第2話 ちょっと騒がしい星野さん

朝の教室。

まだ全員は揃っていないが、少しザワつきはじめている。


今日は先生にプリント配りを頼まれて、クラスのみんなに先生が印刷したプリントを配る。

だが、みんなと違って僕は「はい」とか「どうぞ」すら喋ることができない。

ただ黙って、プリントを淡々と配るだけ。


…のはずだった。


僕が星野さんの席の前に立ったとき、事件は起きた。


星野さんにプリントを差し出す。

星野さん、いつものように手を伸ばす。

スカッ(空振り)


(いや、星野さん?なんでそっちに手を伸ばす!?僕の腕は反対側だよ?)


バランスを崩した星野さんは、手だけが空を切り、プリントはそのまま星野さんの机の上にフワリと落ちた。


「わ、あっ…!ご、ごめんね、二九くん!なんかプリントとの距離感、うまく掴めなかったみたい……!」


僕は首をかしげて、手をヒラヒラ。「大丈夫だよ」のジェスチャーを送る。


(別に急いで受け取らなきゃいけない訳じゃないし、星野さん、なにか考え事でもしていたのかな?)


朝の会終了後、星野さんが二九くんに改めて謝る。


「二九くん、さっきはごめん!私、ちょっと朝が苦手だから、手が言うこときかない時があるんだよね……」


(なんかその言い訳、やたら説得力があるなぁ…)


「で、でも!これからはちゃんと気をつけるから!」


(あ、これは絶対またやるヤツだ…)


星野さんは、ニコッと笑う。

失敗しても、すぐ笑える人だ。


僕は、胸の前で軽く手をパッパッと振って「気にしてないよ!」のジェスチャー。

すると、星野さんはまたニッコリと笑った。


(……なんか今日も飽きなさそうな一日になりそうだな)

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2025年12月29日 13:00
2026年1月5日 13:00

二九くんは、喋れない! 小阪ノリタカ @noritaka1103

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