裏切りの花を枯らす方法

@mineko0214

第1話

いじめ、差別の対象として、有名な「混血児」。

それを減らすために用意されたのが混血専門学校。この物語の舞台は、その中でトップの成績を誇る、吸血鬼の混血児専用の「寮生天竺学園」。今年はそんな学園に一人の天才が入学したようだ。














「やっとだ…………」
























暖かな風を頬に感じる。入学シーズンにもってこいの気候だ。

この春、僕は憧れの「寮生天竺学園」に入学する。今まではたくさんのいじめを受けてきたが、この混血児専用の男子校なら、僕の成績を公平に評価してくれるかも。






そんな期待を感じながら、僕は正門に足を踏み入れる。中はいろんな魔族で賑わっている。寮生なだけあって、校舎はいくつかあり、どれも大きい。数歩下がっても全体が見えないくらいだ。





しばらく校舎を散策していると、校内にアナウンスが響き渡った。



「新入生の皆さん。式場へお集まりください。入学式を行います。」



ようやくか。走りと歩きの中間くらいのペースで式場へ向かう。





式場入り口につくと、教職員が全体に呼びかけていた。



「新入生はこっちの入り口から入ってください!」



人数が多いとは言え、入り口も広いのだからそこまで必死に呼びかける必要はないだろうと思っていた。が、理由はすぐに分かった。



「うぇ〜い!今あの有名な天竺学園の入学式来てま〜す!」



おバカな陽キャラたちが撮影しながら入り口を占拠しているのだ。

あと10分で入学式が始まる。遅刻はしたくないので、その人たちの横を通っていく。



「いった、だれお前」



その声は大衆のざわめきにかき消され僕の耳に届かない。まさかこの時に目を付けられるなんて思わなかった。





10分後、開式だ。



「これより、入学式を執り行います。まずは校長先生のお話です。」



そう言って出てきたのは、なんと煌びやかな雰囲気を纏う国王。実はこの学園が国内随一の人気を誇る理由は、「国王が直々に管理している学園」だからだ。


校長先生の話が終わったころ、次の段取りへ進む。



「次は、3年生学年主席あいさつです。」



そうして出てきたのは、遠目でも分かるくらい身長が高い白髪の男だ。ポニテで後ろに纏めている。制服の上から黒いブカブカの上着を着ている。印象としてはパッとしない人だ。



「ご入学、おめで、とうございます…」



声は通りが悪く、いかにも人の前で話すのが苦手なタイプだ。


テンプレートの言葉を並べたスピーチが終わった。



「次は2年生主席挨拶でしたが、諸事情により、代理で私が手紙を読み上げます。」



紙を広げて、手紙を読み上げていく。



「次は、新入生主席挨拶です。」

「はい」



迷わず立ち上がる。そして壇上へ登る。手元にメモを広げ、スピーチをする。できるだけ全体を見渡しながら、最後に礼をして終わる。



「ありがとうございました。」



壇上から降りる。そして席へ戻る。この間の全員からの視線は正直気分が良い。己の承認欲求がコップに注がれるジュースの如く満たされるのを感じる。





「これで入学式を終わります。1時間半後に魔力試験を行いますので、新入生は食堂にお昼休憩に向かってください」



ふぅ、お昼休憩後が本番だな。





簡単にサラダで昼食を取った1時間半後、魔力試験が始まった。



「新入生のみなさんは渡された魔法石を握ってください。」



新入生には消しゴムサイズのゴツゴツした透明な魔法石が配布される。この魔法石の出る色で属性が、色の濃さで魔力量が測定される。


特に魔力量が多い上位数名は、「最上級クラス」に入ることができる。成績が良いだけでは最上級クラスに入れない。主席が通常クラスに入っていることもザラにあるのだ。式場の空気がピリついている。全員この瞬間に学園生活の全てをかけているのだ。





「魔力を注入してください。」



遠回しに試験開始のゴングが鳴る。全員魔法石が潰れてしまいそうなほど、精一杯握って魔力を注入する。僕もこの試験に学校生活の全てがかかっているのだ。手汗がどんどん滲む。





しばらくすると魔法石が渦を描きながら徐々に色づいていく。色は…



「…ドス黒い…闇…?」



しばらくすると真っ黒な宝石ができる。今まで透明で向こうの景色が透けていたのに、今はこちらの顔を綺麗に反射するだけになっている。



「え、失敗したのかな…」



周りは青や赤、黄色や紫など鮮やかな色で溢れている。そして半透明だ。



「魔力の注入を終了してください。試験官が回収に向かいます。」



遠回しな試験終了のゴングが鳴る。全員の魔法石が回収される。僕はあの魔法石の如く、絶望感で満たされていた。


「終わった…」





「回収が終わりました。結果が分かり次第、診断表と回収した魔法石を埋め込んだ適正武器を配布します。」



適正武器?そんなものくれるんだ。

僕はのちにこの制度のありがたみを知ることになる。





試験終了後、自宅…孤児院へ帰る。孤児院へ入る時、もっと周りを見ておくべきだった。



「え、あいつ…」



入学式入り口でぶつかった陽キャラに見られたのだ。いわゆる名門校の天竺学園には、財閥のお嬢様、国の上層部の息子などの、実家が極太の生徒が大体なのだ。孤児であるのがバレてしまったら、いじめの標的にされる。そもそもぶつかったこと自体に気づいていないため、僕は見られたことに気づいてなかった。

「ただいまです〜」


数日後、試験の結果発表がきた。結果は…

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