五話目 凪咲を看病する
「さすがに想定外すぎるぞ
「ふえ?……いま、クリスマス?……そっかぁ、サンタ……さん……来てくれたんだぁ」
おまけに咳をごほごほと苦しそうに吐き出し、鼻水まで垂れ流している。
人間は脆弱だと思っていたが、丈夫にさせる前に病に侵されていたら、それ以前の話だ。
「嗚呼、風邪を引かない体をまず作るべきだ。世界が無菌状態だと生きていけないというのは、どういう矛盾をはらんだ生き物なんだ人間という奴は」
「ん……きのこ……好きです」
いやいや、きのこのために風邪を年中引かれていても困る。
かといって俺も筋肉質な硬い肉は好きじゃない。
「俺は
熱に浮かされて真っ赤な顔の
「ふふ、サンタさん……優しい」
「うーむ、菌に侵されている臓器を食って、新鮮で健康な臓器と入れ替える治療法があったよな。しかし、俺は医者じゃない。風邪という漠然とした病はどこの臓器を食って入れ替えれば治るんだ?」
とりあえず布団をはぎ取って、
ぼんやりしている
真っ赤になっている熱い体にぺたぺたと触ってみて、どこら辺が悪いのか触診でわからないものかと試してみた。
「んん……くすぐったい」
「なぁ、ここを触れると痛いとか苦しいとかあるか?」
「ん~……ふふ、くすぐったい」
「こうなったら全部食って全部取り換えてみるか」
「あの……魔法?」
「そんなつまらない魔法はないな」
まさか俺が
「な、なんだ? ちょっと性欲の方が沸き上がってきそうでやばいんだが」
「はむはむ……れろ。いま、サンタさん、食べました……新しい、指、私のあげます。……どうやって、くっつけますか?」
それな。考えていなかった。はめ込めばくっつくんじゃないのか。
指で考えたら、そうじゃないと理解できたな。
「参ったな。やはり頑丈な体に作り替える方が先か。でも、新鮮な臓器は良いアイデアだろ」
「ん~……くっつけば……?」
「いや、そうだ。食っても効果があるはずだ。何せ俺は風邪を引かない。栄養のあるものを食っているからだな。血は大量に必要だろう。血で煮込もう」
煮込むくらいとなると五人分くらい必要だろうか。
「あとは熱も咳も鼻水も要は脳が指示を出しているんだよな。脳を食って負けない脳を作るんだ。脳を動かす心臓も必要だな」
絶対に旨い。想像したらよだれが垂れてきた。
「それと子宮だ。魂を生み出す場所は一番旨い。栄養のあるものは旨いに決まっている」
そうなると健康で若くて丈夫な女が五人ほど必要ということか。
「よし、ちゃちゃっと材料を揃えてくるから、ちゃんと寝てるんだぞ」
「あ、サンタさん……服……行っちゃった……」
健康、若い、丈夫、女子、条件が揃う人間の宝庫だ。
狙うのは
弱っている
最近の人間は産地にこだわるからな。顔が見えるほど安心できるらしい。
俺が何に見えているのか、人によって変わるが、一瞬で屋上に連れてきてしまえば何に見えていようが関係ない。
「きゃあああっ」
「な、なに!?」
「ひぃいいっ!」
「いやぁああっ」
「お、屋上!?」
ずぶ、ずぶ、ずぶ、ずぶ、ずぶ。
「「「「「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!」」」」」
まずは腹にぶっとい針を刺す。象とかデカい猛獣の献血用の針だ。これで血を抜き取っていけば新鮮な血が手に入る。
腹だけじゃ時間がかかるので、腕にも足にも顔にも刺しておいた。
後は胸を切り開いて心臓をくりぬいてクーラーボックスに保存する。
頭蓋骨は丁寧に割って脳みそを綺麗に穿り出した。これもクーラーボックスで保存した。
子宮も抉り取ってクーラーボックスで保存。
残りの魂と肉は勿体ないので残さずきれいに食べておいた。
材料が手に入ったので急いで
心なしか
「ちゃんと寝ておけって言ったのに、遊んでいたのか?」
「うぅ……寒い……」
こんなに熱があるのに寒いって人間は不思議だな。とか思ってたら、
「サンタ、さん。……服」
「服? 着てないな。ちょうどいいだろう。こんなに熱があるんだから」
「やぁん。……サンタさん……服、着たい……」
「サンタクロースの服が着たい? ああ、お揃いが着たいのか。お前ホント子宮から噛みついて液体まで啜りたいほど可愛いよな」
「……もう、それでいい……です」
ご希望通り、
思った以上に可愛くて、俺までサンタクロースに性癖を持ちそうだ。
「さて、栄養たっぷりのスープを作るか」
フローリングの
あとは心臓と脳みそと子宮を放り込んでドロドロに蕩けるまで煮込むだけだ。
三十分後、いい感じのどろみ具合になってきた。
俺は皿にちょうどいいように割っておいた頭蓋骨にスープを注いで、
「ほら、スープができたぞ。起きて食え。みんなも
パチッと目を覚ました
「みんなぁ……お見舞いに来てくれたんだぁ」
嬉しそうに顔に抱き着く
「サンタさん、私はちっともいい子じゃありません。……こんなに愛を独り占めしたら、サンタさんまで──きっと叱られてしまう……」
風邪を引いて弱っているときくらい、サンタクロースを頼ればいいものを。
「それ以上、自分を差し置いて俺を心配すると、俺の口から愛が吐き出されてスープが台無しになるぞ」
パチパチと目を大きく瞬きさせる
「みんなのきれいなお顔、私のために残してくれた……ありがとうございます」
「うぅ、賛辞が美しい……! つまり
いかん。ここは大人の俺が自制心を持たなくては。
「ほら、みんなスープにもなってくれたぞ」
頭蓋骨のお皿から俺はスプーンでスープをすくってやり、ふーふーと冷ましてから、
「旨いだろ」
「ん……味、わかんないです……」
「マジか!? こんなに旨いのに! もう二度と風邪を引くなよ
しかし、味がわからないと言っても、
「サンタさんの、あ、愛を一滴も無駄にできません。お食事は残さず綺麗に食べつくすのです」
「やはり、顔を見ると旨く感じるんだな。不思議だ」
「そう、ですか? サンタさんも……私の顔を、その、見ながらだと、美味しいのでは……?」
言われてその通りだと気づいた。
「俺は
結局スープを全部平らげた
「サンタさん、どうしてクリスマスじゃないのに私に優しいの?」
「愛しているから。
少し熱も引いていた
「私、おかしいの。本当はサンタさんが私のこと心から愛してくれているからって言葉も行動もすべてが愛だと知っていた。どうしてこんなにうぬぼれてしまうのかな?」
そっと
「今は俺のことは忘れろ。だけど、真実の愛は覚えていろ」
「……サンタさん……愛……忘れない……」
すやーっと、そのまま
「しまった。サンタクロースと真実の愛が結びついたか。……まぁいいか。期間限定だしな。クリスマスシーズンだけ虫よけしておけばいいだけだ」
スープは一口も飲めなかったので顔面オブジェだけ残さず平らげると、後片付けを済ませて、また
──翌日、謎の回復力で
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