!はっきり言ってドンギャグラスよりやりづらい!」
反対側にいたイラズは大きな声で、
イラズ「ウナ!聞いて!このオジサンはワタシたちが一人前にならなかったら、毎日毎日ストーカーのようについてくるのよ!」
フューチャー「!!!」
フューチャーが思わずビクッ反応した。それを横目に見たロクスは背筋を伸ばして先輩のような格好をして、
ロクス「ほぅ…。」
と、ニヤけた。
ウナ「ストーカーはイヤだ!」
ジャイアントフナが迫ってくるところでウナが引き金を引いたが弾が切れていた。ジャイアントフナはそのまま突進してくる。ガブリッとかぶりつかれる寸前にウナは華麗にかわした。ガチャリと一発弾が込められた。
ロクス、イラズ「あれはウナちゃんのチート技、ギリギリ回避!」
ドンッと一発!ジャイアントフナの顔面に当たり、少し怯んだ。そこへアタシが後ろから帯付き手刀を上に飛ばして刺さったところから、その帯に捕まりそこからさらに高く飛ぶと強烈な斬撃とともに降下して尻尾へズバッと強く切りつけた。ジャイアントフナは尻尾を切り落とされてダウンした!
ロクス、ウナ「イラズさん、それはチートです!」
フューチャー「そんなことは後にしろ!そのままお前らも殴れ!」
アタシは剣型に切り替えて後ろから切りまくっていると、ロクス君はウナちゃんと一緒に頭を攻撃した。
ジャイアントフナはアチコチ破壊されながらも、ボロボロで立て直して立ち上がったが、怒り心頭でブチキレていた。前より激しく暴れまわるジャイアントフナに苦戦する三人。ロクス君とアタシはなんとか回避しながらも少しずつ削って行くのに対して、ウナちゃんはしばらく回避だけを続けていた。そして、ジャイアントフナが限界に達したと見たウナちゃんは二回目の必殺技を『機関射撃』撃ったのだ。ジャイアントフナは堪らず力尽きた。
ロクス「うわぁ…。また最後をとられた!」
イラズ「…。」
フューチャー「よし!マニュアル通りに剥ぎ取れ!」
四人は屍から素材を剥ぎ取った。ウナちゃんの剥ぎ取った素材の一つに見慣れない青く輝く丸いビーズは宝石のようなものがあった…。他のものをカバンに入れると、大切そうに両手でフューチャーの前につき出した。
ウナ「この青色の宝石みたいなものはなんですか…。」
ロクス君とアタシも不思議そうに見るなか、
フューチャー「いいものを手に入れたな!コイツは珠龍玉のかけらだ!」
イラズ「これが珠龍玉のかけらなの…。キレイ…。」
ロクス「おめでとう。最高のレア6素材だよ。」
ウナ「ありがとう…。」
私たち三人はしばらく黙りこんだままウナが両手で持っている珠龍玉のかけらを見つめていた。
目的を果たし特設組合へ戻って報告したあと、私たち四人で夕食をとっていた。その食事中で何か疑念があったので、アタシはウナに聞いてみた。
イラズ「ねぇ…。ウナ、アナタは珠獣のHPが見えてたんじゃないの?」
ウナはキョトンとして、
ウナ「普通に見えるんじゃないの?」
そこへロクス君も入ってきて、
ロクス「いや、オレにも見えない…。普通は見えないんじゃないの?ねぇ、先輩…。」
フューチャー「ん?オレはそんなことには干渉しない!」
というと、ジョッキをグビグビ飲みはじめた。
イラズ「今まで私たちは見えなかったのよ…。必殺技ゲージが溜まったからって、最後の一撃で倒せるまで回避しないで!そうやって最後の一撃を取って一人で倒した気になられると腹立つわよ!」
ウナ「そう言われても…。ワタシは斜め移動ができないし、帯付き手刀もないし、回避確定もないよ…。」
ロクス「回避確定って、必殺技スキルがあるだろ!あれ一つでそうとうなチートですよ…。」
イラズ「ロクスはワンタップでいろんな狩り技が打てるのがチートよね…。」
ロクス「それを言ったら、イラズさんの入れ替え技のほうがやりやすいのじゃあ…。」
イラズ「あら?ワンタップほど簡単じゃないわよ…。」
ロクス「レイアウトがタッチパネルだから、タッチパネルに触れただけで誤作動しますよ…。」
ウナ「二人ともそのくらいにして!」
フューチャー「そうだ!過去のことをあぁだこうだ言っても何もはじまらん!」
ウナ「もしかして、先輩はHPとかは見えるんですか?」
先輩はジョッキを取って一口飲むと、
フューチャー「オレはお前らを見に来ているだけだ!これからはいいものは受け継いで、悪いものはいいものと交換するんだ!」
ロクス、イラズ、ウナ「……。」
フューチャー「さぁ、食べろ!動いたあとの食事が一番効果的だ!」
ロクス、イラズ、ウナ「……。」
フューチャー「食わねぇなら、オレが全部食うぞ!」
と言い、隣のロクス君のガッツリ肉を取ろうとすると、ロクス君はお皿ごと上に持ち上げて回避して、
ロクス「言われなくても食べます!」
と一言、周りを見たら私たち二人の女子もおしとやかに食べていた。皆食べ終わって先輩が全員の食事代を払ったかのようにみえたのだが、ロクス君だけは店員に呼び止められ、食事代を請求された。
ロクス「あれ?先輩、オレの代金は払ってないのですか?」
と、フューチャーを呼び止めると、
フューチャー「今日はお前だけ自腹だ!」
と後ろを向いたまま返した。
ロクス「え?女子も男子も研修手当ては同じなんですけど…厳しくないですか?」
これに対して先輩はふりかえって、背筋を伸ばすといつものように、ロクス君が自分を真似したように、立ちながら、
フューチャー「ほぅ…。……今日のお前の態度の問題だ!」
ロクス「え?だってさ、それくらいで…。それに、イラズだってだいぶ踏み込んだことを言ってましたよ…。」
イラズ「アタシはあの場を乗り切るのに必死だっただけだわ…。」
ウナ「ロクスさん、それくらいにしといたほうが…。私たちも見てましたよ。」
イラズ「面白かったけど、先輩をバカにするのはよくないわね…。」
先輩は少しニヤけて、
フューチャー「十分な研修手当てももらっているだろう!よほど素行の悪い無駄遣いでもしてなければ、ちょっと豪華な夕食一食くらいは普通に払えるはずだ!」
ロクス「……はーい…。参りました。」
と観念して、ロクス君は自分の夕食代を払っていた。
フューチャー「教えることはまだまだたくさんある!いちいち言ったことをバカにしていてはこちらも困るからな!」
外へ出るとスッカリ暗くなっていた。間もなく、ロクス君とウナちゃん、アタシと先輩は自宅のある違う方向へペアになって帰っていった。ロクス君は帰り道でしばらく黙って歩いていたが、なにか思い切ったように口を開いた。
ロクス「怒ってるかな…先輩…。」
ウナ「大丈夫、大丈夫!ビーファイの世界はいつでもたくさんのファイターを受け入れられる体制をとっているから…。明日から嫌がらせされるわけじゃないからね…。」
ロクス「…………フューチャーさんがオレらと一緒に行動するのは今日までだからね…。明日から先輩はここの特設組合最強と言われてる元のチームに戻るんだ。」
ウナ「え?そうなの?」
ロクス「だから、最後にしくじっちゃった…。後味悪!」
ウナ「頑張って見返させればいいじゃん。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます