ミーハーですぐ周りに影響されちゃう自分が、唯一使い続けているリップクリームと時代について語りたい。

人生、変わらないものより、変わっていくもののほうが多い。

変わっていくもののほうが多いけれど、変わらず使っているものがある。

リップクリーム、である。



緑色のパッケージの、いわゆるロングセラー商品だ。

家のリビングに一本、ベッドに一本、デスクに一本。

使いたいときにすぐ使えるよう、それぞれ置いているのが三本はある。

それから持ち運び用としてポーチに入れているものが一本、

ポーチを忘れてもいいように鞄にも一本。


ずっと使い続けているし、ずっと好きだと言い続けているためか、

家族も安く販売されているときは教えてくれる。

なんならわたしがいないところで買ってきてくれることもある。

自分でも購入するので、家には常にストックが五本か六本はある。

つまり使用中と未使用のもの、合わせて十本前後は持っていることになる。

覚えている限り失くしたこともないし、使い切る自信も不思議といつもある。


リップクリームを自分で選んで購入するようになったのは、中学生くらいだろうか。

けれどもっと幼い頃から乾燥したらそれを塗っていたように思うので、

少なく見積もっても二十年くらいは使っている。


といっても、全く浮気しなかったわけではない。

特に中高生ぐらいの頃は、色付きリップにめちゃくちゃ憧れた。

唇に色がついたかついていないかわからないくらいでも、

色のついたバームだというだけで嬉しかった。

今なんてリップを塗らないと、顔色が悪くてしかたないというのに。


ここ最近の使い方は、日常と寝る前の保湿がまずは定番。

外出するときはいわゆる口紅も持っては行くものの、

出発前に口紅を塗って外出先ではリップクリームで保湿することが多い。


個人的に、ツヤツヤしすぎないところがいい。

もちろんツヤツヤのリップも可愛いとは思うんだけれど、

自分はそのほうが落ち着く。

メントールのスースー感もわたしは好きだ。

ウイルス禍でマスク生活をしていたときも、案外快適だったと思う。


硬くないのか、と聞かれることがよくある。

確かに今のリップクリームって柔らかくて、

ひと塗りで潤うというキャッチコピーを掲げているものが多い印象だ。

けれど自分は、何往復もして塗るのが好きだ。

しわに沿って縦に塗ったり、そのあと横にも塗ってみたりして、

特に寝る前は念入りかもしれない。


最後のほうになると、土台になっている赤いプラスチック部分が見えてくる。

取り替えるのを忘れてしまって、

プラスチック部分のフチが唇に当たるまで使うこともある。

でもそれが使い切った感があって、不思議と嬉しくなる。


新品のものを使うときも、そう。

繰り出す部分が固くて両手を使って回して、

バームの表面も硬くてまだちょっとカドがある。

新しいリップクリームを使うときにしか味わえない、なんとも言えない快感。

手になじむまで少し時間が必要なのだけれど、それがまた嬉しい。

これ、割とリップあるあるではないだろうか。



突然の話にはなるが、わたしは以前食品会社に勤務していたことがある。

そこで商品開発の重鎮がおっしゃっていたところによると、

同じ名前で販売している商品も少しずつ味を変えて販売しているそうだ。

本当にわからないくらい、少しずつ少しずつ。

甘くしたりしょっぱくしたり、はたまた少し酸味を加えてみたり。


実際のところ、ほとんど味の違いはわからないらしい。

それでも味を変えないと、消費者は飽きてしまうんだそうだ。

一方長年購入してくれていると、

変えたことに気づいて連絡を入れてくる人もいるらしい。

うーん、人間ってすごいというか面白いというか、なんというか。



調べてみたところ、このリップクリームは五十年ほど前から販売されているそうだ。

定番商品だけでなく他にも使い心地や香りを変えたものも出ているようで、

使ってみちゃおうかな、なんてミーハー心も疼く。

きっとこれからも進化を続けて、新しい商品が出るのだと思う。

けれど定番のそれはほとんど形を変えることなく、ずっとそこにいる。


このご時世、どんどん新しいものが出てきては消えていって、

アイディア合戦のようになっているところは少なからずあるのだと思う。

もちろん季節の定番みたいなものもあるし、イベントに合わせたものもある。

そしてそれをわたしも楽しみにしているし、楽しませてもらっているのも事実。


けれどそういう時代の中で、あえて変わり続けない。

守っていく、という考えも素敵なことだし、すごいことだとも思う。

本当は変わっているのに、気づいていないだけかもしれないが。


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