青春終わり人生始まり

@Kenkenbb

第1話 月曜日

例えるなら女の子の乳房を揉みたくて仕方なかったような。そんな青春が終わり、一週間に五日働き始めた。

 本日は六月一日、社会人にとって祝日も希望もない、雨ばかり降るじゅうーんの始まりである。六月ということは、私は大学を卒業してから二ヶ月が経ったということか。体感スピードえぐい。一週間が一時間にしか感じない。このままではすぐ三十歳、四十歳、いや死ぬ。助けてお母さん。そんなこと考えてる私の名前は田所りんと申します。性別男。23歳。夢も希望もやる気もない呑気さだけ持ち合わせてる実家暮らしである。

 朝六時半起床。起きなさーいと母が起こしてくれた。さすが我が家最強の目覚まし。強力なスヌーズ機能を搭載している。もっと可愛い声で起こしてくれればモチベも上がるのに。贅沢言い過ぎか。朝起きたら朝ごはんがいつも用意されてある。ありがたき幸せである。今日の朝ごはんは白米と味噌汁とミートボール。ミートボール丼にして食べるのが最近の私のスタイルである。これこそ家庭の味だなあ。五分で完食して、着替えたり歯磨きしたり髪整えたりささっと身なりを整え、7時20分いざ出勤いたす。弟は大学生。あと5時間は寝るだろう。羨ましいやつめ。これだから社会を知らないガキは。行ってきまーすと言い放ちバス停に向かう。わたしの職場は田舎で職場に駐車場もないためバスで1時間ぐらいかけて出勤する。バス停に向かう途中いつも同じ女子高生と同じサラリーマンとでくわす。わたしは心の中でこのメンツを出勤アベンジャーズと呼んでいる。ちょっと気分が上がるのだ。出勤アベンジャーズとバスに揺られ、ついについた。我が職場。

 私の職場には二十人くらい社員がいる。二十〜五十代の人が活躍中!アットホームな職場である。

 中に入って自分のロッカーに行くと40歳には見えない(悪い意味で)でお馴染みのsさんが死んだ顔で出勤していた。このsさんには借りがある。あれは忘れもしない。一ヶ月前だ。私が慣れない仕事に追われてメソメソしているとsさんが横にひょいっとやってきた。アドバイスでもしてくれるのかと期待した私に向かって一言。仕事にセンスがないよね笑と言い放ったのだ。センスもなければやる気もない。よくぞ見抜いたなばばあ。それ以来、私はsさんが苦手である。

おはよーーっと同期のAもきた。今年入社したのは私とAの2人だ。Aは私以上に仕事にやる気がない。Aのおかげで、別に全然やる気ない私の社内評価が勝手に上がっていくぐらいだ。そんなAとはもちろん気が合い。割りかし仲良くやっている。Aと帰りたい帰りたい言いながらオフィスに向かう。そのあと続々と死んだ顔たちが出勤してきた。さてと働くか。


 働きたくない。働きたくない。帰りたい。と午前中は思っていたが、午後にはすっかり慣れて働くモードに切り替わっていた。死んだ顔で出勤してきた先輩方も今は半分生き返っている。ゾンビみたいな感じだ。やはり働く上で一番辛いのは出勤する事であろう。新入りの私は注意されてばかりだ。褒めて伸びるタイプであることを皆に伝えるべきか悩む。特に面白いこともなく十八時になった。私とAは新入りでありながら真っ先にお先に失礼した。

 帰ろうとしているとAが会社の洗面所でめちゃくちゃ歯磨きしていた。これから歯医者に行くらしい。虫歯でもあるの?と聞いたら、一年ぐらい一個の歯を掃除しに行っているらしい。流石にその歯医者掃除下手すぎない?と思いながら爆笑した。

 帰路にコンビニに立ち寄った。社会人になって驚いたことがある。それは、酒が驚くほど恋しくなったことだ。学生の頃はそうではなかった。酒は好きではあったが飲まなくたって楽しい日々を過ごしていた。今はどうだ。毎日飲みたい欲望に駆られ、アル中である父の遺伝子を受け継ぐ一歩手前である。そもそも酒は強い方ではあったがそんなに飲む人間ではなかった。しかしながら社会人になって毎日少量嗜むようになった。酒を飲まなきゃやってられへんねん。レモンサワーを2本買い、家に着いた。まんまとアルコール依存症予備軍となった私はすぐに一軍になり軍曹に昇格するだろう。そんな恐怖心にかられながら毎日酒を堪能するのであった。

帰ると母がカレーを作ってくれていた。本当に実家暮らしとは私から生活力を奪っていく。ありがとう母さん。まだまだすねをしゃぶらせてください。月曜日も長いようで早かった。

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