第31話 ごちそうパーティ その1

愚か者共に司法の鉄槌を下し、ようやく身の回りが落ち着いてきた今日この頃。

北斗は自宅にてゴソゴソととあることのための準備を行なっていた。


「んー……俺含めて5人だし、男は2人だけだからどのくらいの量を用意するべきかねえ。いや、探索者ならもうちょっと量いけるか……?どうせ食べ切らなくてもアイテムボックスに放り込んでおけば済む話だし」


あれやこれやと並べているうちにリビングに設置してあるモニターからインターホンの音が鳴り響き来客を告げる。


「お、来た来た。少し待ってくれ」


玄関へと小走りで向かい扉を開ける。

その先に立っていたのはフォルトゥナの4人だった。

今日は完全プライベートで、北斗が用意した食材を使ったごちそうパーティを行う事になっていた。

何故こうなったかというと、時系列的には少し前ではあるがネファストの事についてや巻き込み炎上をしてしまったことを申し訳なくなった北斗がお詫びをしたいと申し入れたことを発端としている。

勿論最初理人達は断固としてお詫びを拒否していた。

どちらもフォルトゥナが無関係ではない上に北斗に非は無いと思っているからこそなのだが、北斗からすればそうはいかず。

年下の、本人たちからすれば不服かもしれないが庇護すべき相手を巻き込んだのだからお詫びをすべきという考えが北斗にはあった。

お詫びをすべき、そんなものはいらないというやりとりがあった末、結論として出たのがダンジョンでドロップした食材でプチパーティをしよう、というもの。

当初北斗としてはそれでは足りないとあれやこれやを渡そうと画策していた。

のだが……それらが全て現状のフォルトゥナでは手に入れることすら不可能な下層エリア以降の素材、つまりは最低でも7〜8桁はくだらない代物を渡そうとしていたのだから理人達にとってはたまったものではない。

さらに抗議した結果、今日のパーティに収まったのだった。


「今日はお招きありがとうございます。すみません、本当……僕達が巻き込んだも同然の事なのにこんな……」

「坊ちゃんらが気にしなさんな。そもそも俺が勝手に巻き込まれにいったも同然だし、炎上については完全に俺が巻き込んでるんだから。このくらいはさせて欲しい」

「でも……東雲さんは、悪くないのに」

「そうですよ!というか、本当、お詫びなんて気にしないでください!!!」

「聖奈の言う通りです。むしろ、私たちが何かお詫びをお渡しすべきなのに」


口々に言い募る4人に、北斗はカラカラと笑いつつそれぞれの頭を優しく撫でてやる。


「だから、年下が気にしなさんな。俺がお詫びをしたくてしてるだけなんだから、理人達は大人しく受け取っていればいいんだよ。ほれ、中に入った入った」


北斗は苦笑しつつ4人を中に招き入れリビングへと案内する。

中へ足を踏み入れた4人を待ち構えていたのは、用意されていたのは巨大な肉塊を筆頭とした大量の食材達。

目を白黒とさせている理人達を見てクツクツと喉を鳴らして笑いつつ、食材の前へと手招きする。


「すまんねえ。理人達がどのくらい食べるかわからなかったから用意しすぎたかもしれんが、全て味は保証する。……あ、ちなみに値段は抑えたから安心しな。素材の時点であんなに拒否られておいて深層だったりの素材は用意してないから」


まあ、下層エリアレベルはあるが……。

北斗の心の声などつゆ知らず、その言葉にホッとした様子を見せる理人達。

そんなに安心されるとちっとばかし複雑だが……まあ、俺の金銭感覚がおかしくなっているのも否定は出来ないからねえ。

この子達からすれば今日用意したものも高いって思われるかもしれんが……これより安くすると異常に固かったり美味しくなかったりするものもあるからそこは妥協してもらおうかね。


「好みがわからないってのもあったから、簡単に焼いて食べたり生のまま食べれるものを中心に用意してるから好きなだけ食べてくれな?」

「あ、ありがとうございます!!こんな大きなお肉の塊、初めて見ました…」

「そうか、見た事ないものもあるよねえ。なら、簡単に説明しながらのんびり食べていこうか」


まずは、と理人が興味を示した肉塊を手に取った。


「これは『ミノタウロスの肉塊』っていう、なんともまあそのまんまの名前の食材だよ。ただ不思議なことに名前は洋風なのに味としては和牛に近いっていう謎仕様なんだよねえ…。焼いて食べてよし、時間があれば煮込み料理に使ってよしの優秀な肉だよ。まあこの量を全部食い切るのは無理だろうから、食べれそうな分切り分けるな」


他にも食材があるから、と大きめのステーキ肉程度に切り分け、さらに食べやすい大きさに切り分けてから用意しておいたホットプレートで焼き上げていく。

本当はプライパンとかでーとか、もっと最適な焼き方もあるんだろうが美味しく食べれればそれでいいってのが俺の考えだから許して欲しいねえ。


「ほい、どうぞ。俺的には味は松坂牛に近いのかなとは思う。柔らかい肉質で、口の中でとろけて脂身も甘みを感じるから美味しいよ」


皿に盛り付けて4人に提供すれば、恐る恐るといった様子で口に運ぶ。

口に入れた瞬間、目が輝いたので口にあったかどうか聞くのは愚問というものだろう。


「美味しい!僕、こんな美味しいお肉初めて食べました…!」

「口の中でとけた……ううう、こんな美味しいの食べたら普通のお肉に戻れなくなるじゃないですかあ…!!」

「うまうま……いいお肉の脂身が甘いって本当だったんだ」

「本当!…なんだか高級焼肉店に来た気分です」

「そりゃ良かった。おかわりが欲しかったらいくらでも焼くから言ってくれな。それとも他のも食べてみるかい?」


高級和牛さながらの肉は惜しかったのかしばし迷っていたが、他の食材も気になったらしく首を縦に振っていた。

こんなに目をキラキラさせてみられたら期待には応えたくなるねえ。


「んじゃ、次はこれかねえ。マグロ……に見えるかもしれんが、前に水琴とコラボした時にもチラッと出てきたと思うが、邪眼魚の身だねえ。言うなればマグロ擬き。今日は普通のマグロなら1本のマグロからじゃほんの少ししか取れない部位に該当するものも用意してみたよ。まずこれが頭部の目の上にあたる脳天って部位。……あはは、名前だけ聞くと嫌煙しがちだが、別に脳みそってわけじゃない。他の呼び方だとツノトロとか呼ばれてるかな?味としては大トロとか中トロみたいに脂がのっていて、でも口どけはつるっとしていてくどさもなくてさっぱりしてる。トロと赤身のいいとこ取りみたいな部位だね。先に少し食べてみる?」


合う合わないもあるだろうから、と小皿に少量乗せて出してやれば、未知のものだからか恐る恐るといった様子で口に運ぶ4人。

次の瞬間にはおかわりと言わんばかりに小皿を差し出してきたものだから、北斗は肩を震わせて笑いを堪えていた。


「そんなに勢いよくせがまんでも量はあるから安心しな。それに、他の部位もあるから食べ比べてからどれを食べるか決めていいんだぞ?お次は中落ち、マグロの中骨に残った身の事だねえ。テレビとかでスプーンで身を削って食べてるとこみた事ないかね?あれだよ。しっかりした旨みを感じれるから俺は好き。本当はユッケとかにしたりネギトロにして食べてもいいんだけど…せっかく新鮮な状態で保管してたから、今日はこのまま醤油をかけてどうぞ」


食べた時の感想は言うまでもなく、その後も大トロ、中トロといった王道部位や尾(テール)をステーキにして食べたりとマグロ擬きを満喫した。

そろそろ次の食材をと用意している横で、汐恩は特にツノトロを気に入ったらしく口いっぱいに頬張っていたので北斗はまた肩を震わせる羽目になったが。


「ちょっと味が濃いものが多かったから、ここいらで少し軽めのものを。稲妻牛は前にチーズを紹介したけど、稲妻ミルクってのもたまにドロップするんだ。それから作ったモッツァレラチーズで作ったカプレーゼだよ。口に合えばいいんだが…」

「!!!これ、ものすごく美味しいですよ!」

「いや、手作りって……私より女子力高くない……?しかもこんな完璧なチーズ作れるとか……」

「チーズもちもち、ちょっと甘いのと酸っぱいのが良い」

「本当に美味しいです。少し酸味は感じますが、なんだかミルクの塊を食べているようで私は好きです。トマトとオリーブオイルにも良く合っています」

「そりゃよかった」


この後余程チーズを気に入ったらしい汐恩がチーズだけを抜き取って食べようとしていたので理人達が必死に止める光景を見て、とうとう我慢出来なくなった北斗が爆笑したのは言うまでもない。














あとがき


正月休みだからと大夜更かししてこんな時間に投稿。


飯テロ出来てるかすらわからない飯テロ擬き回です。

なぜか汐恩ちゃんが食いしん坊キャラに大変貌を遂げましたが、こういうキャラ好きなので書いてて楽しい。


何話かご飯パート続きますが、頑張って美味しそうと思ってもらえるように表現頑張ります。

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