美容系にはなれないけれど、ちょっとだけ話したい。

はづき南呂

保湿信者だった自分が化粧水で原点回帰してみたら、どうやら今の正解にたどり着いたらしい。

歳を重ねるにつれ、変わっていくものは存外たくさんあるものだと改めて実感する。

味覚、趣味、周囲の環境、考え方。

そして、スキンケア。



最近、原点回帰した。

何かと言えば、化粧水である。


化粧水って安くてもいいからたくさんつけたほうがいいとか、

塗るなら手よりコットンがいいとか。

反対につけすぎは肌によくないとか、

巷でもあれこれ意見が飛び交っているように思う。

それでもスキンケアにはまず欠かすことの出来ない存在だから、すごい。


化粧水を塗っている時間は、一番肌と向き合っている時間のような気がする。

不思議と日によって浸透しやすい日としにくい日があって、

何があったかな……と考えることもある。

肌の手触りを楽しめる日もあれば、考え事をしていて

気づいたらスキンケア終わってた、なんて日もある。


そのつい最近までは、わたしはネットで評判の良かった化粧水を使っていた。

安くはないけれど高くもなく、詰め替えも何個か購入した。

少しとろみのあるところが好きで、朝晩毎日使っていた。


ところが急に、原点回帰した。

十年ほど前に使っていたメーカーブランドの化粧水を、

ここ数か月はずっと使っている。

きっかけは正直に言うと、覚えていない。

ただ何かで紹介されていたのを見たというよりは、

コマーシャルを見たのだと思う。


これにはまた追々触れていきたいのだけれど、

絶対欠かせないというスキンケア商品がひとつだけ、わたしにはある。

ただそれが、わたしにとっては割と値が張るもので、

でもそれだけは買うのをやめたくなかった。


ここでふと、それなら他のスキンケアの内容を見直せばいいのでは……と

思い立った。

いわゆるドラコスのプチプラ商品で、お気に入りを見つけたい。

もしかすると一番のきっかけだったのかもしれない。



その化粧水は学生時代ハトムギ化粧水一択だったわたしが、

初めて手に取ったハトムギ以外の化粧水だったように思う。

ドラッグストアで手に入る手頃な価格で、それこそ詰め替えも何度か

購入してしばらく使っていた。


使わなくなった理由も正直あまり覚えてはいないのだけれど、

おそらくニキビが出来やすかったからかな、と振り返って思う。


わたしは当時自分が乾燥肌だと思っていて、スキンケアは保湿を重視していた。

というよりも、今みたいに成分がどうだとか、インナードライだとか、

あんまりそういうことを聞かなかったし考えてもいなかった。

そういう意味では、SNSの普及は本当に時代を変えたと思う。


とにもかくにも、当時のわたしにとってスキンケアはとにかく保湿するものだと、

そういう認識だった。

実際のところ皮脂が出て困るというよりは、

乾燥で肌が痛いことに悩まされるほうが圧倒的に多かったのも事実。

化粧水も当然のごとく、保湿される『しっとりタイプ』を使っていた。


ところが今度は乾燥ではなく、ニキビに悩まされることになった。

というより、乾燥もしているのにニキビも出来ている、と

言ったほうが正しいかもしれない。

しかもいわゆる炎症系のニキビで、見た目にも悪ければ痛みもあった。


結果として、わたしは浮気した。

ニキビがどうのこうのというのはここ最近考察した結果であって、

おそらく当時は他にも理由があったんだろう、と思う。

しかしここ最近まで使っていなかったことから考えれば、

別の化粧水に浮気したのは事実。

しかも何に浮気したのかも覚えていない……人間だったらとんでもない奴だ。

ただ、使い切った自信だけはある。


それが約十年の歳月を経て、よりを戻した。


もともとドラッグストアで見かけるたびに、種類増えてるな、とは思っていた。

うるおい特化とか肌荒れ特化とか、見たことのない色のボトルがこの十年の間に

着々と増えていた。

ここまで言うと、どの商品かお気づきの方もいらっしゃるだろう。


しかしいざ買おうとすると、どれにしようか迷った。

エイジングケアもしたかったし、美白も捨てがたかった。

迷った末に、薬用の美白タイプを購入した。

十年前に使っていたのと、同じタイプだった。


ただ、十年前のわたしはここで、

迷わず『しっとりタイプ』を選んでいたことだろう。

そこは紆余曲折の経験を活かし、『しっとりタイプ』は選ばなかった。

戦略的撤退、と言ってもいいかもしれない。


わたしは自分が乾燥肌だと思っているし、

実際何が気になるかと言われれば乾燥が気になると思う。

しかし色々と試す中でようやくわかってきたのだけれど、

自分はどうやら保湿を売りにした製品が合わないらしい。

肌は非常に正直者なので、なんせすぐニキビが出来るのだ。

どうやら乳液も合わないようで、

これがいいと聞くたびに使ってみるのだけれど、肌がNOと言う。

故に未だ保湿クリームにも悩んでいて、迷走しているところだ。


かといって肌が強いわけでは決してないので、

美容成分がたくさん入っている製品も肌が荒れる。

これはおそらく敏感肌というやつなのだろう、と

敏感肌用スキンケアを使ってみても、何かがしっくり来ない。

可もなく不可もなく、というより、不可もないが可でもない、と

いった感じだろうか。



浮気と迷走を繰り返す中で、

けれどわたしはどうやら今の正解にたどり着いたようだ。

結論から言うと、めちゃくちゃ良かった。

どうして十年も敬遠していたのだろうと思う程度には、めちゃくちゃ良かった。


普通に手に取って、気持ち程度のマッサージとともに塗り込んでいるだけ。

使った翌日に肌が生まれ変わったようになる、なんてことはなかった。

でもなんだかそれが、すごく良かった。


今は毎日使い続けるたびに、「もしかして肌の調子良い?」が、

「もしかしなくても肌の調子良い!」に変わっていく感覚がしている。

少なくとも、ドカンと肌荒れしたりニキビが出来たり、

そういう肌にとって嫌なイベントが起きにくくなったように感じている。

時々波風立つ時もあるけれど、気にならないくらいには凪いでいる。

何故か海に例えてみたけれど、そういう感じがしている。



念のため言わせてもらうと、今まで使ってきた化粧水が悪かったとか、

そういうことは一切思っていない。

ただ思うのは、あんまり急がなくても良かったのかもしれない、ということ。


『夜塗って、朝起きたらゆでたまご肌』に、もちろん憧れはある。

赤ちゃんのような肌になりたいとまでは言わずとも、

毛穴やそばかすがなくなればいいのにと日々思っている。


メンタルの調子が肌に出ることはあるけれど、

肌の調子自体もメンタルに影響してくるように思う。

やっぱり肌トラブルがあるかないかで、テンションが違う。

見た目にももちろんそうだし、

そもそも痛みかゆみがある時点で見てなくてもテンションが下がる。

いくらトラブルをメイクで隠せたとしても、心なしか肌に対する罪悪感もある。

毎日の生活を送る中で案外必要だったのは、変わらない肌なのかもしれない。


どちらかといえば即効性が望まれる時代で、じわじわと効いてくる。

静かなスキンケアを、今日も続けていこうと思う。


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