第8話 約束

 お昼休み、僕の教室。

 

「それじゃ、いただきます」


 先輩がいる。


 各自持ってきたお弁当を、向かい合わせにして広げている。

 先輩の合図で食べ始める。


 さて、今日のお弁当は……


「美味しそう。あなたのお弁当」

「えっ?」

「色々あって豪華ね。お母さんが作ってくれるのかしら」


 僕のお弁当が気になるのか。


「姉さんが。高校に上がった時からずっと作ってくれて」


 中学までは給食だったから、高校から。


「お姉さん? あなたのお姉さんっていくつなの?」

「今年から大学生だから、僕の三つ上」


 ちょうど受験シーズンが重なって大変だった。

 主に姉さんに気を遣う僕が。

 

「そう……大学で忙しいでしょうに。毎朝作ってくれるなんて」

「どうだろう。結構時間あるって言ってた。姉さん自身、料理するのが好きだから」


 いっぱい作るから、僕はその消化役。

 姉さんも結構食べるけど。

 

「お料理上手の優しいお姉さんか。いいな~。わたしは年の離れた妹しかいないから羨ましい」


 先輩、意味もなくおかずをつついてる。

 自分が作ったワケじゃないのに、なんだか嬉しい。

 

「先輩の方は誰がお弁当を」

「そうね。いつもは母さんだけど、 気が向いたら自分で作ることもあるわね」


 自分で料理を、そうなのか。


「すごい。先輩は料理が好きだったり」

「好きってほどではないけれど、その時々で食べたいモノを作る感じ。あと妹もいるから、たまに何か作ってあげたりするし」


 そっか。

 美人なだけじゃなくて料理もできるのか。

 妹がいて面倒見も良いみたいだし。

 見えてくる、将来先輩と結婚する人の幸せが。


「なんだったら今度作ってあげましょうか?」

「……えっ?」

 

 今なんて?


「お弁当を作ってあげるって言ったの。お姉さんには敵わないだろうけど、わたしもそれなりには出来るつもりよ。良い機会だから特別に振舞ってあげる」


 そんな、


「先輩が、僕に?」

「他に何があるのよ」

 

 本当に言ってる?

 それってつまり、手作り弁当ってこと?

 先輩お手製の手作り弁当!?

 

「どうする? まあ、聞くまでもないみたいだけど」


 先輩が僕のために、そんな、

 すごい、夢かなこれ。

 

「あっ、でもそれだと早起きすることになるんじゃ……」

 

 寝不足って結構辛い。

 僕のためにわざわざ早起きさせるワケには、


「心配ならご無用よ。わたし、普段から早起きだから」

「えっ」

「早く起きてちょっとだけ勉強してるの。その時間を使ってあなたのお弁当を作るだけだから」


 そうなんだ。

 それはそれで申し訳ないけど。


 ……でも、先輩が良いなら。

 

「わたしの息抜きになるし、周りに良いアピールにもなる」


 なにより僕が嬉しい。


「まさしく良いことづくめね」

「ぜひ、お願いします」


 断る理由がどこにもない。

 先輩のご厚意に甘えよう。

 

「ただし、絶対に休まないこと。せっかく作ったのが無駄になっちゃうから」

「休まない。絶対。休学になっても、隕石が落ちても」

「良い心意気ね。楽しみにしてなさい」

 


 先輩の手作り。

 すごい楽しみだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る