おでん……この魅惑的な食べ物の可能性は全世界、いや異世界をも救うかもしれない、それを素直に信じたくなる物語でした。こちらはファンタジーではありますが、主人公の前職での体験は「お仕事小説」でも通用するのではないかというくらいリアルでした。成功体験と共に誰もが体験し得る辛い状況も語られています。そこがファンタジーとしての物語に厚みと救いを与えていて、読んでいて私も救われました。
美味しいおでんは人の心を救う、その事実に頷いてしまうほど優しさに包まれたお話でした。こちらの作品を私は漫画かアニメで見てみたいと思うのですが。映像化されたら、黄金色の出汁に誰もがウットリし、次の日はおでんが品切れになると思います。
「小桜」というおでんの具はあるのでしょうか?思わず調べてしまいましたが、見つけられずがっかりしています。生麩か練り物かなと想像しているのですが。ああ……おでんが食べたい。異世界の人と熱燗で乾杯がしたい。
見知らぬ食べ物を初めて口にするときの、高揚感と抵抗感が溶け合ったかのようなドキドキ。
食への探求心を前にして人間は、時として無力なものになるのだと思います。
主人公は紆余曲折があり現代と異世界を行き来しておでん屋台を出店することになります。
特に異世界では初めておでんの存在を知ることになるお客さんばかり。彼、彼女らのおでんに対する反応の瑞々しさが豊かな表現によって綴られており、おでんが食べたくなってしまいます。
また、おでんとお酒を楽しむお客さんが、店主に思わず吐露する困りごとには、この世界にキャラクターたちを確かに繋ぎ止めるかのようなリアリティを感じます。
親身になって話を聞く主人公が提供するおでんと言葉には沁みるものがあり、読み進め次々に人物たちと出会う中で、自然に世界へ入り込んでしまうような没入感もありました。
人の悩みや想いは数知れず、おでんのおいしさに対する反応はただ一つ。
おでんが異世界と現代を抵抗なく繋ぎ合わせる。
食欲と体のポカポカが同時にやってくること間違いなし。屋台ならではの空気感を堪能しながら、じんわりとするドラマをお楽しみください。
素晴らしい作品をありがとうございました。
私は大根が一番好きです。
だぎゃーな文化圏に住んでいるので、これに味噌をつけて食べるのがジャスティス。
出汁の色に染まる程に煮込まれた大根って、なんであんなに蕩ける美味しさになるんでしょうね。
そう、それはまるで甘い果実のようです。
これには思わず白米も進むというものです。
……おでんで白飯は普通ですよ?
おでんのある風景というだけで、温かな雰囲気の空間というのが思い浮かぶのは、日本人としての性でしょうか。
そしてそんな温かな場では、人々の心もほわっとほぐれ、悩みの糸口が見いだせたり、緊張やわだかまりもほぐれたりするというもの。
ここに人生経験の深い人情派の親父さんなんかがいたら完璧です。
こういうものの良さは普遍的ですので、異なる文化の方々にもおでん文化を通じて相互理解ができるというものです。
さて、ここにふらりと現れるのは一軒のおでん屋台。
味のしみたおでんと共に、お客の心をほぐします。
是非、熱々のおでんと共にご覧ください。
ということで大将、大根一つ!