終末世界でヤンデレ天使とラブコメを
水姫 唯
プロローグ
彼の呟きを視た。ベットの上に転がって目を閉じながらそう言ったのを聴いた。それは本心じゃないかもしれない、なんの気なしに呟いただけかもしれない。現実逃避の手段として口にしただけかもしれない。
けどそれを聴かれた相手が悪かった。彼女はその妄想を現実にしてしまえる。それが彼と自分が繋がれる手段ということに気づいてしまう。
「……その願い、確かに聴き届けましたよ」
それから彼女は目の前にある機械を操作する。幾つかの設定を終えたのちそのコマンドを実行する。それは世界を終わらせるモノ、これまでの歴史を歩みを全てが水泡のように消える。
「貴方が望んだんですよ?私は大好きな貴方の望みを叶えたんです。これからは私と貴方がこの世界の唯一の言葉を持つ知性体になるんです。新世界のアダムとイブに私たちがなるんです」
歩けば誰もが振り返ってしまうような美貌、まるで輝いているかのように見える腰まで伸びた銀色の髪、腰の辺りから生える人1人を簡単に包み込めるような柔らかくて大きい羽、頭上には綺麗な丸の形をした輪っか。
天使と言われて想像すればきっとこのようになるのだろうと思える存在がモニターに映る少年をじっと見つめる。
その少年が何か特別なモノを持っている訳ではない。優れた才能があるわけでもない、ただ彼女の一瞥を貰った少年。それ以外普通と言えるその少年は彼女の企みに気づける訳もなくすやすやと眠っている。
まさか世界が終わるとも知らず、彼以外の人間が全て死ぬとも知らず、自分の呑気な呟きが全てを終わらせたとも知らず。
「私だけの可愛い貴方……♥ふふっ、逃がしませんからね?」
天使の暴走ともいえるそんな行動で世界は終わりを迎える。本来世界を管理運営する立場の天使が感情に狂わされて世界を終わらせる、あってはならない行動のはずなのにそれを咎める者はいない。
全ては彼女の思うがままに──
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます