第6話

 ここまで来れば、1人は陥落したと言っていい。

 残すは、小名木先輩だ。



「これで、横井先輩はクロです。小名木先輩、もう観念していただけませ――」

「オレは関係ねぇ!!!」



 ところが、予想通りの反応。

 小名木先輩は、仲間であるはずの横井先輩を切り捨てた。オレが考えていた展開だが見事に目の前で起きている。



「小名木っ! アンタ!!!」

「オレは知らねえよ。勝手に巻き込むんじゃねえ!」



 ――やれやれ、ここまで来るとみにくい争いにしか見えないな。


 もちろん、その小名木先輩の横で気まずそうにみている寺尾先輩がスマホを打ちながら、静かに我関せずでやり過ごそうとしている。

 オレは見逃すことなく、すかさず寺尾先輩の罪を提示した。



「寺尾先輩。市澤への直接の嫌がらせはアナタですね?」

「んなっ!?」



 途端にスマホを見ていた顔がこちらを向く。

 ジーッと見ていると、先輩は苦虫をかみ潰したみたいな表情をし出した。



「な、なにを証拠にそんなこと言ってる……?」

「市澤が準備したスピーカーやらなんやらがなくなったり、壊れた現場でアナタを見たという生徒がたくさんいます」

「それが証拠になるとでも? そんなもの、たまたまオレいただけで、他の連中がやったかもしれ――」

「おかしくはありませんよ」

「は?」

「そもそも、市澤がやっていた作業は元々アナタが担当なのですから」



 と告げると、寺尾先輩の表情が変わった。

 おそらく、分担表の改訂版が変わったときにいくつかチョロまかして、自分の役割を減らしていたんだろう。

 こんなもの改訂前と改訂後を見比べれば一目瞭然だ。

 


「というワケで、寺尾先輩もクロです。そして、小名木先輩――」

「違う! オレは、絶対やってねえっ!!!」

「この期に及んでまだそんなこと言ってるんですか」

「オレは、コイツらにそそのかされて……」



 と言った瞬間、小名木先輩の隣にいたふたりの顔色が変わる。

 まあ、当然か……。

 なにせこの場に及んでの裏切り――自己中心的だし、ふたりから逆恨みされても仕方ないよね。

 とっさに横井先輩と寺尾先輩がため息をつく。



「考えたのは、小名木です」

「ウチらは、言われたとおりにやっただけ」

「お、オマエら!? 裏切るのか?」

「それをテメエに言われたくねえよ――小名木」

「いまアンタがやろうとしたことは、なんなワケ?」



 ……と、唐突に始まった責任のなすりつけ合い。これには、さすがにイライラさせられたよ。

 だから、オレは冷静でいられるうちに委員長に提案した。



「委員長、懲戒動議をお願いします――もちろん、この3人は除名で」

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