第55話 his girl part(4)

 山田と河北が、早坂の駆け出した先へ目をやると、そこには見るも無惨な姿(転んでケツを半分出している)になってしまった平成女子の姿が。


 その何寸か先には、早坂が『俺が引きつけるぜ』と豪語したその対象たるトラックドライバーの渋めおじさんが立ち尽くしていた。


 物陰からの観察なので、なかなか様子が見えない。ただ、この状況をひとことで言い表すなら『やべー』ということだけは確かだ。


 しかし、突如として現れた平成女子(半ケツ)におじさんの視線は釘付けだ。そりゃそうだ。


 スライディングを決めた早坂の髪の毛はなぜかツインテールだし、女装してるし、コンセプトが平成女子だし。


 しかもチーク塗ってるし、つけまつげだし、おまけに半ケツ出してるし。



「お、おお……? この子、何処から入ってきた……?」



(見ろよ山田。アイツ、倒れたまま動かなくなっちまったぜ。ああ、早坂……かわいそうに)


(これで早坂見納めか。とりあえず行こう河北。この意味不明なスライディング自体が、多分早坂の狙いなんだよきっと)



 山田の解釈を聞いた河北は、手をポンと打ち合わせた。



(そういうことか。確かに、言われてみれば転んだ早坂の力なく倒れた右手が『行け!!』みたいなサインをしているように見えなくもない)


(トラックの荷台へ飛び込むぞ。さっきのドライバーたちの会話からして、このトラックが目的地へ向かっていくことは確定している)



 早坂が飛び出してから、およそ10秒。異変を察知した積み込み担当のトラック乗車メンバー二人が集まってきた。



「どうした? 何か凄い音がしたが……」


「ああ、この平成女子が急に飛び出して来てな」


「今のご時世に、ここまで流行に流されない子がいるなんて俺は嬉しいよ」



 元いた中年くらいのドライバーと、やや年下に見える積み込み担当の男性が早坂を見ながら冗談混じりの会話をしている。


 しかし、片方の男性は既に早坂に『大丈夫か?』と声をかけているところだ。


 と、そこにもう一人の積み込み担当が現れた。頭にタオルを雑に巻いた若い女性だ。



「何を馬鹿言ってるんスか先輩……きっと迷いこんじゃった子っスよ。この辺りは、近くに住宅街があるっスからね……子どもたちの遊び場になりつつあることが問題視されているっス」





***





「よっしゃ乗り込めたぞ山田!」


「しーっ! 声が反響して外に漏れちゃうよ」


「おっといけね……」



 早坂を犠牲にし、山田と河北は目的の荷台へ潜入することに成功した。

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隣の席の甘衣さんは、僕にだけ激甘い りんごが好きです(爆音) @pizzasuki

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