第30話『バルジ教国の光と影』

「うっ...... さ、寒い、寒い!!」


「何情けない声出してるの! こっちまで寒くなるでしょ!」


 いつものようにレンドがディルセアになじられている。 俺たちは港街【スタンブル】に寄港した。


 雪が舞う中、白い建物が整然と並び、白い服の信者と見られる者たちが声もなく歩いている。


「なんか、みんな暗いわね」


「戒律で、不要に人に話しかけたりしないらしい」


 ゼノフォスはそう行き交う人を見つめながら言った。


「なにが楽しくてこんな事してるんすか」


 レンドは眉をひそめる。 レンドが言うように一見整っているように見えるが、信者たちは痩せ細り、建物もよく見ると穴だらけでとても裕福とは思えない。


「優れたものは貧しさや苦痛に耐えることにより、更なる力を得て、楽園たる天へと至るのだ!」


 太った神官が目の前の信者たちにそう説いている。 それを聞き信者たちは祈りを捧げていた。


「結局は楽したいために、今苦しむってことでしょ。 一緒じゃない」 


「元もこもないな...... 本人たちがそれで幸せなら、俺たちが言うことではないよ」


「まあね......」


 納得いってない顔でディルセアは答えた。


「それはいいけど、この服なに、寒いんだけど......」


 俺たちはオールバンクで出した信者の服を着ていた。


「ここには冒険者ギルドがありません。 街を自由に歩くと目立ちますから、カイトさんに出していただいたんです。 一応入信したことにした方がいいでしょう」


「でも、これ寒いっすよ」


 ふるえながらレンドが言う。


「仕方ない...... 早く聖堂とやらに行って、宝玉を探そう」


 俺たちは街を抜け、馬車でいくつかの街を抜け、聖堂のあるという【ルシェルエ】へと向かった。



 そこはスタンブルや他の街などとは比べ物にならない大きさで、信者の数も多かった。 


「ここは大きいですね。 それになんか思ってたのと違う。 寒くもない」


 レンドは高い建物を見ている。 どうやら魔法でここだけ暖かくしているらしく、信者たちも薄着だ。


「ああ、今までの街より豊かだしな」


 明らかに他の街の信者たちとは身に付けている服の質が違い、街には高額な商品も並ぶ。 裕福そうな者たちが笑顔で歩いている。


「貧しさや苦しみを耐えるんじゃなかったの」


 あきれたようにディルセアが言う。


「ここは選ばれたものしか入れないですからね。 ここの者たちは上位の信者たちですよ」


 ゼノフォスが言うとらレンドもうなづく。


「大抵の国や組織は、上になると金や権力を持つ、宗教も同じだろうな」


「俺たちの冒険者カードを見て態度を変えたのはそのせいか?」


 ここに入るときの検問で冒険者カードを見て、係員が笑顔で対応したことを思い出した。


「ええ、彼らにとってはAクラスの冒険者が信者として入信するのは、布教や寄進、信者への成果として有用だからでしょうね。 ここは主に信者の寄進によって成り立ってますから」


「あきれるわ。 神さまなんて信じてないじゃないの?」


「まあ、元々王であったカーマインを崇拝する偏った考えの集団だったから、こんな感じでもおかしくはないですが......」


 ゼノフォスはそう眉をひそめる。


「なんか...... 貧しくてもただ幸せになりたくて、一生懸命信仰してる人たちを見るとやるせなくなります......」


 レンドがそう悲しげに、肥えて太った信者を見ながらそう言った。 他の街では青白い顔で一心不乱に祈りを捧げている者たちを見てきたからだろう。


「俺も飢えてた昔なら、信じていたのかもしれない......」


 レンドはつぶやいた。


(まあ、生きることに苦労してきたレンドには身につまされる思いがあるんだろうが...... 信仰しているものたちの考えを変えるわけにもいかない。 何がその人の幸せかは俺にはわからないからな......)


「ただ、それだけではなく、教主に魔法を与えられるという話があります。 それを勧誘のうたい文句にしているようです」


「嘘でしょ!? 魔法を与えるなんて...... 巻物スクロール遺物レリックでもかなり高額よ」


 ディルセアがそう驚いている。


(確かに、さっきも神官が更なる力が得られると言っていたな......)


「......とりあえず、聖堂に入り宝玉を探そう」


 俺たちは聖堂があるという中央へと向かった。



 半円状の聖堂に近づくが、白い鎧を身にまとった騎士が辺りを警護していた。


「近づけそうにないな......」


「全員、石化して探した後で戻せばいいんじゃない」


「お前たまに恐ろしいことを言うな」


 そうレンドが言う。


「そうかしら」


「さすがにばれますね。 何とか中にはいる方法を考えましょう」


 俺たちは宿に戻ると中にはいる方法を考えた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る