GIFTED
136君
プロローグ
プロローグ
『第一部隊より本部。地盤浮上の鎮静化を確認。直ちに作戦を開始します。』
ある日、青い星アラエナは重力を失い、地盤が浮上した。それに乗って浮上した都市は数知れず。それぞれは空中に浮かぶ島となり、国境があやふやになってしまった。
『敵国は元は高い軍事力を武器に世界を支配していたアメリア王国だ。十分警戒するように。』
『了解です。総隊長。』
アラエナは元はアメリア王国という国が覇権を握っていた星。その王国は地盤浮上によって分断され、国力を失ってしまった。となると、今まで虐げられていた国は王国に復讐をするのは考えるにたやすいことだ。
アラエナはみるみるうちに戦火に包まれ、星のあらゆるところで戦争が起こった。わずか二日間の戦争で滅んだ国家は8つ。消え去った島は数知れず。アメリア王国も滅び、王家は赤い空を逃亡することになった。
アメリア王国という大国が滅んだにもかかわらず、戦火はまだ止まない。
『島の地盤を壊せ!』
『誰一人として逃がすな!』
『我が国の領土のために戦え!』
飛空艇から放たれる無数の砲弾。着弾したところから島は崩れていき、やがて地図から消え去る。塵となった島は、人々とともに奈落へと落ちていく。
『島を壊してしまっては、我が国の領土となりませんが?』
『構わん。その空域が我々のものになるだけでも価値がある。』
ほんの数日前まで平和だった星が嘘みたいだと感じれるほど、そこには戦いしかない。まるで地獄だ。
『神様、この戦いを終わらせて下さい。』
ある者は願った。
『もう、殺してくれ。』
ある者は自らの命を諦めた。
『こんなことはしたくなかったのに。』
ある者は自らの行いを悔いた。
『誰でもいい、誰でもいいから、この世界を、この時代を終わらせてくれ。』
そしてある者は、救世主を求めた。
誰も望んでいなかった世界。何かに縋ることしか出来なかった人々の願いを叶えるように、少年たちは現れた。
『1時の方向、所属不明の飛空艇を確認。どうしますか?』
『落とせ。我々の邪魔になるかもしれない。』
『はっ!』
攻め込んでいた軍隊は、突如現れた飛空艇に砲撃を開始する。射程的には確実に届く距離だ。しかし、放った砲撃は悉く、飛空艇に届く前に爆発する。
『対象、損害なし。もう一度、砲撃を……ひ!人が飛んできています!』
『人が飛んでいる?そんなわけあるか!』
この飛空艇のリーダーと思わしき大柄の男が、部下の望遠鏡を奪って覗き込む。そして目にすることになった。何もつけず、空を蹴って飛んでくる1人の影を。
『あれは……なんだ?とりあえず撃て!命中させて問題ない。銃を扱える者は斉射!』
指示を出し、部下はそれに従う。しかし、攻撃は一切通らない。まるで、その少年との間に壁があるかのように。
ある程度近づいたら、少年は刀を抜いた。雨のような砲撃を全て防ぎながら、何もない空を踏み込む。そして、消えた。
『どこだ?』
男は辺りを見回す。すると、さっき居た方とは反対側の空に少年は立っていた。
『なぜあの男は空を自由に動ける?新たな兵器か?それとも……』
呟くと同時に、飛空艇が大きく揺れる。揺れるだけじゃない。落ち始めた。
飛空艇は真っ二つに斬られていて、動力部を確実に壊されている。そのため浮くことが出来なくなった艇は、奈落の底に向かって落下を始めた。
慌てふためく部下たちの中、リーダーの男は立ち、空に立つ少年に呼びかける。
『お前らは誰だ?』
少年は笑みを浮かべ、刀を収めた。光が後ろから差し込み、神々しい姿となる。さっきまで吹き荒れていた強い風は、これまでが嘘かのように凪いだ。
『俺たちは連合軍。この戦争を……この世界を変えに来た。』
少年たちが名乗った「連合軍」という名前はたちまち世界中に広がり、各国の軍の攻撃対象になった。しかし、そのどれもが返り討ちに遭い、世界に戦争を始めようとする国家は少なくなっていく。そのおかげで救われた国も数知れず。連合軍という組織は「新たな脅威」から「平和維持のための軍隊」という立ち位置となり、急速に発展していく。
たった8人だった少年たちも、3年ほど経てば300人を超える一軍隊となり、世界各地に支部を置くように。地位としても名誉としても高まった組織は、元アラエナ王国の支援を受けて、その領土に本部基地、そして訓練施設を作った。
――そして30年後
「おいおい、それだけか?」
「あ?まだまだ本気じゃねーよ!」
世界を変えた少年たちと同年代の少年同士が刃を合わせる。一方は空を飛んでいるが、もう一方は足をついたまま。それでも主導権を握っているのは後者だ。
ここは元アメリア王国領オルカナ島。地盤浮上による影響で、周りを小さな島で球のように囲まれた巨大な島。そこに聳え立つ2棟の建物。その中で始まる、少年たちの物語である。
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