第02話 理科室できみと見るビデオは、甘い

 今日の五時間目は、理科の授業だ。


 僕の得意科目は、国語、英語などの文系科目なので、基本的に理科は苦手とするところである。


 でも、今日の理科はひと味違うから、楽しみにしていた。


 たまにある『ビデオ資料を見て、勉強する単元』がやって来たからだ。


 まず、先生は理科室の机、椅子類を全て動かして地べたに座るよう指示した。せっかくの映像資料を視聴するなら……と思ったらしく、映画館みたいな臨場感のもとで授業を行おうとしている。


 僕たちにとって、学校でビデオが見れるというレアな機会とのエンカウントは、つまらん学校生活を彩ってくれる特別なものだ。


 それに加えて、そもそも堅苦しい授業を受けなくても良い、という状況とのミックスはまさに一石二鳥といえる。


 体育座りをしている人もいれば、怒られない程度に足を伸ばしてばたつかせている女子もいる。


 僕は、あまり目立つことをしないタイプなので前者に当てはまる。目立ちたくないがゆえに、最後列の見えづらい位置に座る徹底っぷりをここでも披露している。


 しかし、後者に当たる危なっかしい人物……甘衣さんはすぐ隣にいた。



「ね、成瀬なるせ


「何だい?」


「えいっ」


「な、なにするんだ甘衣さん」


 

 今日もいつものように、甘衣あまいさんは僕にいたずらを仕掛けてくる。僕の弱点たる脇腹をつんつんして、その反応を楽しむ彼女の顔を視認することは叶わなかった。



「うりうり」


「くっ……ま、待って。そこは弱いんだから……ふっ、くふっ…」



 室内に二つ備え付けられているスピーカーが発生させる音量は、かなり大きい。


 たとえ、僕がくすぐりに負けて声を出してしまっても、その恥ずかしい声は誰の耳にも届かないだろう。


 しかし、ここで一つ問題がある。


 僕から見て、右側に座っているのが甘衣あまいさんだが、その彼女の右側には、彼女の友人らが集合している。


 さすがにこの距離では、僕の漏らした声は聞こえてしまうだろう。だから、耐えるしかないのである。



「そろそろ降参しなよ〜」


「ぼ、僕は粘り強いタイプだから、それはできぬ相談だね……ふふっ……」


「ちょっと、声出しちゃ駄目でしょ?」


「いやなんで僕が怒られるんだ……」


 

 僕の声がやや大きかったせいで、甘衣あまいさんの友人たちが『なに、今の?』ときょろきょろ。


 音を発生させた人間を探している。しかし、幸いにして丁度モニターに映っていたのが『さまざまな鳥の鳴き声』というものだったので、僕の鳴き声はあひるの声として処理された。


 そんな彼女たちを尻目に、甘衣あまいさんは『うへへ、バレそうだったよね? あぶなーい』といたずらっぽく微笑んでくるのであった。


 今日も甘衣あまいさんは、甘い。






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